テニスの王子様
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白石君はいつも笑っている。
どんな時も余裕を見せている。怒らないし泣かない。
さっきの試合だってそう。
どんなにピンチになっても、無理だと思わせられても、突破口を冷静に見つけている。それで本当に突破しちゃうのも流石だよね。
いつも穏やかに微笑んでいて、周囲に安心感を与えている。どんなに辛くても、大変でも、穏やかに。
怒ったり泣いたりしないで笑っている。それが彼にとって当たり前、そう思われている。
いつからだろう。彼の笑顔以外の顔を見たいと思うようになったのは。もちろん試合の時の真剣な顔は嫌というほど見ている。笑顔が嫌いなわけじゃない。寧ろ好き。だけど、何か違うんだ。もっとこう、なんというか……。貼り付けたような、かりそめの様な笑顔は見たくないんだ。
「白石君、お疲れ様」
「なまえ。おおきに。準決勝でおしまい。昨年を超えられへんかったなあ。青学、強うなったな」
ほら、今だってそうだ。空を仰ぐようにして微笑んでいる。
「白石君。無理、しなくていいよ」
「?」
何を言っているんだというような表情をしている。ほら無意識でしょ。
「無理しとらんよ」
「嘘」
「……俺は、部長やから」
「関係ないよ。白石君は、白石君だよ。泣きたいときは、泣いていいと思う。怒ったっていい。無理して笑う必要なんてないよ。だって、一生懸命だったもん」
そう告げる自分の声が震えている。自分が泣きそうになってどうするん。そう自分を心で叱責していると、白石君が息をのむような表情をした。
「敵わんな」なんて言いながらトンと彼の頭が私の肩に添えられた。
「なあ、なまえ。ちょっとだけ、肩貸してくれへん?」
聞こえた声は、微かに震えていた。
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