テニスの王子様SS
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「ねえ、向日君」
「ん?何だ?」
今は、学校の昼休み。暇を持て余していたなまえは自身の隣の席に座る赤毛のおかっぱの彼、向日岳人に話しかけた。
真剣な面持ちのなまえに向日は何か重要な相談でもあるのかと身構えた。
「その髪って、地毛?」
「いきなり何だよ……地毛だけど……」
だが向日が思っていたような質問は来なかった。向日はなまえに呆れたような拍子抜けをした表情をして返す。
「嘘だー」
「お前、失礼だな」
「岳人は、地毛や!」
そんなやり取りをしている二人の目の前に、いきなりスライディングをして現れたのは、氷帝の天才、忍足侑士。なまえはその様子に氷帝の天才ではなく氷帝の変態の間違いじゃないかなんて口にしそうになったものを飲み込んだ。
「忍足君、いきなりどうしたの?」
「いや、岳人となまえちゃんが話しとるのが見えてな」
「ユーシ、お前盗み聞きしてただろ?」
「覗き魔……?」
「いやいや、ちゃうから!なまえちゃんも、そない軽蔑しとる様な目をせんといて!」
そう全力で否定した忍足は、徐に一枚の写真を二人の前に出した。そこには、幼い向日が林檎をかじっている姿があった。
「あ。可愛い」
忍足が差し出した写真を見て呟くなまえ。
「な……!ユーシ!お前何でこんなもん!」
「ああ!酷いで、がっくん!」
「なんだよその呼び方!って、お前も写真を凝視すんじゃねぇ!」
向日は、いつの間にか写真を持っていたなまえの手から写真をひったくり、ポケットへ乱暴にしまった。
「あ……」
「んな顔すんなよ!」
「向日君、やっぱり地毛だったんだね」
「当たり前だぜ!」
「ちなみに俺も地毛や」
「……どうでも良い」
「なまえちゃん酷いわぁ」
本日、二度目の哀れな忍足。
「ユーシもう諦めろ」
ダブルスの相方である向日にも遠い目をされ、更に白くなる忍足。息を吹きかけたら砂となって飛んで行ってしまいそうだ。
「ふふ。それにしても、向日君可愛いかったなぁ」
「な!うるせぇよ!大体、男に可愛いとか言うな!
!」
「あ。ゴメンゴメン。今はうん、かっこいいよ。テニスしてる時とか特にさ」
そう不意打ちのように微笑んで言うなまえに、向日は自身の顔に熱が集まるのが分かった。
「な……!い、今さらお世辞言ったって遅せえよ!」
「お世辞じゃないよ。あ、次移動教室だ。私行くね。向日君も遅れない様に」
なまえは時計の時刻をみて思い出したように机から立ち上がり、教科書などを持って教室を出ていった。
「んだよ、アイツ……」
「お二人さん、ええ感じやなぁ」
「は?!」
いきなり発せられた忍足の言葉に驚く向日。忍足の顔は面白いものを見ているように口角があがっている。
「なんだよユーシ!」
「岳人も、その内分かるで」
そう言い、笑顔で向日の肩に手を置く忍足。が、その手は直ぐに向日に払われた。
「クソクソ!まじで意味分かんねえし!じゃあな!」
教科書を乱暴に持ち、向日もなまえを追うように教室を出て移動場所へと向かっていった。
「ホンマに、素直やないなあ」
そんな向日の背中に忍足は小さくこぼした。
後日。
「ねえねえ、丸井君って地毛だと思う?」
「は?何で丸井?地毛じゃね?……てか俺は知らねえよ」
「そっか。何か、向日君怒ってる?」
「はっ?!お、怒ってねぇよ!マジで!うん」
「良かった」
またも唐突ななまえの笑顔に、向日の心臓が跳ねた。そんな自分に驚く向日。そして、丸井の話題がなまえの口からでただけで何故こんなモヤモヤしているのか、自分の感情に、ほんと意味分かんねえとどことなくつぶやいた。
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