完結作品主人公
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ーまつと跡部の場合ー
「あーん?まつ。ここで何してやがる」
「それこっちの台詞。そもそもここどこよ?」
「さあな。氷帝ではなさそうだ、が……」
「跡部?」
二人で見知らぬ部屋らしき場所にいる。あたりを見回しながら会話をしていると、跡部が突然何かを見つけたのか固まった。一点を見つめ完全にフリーズしている跡部に疑問を浮かべつつ、まつもその視線の先を追う。跡部と同じものを見つけ、まつも同様に固まる。
二人の視線の先には『キスをしないと出られない部屋』という看板があった。
「ちょっと!何よこれ!開けなさいよ!」
「ふざけんな!誰だこんなことをした奴は」
二人同時に抗議の声をあげ、二人で扉を叩く。本当に鍵がかかっているのかとドアノブに手を伸ばしたのも同時で、二人の手が重なりあう。それだけでも恥ずかしいのか、同時に手を勢いよくひっこめた。
「俺様が確認してやる」
咳ばらいをし、跡部がドアノブに手を伸ばす。鍵がかかっていた。跡部がドアノブから手を離した後にまつも同様に確認する。鍵は確かにかかっている。
「困った。二人なら扉を破壊できないかしら」
「キスをするという選択肢はねえのか」
「……跡部はしたいの?」
「お前とのファーストキスをこんな命令の下でやるのは御免だな」
そうだよねと同意を述べるまつ。だが、どうしたものか。悩んでいると跡部がため息を溢し、まつの名を呼ぶ。まつがそちら向くと、跡部はまつの手を優しくとった。
「跡部?」
「黙っていろ」
そう告げながら、まつの手を掬うように下から支える。そして、そのまま静かに引き寄せ、手の甲に口づけを落とした。
流れるように優雅に行うその姿に、思わずまつは息をのむ。目を閉じていた跡部が、今度は手に口づけを落としたまままつに上目使いで視線を向けてくる。その眼差しに、まつは胸が高鳴った。
ガチャリ。
扉の鍵が開く音がした。それに気が付き、跡部が満足そうにまつの手を離し扉の方を向く。
「よし。開いたな」
「これもありだったのね」
「賭けだったがな」
「ありがとう跡部」
二人で並んで部屋を出ていく。二人の顔は微かに赤かった。
ーたけと不二の場合ー
「なんだこの部屋?」
「さっきまで普通に歩いていたよね」
そう言い二人で顔を見合わす。あたりを見回し、扉らしきものを見つけ開けようとするも鍵がかかっている。疑問を浮かべるたけの肩を叩き、不二は扉の上に書かれた文字を指をさす。
「『キスをしないと出られない部屋』?なんだそりゃ」
「なんだろうね」
「まあいいか。そんじゃ」
二人でその文字を見つめ、納得したように互いが顔を合わす。どちらともなく唇が軽く振れあう。
ガチャ。
「お。開いた開いた」
鍵の開く音が響き、たけが扉を開ける。
「それで、さっきの話の続きなんだけどね」
「甘党の裕太に激辛は辛いって」
何事もなかったかのように、二人は会話の続きをはじめ部屋を出ていった。
ーうめと忍足の場合ー
「なんやねんここ」
「侑士くん!よかった。何か急にこんなところにいて」
「うめもかいな」
見知らぬ部屋に気が付けばいた二人。どうやらここには、うめと忍足しかいないようだ。
「あ。何か紙が落ちてる」
うめが足元にあった紙に気が付き拾う。それを忍足も横から眺める。うめはそこに書かれた内容に固まった。
「『キスをせんと出られへん部屋』やって?なんやベタなやっちゃな」
「本当にこんなの存在したんだ……」
うめは戸惑いの表情、忍足は呆れたような表情をしている。困ったけれど、まあ書かれているのならばきっとそうなのだろうと、うめはため息を溢し忍足に声をかけようとした。
「うめ」
「侑士く……っん」
うめが声をかけようとしたと同時に、忍足が名前を呼んだ。それに返事をしようと、名前を呼びながらそちらを向いた瞬間。うめの腰と後頭部に手を回してきた忍足に、口をふさがれていた。
突然のことに驚くも、忍足から降り注ぐキスにうめは目が蕩けさせながら、どこか遠くで鍵が開く音を聴いた気がした。
それから数分後、真っ赤な顔をしたうめを横抱きにした忍足が部屋から出てきた。どちらも幸せそうな顔をしている。
ーまつと幸村の場合ー
「なにここ?」
「やあ、まつもか」
見知らぬ場所に、まつは戸惑いながらあたりを見回す。後ろから声がかかり、振り向くとそこには幸村がいた。なぜ幸村がここに、という疑問を持ちながらも名前を呼び、まつが声をかけると、幸村は何かをまつに差し出した。
それは一枚の紙だった。そこに書かれているものに、まつは頭を抱えた。
『キスをしないと出られない部屋』。紙にはそう書かれていた。
「何よこれ。絶対おかしい。何か手がある、はず……って幸村サン?」
「ん?」
「ん?じゃない!近い近い」
笑顔でじりじりと距離を詰めてくる幸村。その圧に思わずたじろぐ。距離はあっという間になくなり、幸村はまつの顎を片手で掬った。もう一方の手はまつの腰に回し、逃がさないとっいた意思を示していた。まっすぐに見つめ、顔を近づけていく幸村。
まつはとっさにその幸村の口を手でふさいだ。
「無理無理!ちょっと心の準備が……!」
ガチャ。
「?!ほら開いた!開いたから!手でもオッケーだったんだね!よかった」
そう言い、まつはのけ反りながら扉を指さす。片方の手は幸村の唇に当てたままだ。そっと幸村はまつを離す。使えない部屋だとか何とか聞こえたことに関して、まつは空耳だと自分に言い聞かせた。
ほっと息をつき、二人で扉に向かう。
「心の準備ができたら教えてね」
「……うん」
出る間際に幸村がまつに耳打ちをする。その顔には悪戯をした後のような笑みが浮かんでいた。そんな少し茶目っ気のある幸村にまつは微かな笑みをこぼした。
ー撫子と真田の場合ー
「弦一郎君。ここどこ?」
「わからん」
先ほどまで道場で共に練習をしていたはず。だが、今は見知らぬ部屋にいる。あたりを見回してもいるのは二人だけ。
扉らしきものを見かけ、出ようと手をかけるも鍵がかかっており開かなかった。
「なんのつもりなんだ」
「悪戯?」
「よしんばそうだとしても、何故」
「そうだよね」
そう言いとりあえず鍵らしきものはないだろうかと、部屋をみてみる。そして、机上に何か書かれていることに撫子は気が付き、真田に声をかけた。
「『キスをしないと出られない部屋』だと?」
「どういう意味だろう?」
二人で書いてある文字を見つめる。
「何かの暗号だろうか?」
「そうだね。うーん。キスか。接吻のことよね」
「それをしろ、ということは」
「接吻は唇を当てること。……あ!何かと何かを当てたり、重ねたりするとか?」
「成程!確かにそうかもしれんな!」
「あそこらへんのもの怪しくないかな?」
「よし!まずはあそこからだな」
謎解き脱出と完全に勘違いしている二人。それから必死に二人でそれらしきものを探しては違うかとやり取りを重ねている。
それから数時間後。開いた扉から出てきた二人は、茹蛸の如く真っ赤な顔をしていた。
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