テニスの王子様
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めーでー。めーでー。誰か助けて。
私の目の前にはどこまでも深い笑みを浮かべる彼がいる。脳内で警報が鳴り響く。
傍から見たら美男子に微笑まれているといった温かい光景に写るそれも、今の私にはただの恐怖でしかない。
彼が一歩近づくたびに私も一歩後ろへ下がる。じっくり来るのやめて。怖いから。
本当は今すぐにでも背を向けて、一目散に逃げだしたい。けど、きっと背を向けた瞬間に殺されそうだ。本能が告げている。
「どうして逃げるんだい?」
「野生の勘が危険と告げているからです!!」
私なにかしましたっけ?!何も思いあたらないんですけど。
なんでこんなに迫ってきているの。何なんですか。
「ひどいな。話をしたいだけなのに」
「いやいやいや。わわわ私は特に話すことがありません故」
「君じゃなくて、俺が話したいんだよ」
テニス部部長の彼が神の子と呼ばれる理由がわかりました。穏やかな人なのに、なんであの癖強そうな立海のテニス部の部長なんだろうって思っていた。真田君に彼のことをどう思っているか聞かれた時に、優しくていい人だと思うよなんて言ったかつての私。柳君に彼が恋人ならどうだなんて聞かれた時、あんな人が恋人だったら素敵なんじゃないと言ったかつての私。お前は何も見えていないし、よく知らないのに適当なこと言っているんじゃない。
トンと背中に何かが当たる。
しまった、行き止まり。
横に道はない。ある道は目の前の彼が立っている道のみだ。
ああああ。終わった。脳内に鳴り響く警報が更に強くなる。
「みょうじさん」
「ひいい」
ドンという音とともに私の顔の横に手をつく彼。
俗にいう壁ドンだ。前に友人が壁ドンなんかされたらときめいて胸がドキドキしちゃうよね。なんて言ってたけど、色んな意味でドキドキですよ。胸がときめくどころか恐怖で心臓暴走して失神しそうなんですが。誰かAED持ってきてだよ。誰か119番してだよ。
私の顔の真横にある腕は、その見た目に反して逞しく鍛えられており、ああ彼もちゃんと男の人なんだな、なんて現実逃避の感想を抱く。
そんな彼がじっと私を見つめる。命でも取られそうな目だ。彼が言葉を紡ごうと口を開く。
何を言われるんだ。神の子の前で頭が高いとか言われるか。そうなったらもう土下座して額を凹むくらい地面に押し付けて助命を乞うしかない。
先手必勝だ。神の子というくらいなら、崇拝する人に寛大だろう。彼が言葉を告げると同時に承諾して土下座だ。
「俺と、」
「承知しました!!」
「恋人になってほしい」
「……え?」
え。
彼ハ、今ナンテ言ッタンデショウ。
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