カグラバチ
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「……カツ丼」
ぽつり、と。
薊は戦場には似つかわしくない言葉を落とした。
瓦礫が崩れる音の中、その言葉が耳に届いたみことが肩を揺らした。目の前の敵に玄力を込めた一撃を叩き込み、違うとばかりに人差し指を立て薊に向けて告げた。
「え。うどんでしょう。天ぷらのったうどん」
「いや蕎麦やろ」
声と同時に現れた柴が、薊とみことの二人の死角からの攻撃をいなした。
敵が大きく倒れる轟音と主に、三人が向かい合うように立つ。それぞれがそれぞれに鋭い視線を向ける。
ふと視界の端で、渾身の一撃を放とうと敵がゆらりと起き上がったのをとらえた。
「カツ丼!」「うどん!」「蕎麦ぁ!」
激しい爆音と共にそれぞれが一撃を放つ。
――三人の玄力が、最悪の形で共鳴した。
周囲の地形が変わった。
*******
「お前たちは、何をやっているんだ」
本部では腕を組み青筋を立てる壱鬼を前に、並んで正座をさせられている三人がいた。
それぞれの頭にはたん瘤がくっついている。
「僕はカツ丼が食べたかった」
「私はうどんが食べたいと言いました」
「蕎麦やろ言うた」
あっけらかんという三人の姿に、壱鬼のこめかみがぴくりと跳ねた。続けざまに呆れたようにため息を溢した。
「そうじゃない」
捕縛任務は最速で成功したものの、どう考えても任務の内容と今回の周囲の土地の荒れ様がつりあっていない。山奥の誰もいないようなところと把握していたこともあり、深刻な被害がなかったからよかったが、地形を変えるほどの喧嘩。まだまだ青臭い三人に反省するようにと、壱鬼は刻々と話をした。
三人が謝罪を述べ、次からは気を付けるようにとなり解放される。
立ち上がる時に足が痺れたとかで、お互いの足をツンツンしあって再び騒いでいる三人に壱鬼の顔はもう呆れを通して無になっていた。
そして一人遠い目をしながら心に呟いた。
どうして一人ひとりは優秀で真面目なのにこうも揃うとガキ臭いんだこいつらは、と。まあまだまだ子供ではあったな、とどこか微笑ましく思えるのもまた事実。
「全くお前たちは。それに、蕎麦屋に行けばだいたいその三つともあるだろう」
「「「確かに!天才だ/や壱鬼さん!!」」」
三人が声をそろえてこちらを向いた。
「おっしゃ、蕎麦屋行こかー!」
「この時間でもまだやっているところあるかな」
「せっかくだし六平も呼びましょう」
「お、ええやん」
「賛成」
話に花を咲かせながら肩を並べて三人が去っていく。
ここに六平が加わるともっとカオスになることも知っている壱鬼は、まあ若い者が元気でやっていてくれるのはいいことでもあるのかと独り言ちたのだった。
