カグラバチ
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「六平サン!見てくださいよ!」
「六平様、この前の刀、本当に――」
大勢の人に囲まれ、各々が楽しそうに六平に語りかけている。その賑やかな現場を少し離れたところから、どこか嬉しそうに見守る三人の姿があった。
それぞれとの会話を終え、名残惜しさを滲ませながら六平を囲んでいた者たちが去っていく。
先ほどまでの賑やかさと打って変わり、四人だけとなった。
お待たせといった形でにこやかに六平が三人のもとに足を進める。こちらに向かってくる六平の姿を目に留めると、三人は全く同時に「相変わらず着ているシャツのセンスが独特すぎる」と心の中でつぶやいた。
「六平。ほんま人望だけで生きとるな」
「生活力を人望で補っているタイプ」
「一人にすると確実に生きていけなさそうよね」
「ははっ!大丈夫だ!見ろこの力瘤!」
そう言い自慢げに筋肉を見せつけてくるが、三人は何をもってそれが生活力につながるのかあきれ顔を返す。
しかし全員対抗心だけはあるので、これまた謎に力瘤自慢をしあう。やれ薊がここの部位は自慢だの、柴がこの前壱鬼さんに褒められだの、 みことも玄力頼りを補おうと筋トレに励んでいるだの各々が筋肉自慢トークを始めて白熱している。
そんな中――六平の腹から大きな音がなった。
「で、今日の飯、どうするんだ?」
お腹をさすりながら告げる六平に「ほらな」「ほら」「ほらね」と三人同時に言葉をこぼし、一拍置いて、また同時に笑い声があがった。
「折角やし何か食べに行こか。何がええ?」
「そうだなぁ、腹の虫もなったしガッツリしたものであれば何でも」
「みこと。今日仕事してたし、みことが行きたいところにしようよ」
「えーいいの!ありがとう!じゃあこの前座村さんがおすすめしてたお店行きたい」
「ほんとみことは座村好きだね。けどまああの店はアリかも」
「俺も行ったことあらへんから気になっとったわ」
「っしゃ、んじゃあ行くか!」
「今回は薊の奢りでー」
「おー、悪いなー薊!奢ってもろて助かるわー!」
「はあっ?!ちょっと待て」
「頼んだぜボンボン!」
「いや僕勘当されてるし」
「じゃあここはじゃんけんで!」
全力で気合を入れ、各々がじゃんけんぽん!の掛け声のもと出す。薊は拳を出し、みこと、六平、柴はパー。
薊が頽れた。
グーの拳は全てに勝るとぼやく薊の肩を叩き、笑い合いながら歩き出した。
その矢先、みことの歩幅がわずかに乱れた。
本人は何事もないふりをしていたが、先の仕事で大規模な結界を張ったり何度も移動術を使用したばかりだ。玄力を酷使したからか、指先がほんの一瞬ではあったが意思に反して強張った。
六平は何も言わず、ただ歩く速度をほんの少しだけ落とす。
薊と柴がそれに合わせて歩幅を詰め、結果としてみことは自然と真ん中に収まる形となった。
「……六平。腹減ったって言う割に遅いな」
「ん?ああ。……今日は道がどこも混んでそうだからな」
それだけ言って、六平は何でもない顔で前を向く。
みことは一瞬だけその背中を見て、すぐに視線を落とした。自身が消耗していることを気付かれたくないが、たぶん、もう気付かれている。
柴が小さく息をつき、薊が何も言わずに肩をすくめる。
誰も口には出さないが、全員分かっていた。
六平は世話を焼かれる側みたいな顔をして、こういう時だけ、誰よりも早く気づいて、誰よりも何も言わない。
「……ほんと、人望だけで生きている人よね」
「失礼だな。ちゃんと実力があるからだぞ」
そう返す声は、やけに穏やかだった。
