カグラバチ
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「チヒロ。みことが来たぞー」
台所でご飯の支度をしていると父さんがやって来た。
父さんの後ろからひょこりと顔が出てきて手を振ってくる。
「やあチヒロ君。久しぶりだね。しばらく厄介になるよ」
「みことさん。ご無沙汰しています」
「相変わらずしっかりしているね」
「俺に似たな」
「絶対違う」
父さんと軽口をたたきながら、頭をポンと撫でてくる。その手つきはどこまでも優しい。
これお土産と袋を手渡され、お礼を言い受け取った。食材やお菓子や本と諸々のものが入っている。
俺には?と横から聞く父さんに、貴方はいい加減家事を勉強しなさいとピシャリと告げていた。
抱えていたたくさんの荷物をよっこいせと置いている。
父さんの知り合いはいい人だけど一風変わった人が多い。
鎺みことさん。この人もその一人だ。
柴さんや薊さんみたいに時々この家にやって来る。ふらりと遊びに来るときもあれば、今回みたいに必要な用事があって来ることもある。
家事が壊滅的にできない父さんに代わって、料理を教えてくれたり料理本を持ってきてくれたりする。柴さんと同じく父さんの「英雄」話もよくしてくれる。その度に父さんは「英雄」を否定するのはいつものこと。
初対面は父さんの知り合いで珍しく女性で、常識人かと思ったけれど柴さんたちと同じくどこかズレていた。
周囲の人は言う。
「底抜けにええ奴やし頭もキレるけど変人やね」
「君のお父さんや僕や柴にとって気の置けない奴。玄力オタクの変態かな」
「器用で何かと面白い奴だぞ。変わってるけどな!まあ、薊と柴と仲良くしているってことはそういう……オイ薊ィ!何すんだ!」
そして全員が最後には口を揃えて言うんだ。
「玄力操作でみことの右に出るものはいない」
と。
「今回は一人か?」
「ええ。薊も柴もどうしても手が離せない用事が重なったみたい。即行で終わらせて終わり次第どっちかが来るらしいけれど」
「大丈夫か?」
「心配しすぎ。まあいつも以上に厳重にやるから問題ないよ」
いやそうじゃなくてなぁと頭を掻きながら困ったように告げる父さんは、みことさん自身の心配をしているのだろう。
戦争後、父さんは俺と妖刀と共にこの家に隠れることを選んだ。
この場所は結界術によって隠されている。
その結界をはっているのがみことさんだ。規格外の玄力操作ができるみことさんの結界術は柴さん曰くどえらいもんらしい。
それでもメンテナンスは必要で、こうして定期的に張り直しをしている。今回はみことさんがやってきた目的はそれだ。
「諸々の準備があるから、張り直しは明後日くらいを予定しているよ」
「ああ。俺たちもその間は大人しくしているさ。いつも悪いな」
「六平が気にする必要はないよ。それに悪いなんて言わなくていい」
「……そうだな。ありがとなみこと」
「感謝はいくらでも受け取る」
そう笑い合っている二人の姿に盟友という言葉が脳裏をよぎる。みことさんや柴さんや薊さんと一緒にいるときの父さんは、いつものふざけた感じとも刀をうっている時の感じとも違う独特の雰囲気を纏うことがある。
まあ結構ふざけているということは置いておいて、こういう時。下手に踏み込んでしまえば壊れてしまうようなどこか危うさも秘めているような。
「そうだチヒロ。折角だ、みことの結界術は随一だからな。勉強にもなるし今回はみことと一緒に行動しとけ」
「ちょっと六平。今回は柴も薊もいない。何かあった時に、」
「んー。大丈夫だっ!」
「その謎の自信なに?!」
「みことさん。よろしくお願いします」
前回結界をはりなおしたときは未熟すぎて玄力や結界術といったものを理解していなかった。今回またとない勉強の機会に俺は食い気味で返事をした。
「えええ。まあ……いっか」
何かあったときの保険かけとくか、と顎に手を置きながらうーんと考えるみことさんに、よろしくお願いしますと再び頭を下げた。
