禍祓いの影札
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空気が凍る。
その声と同時に、若手は後ずさった。直後、背後から迫った影に向けて一人が刀を抜き、振り下ろす。刀と刀がぶつかる甲高い音が響く。
人形を操っている男が、刀を手に、不気味な笑みを浮かべて立っていた。
若手は反射的に抱えていた身体を放しかけるも、寸前で踏みとどまった。腕の中の人物は相変わらず青白い顔で、浅い呼吸を繰り返している。とても斬りかかってくるようには見えない。
一人が刀で押しのけたその時、男の片手が青白い顔の人物に触れた。眠っていた何かを呼び覚ますような、ほんの一瞬の動きだった。
「あなた達が切り伏せている人形。元は何か、ご存知ですか?」
くつくつと笑いながら、男は姿を消した。まさか、とばかりに若者が顔を青くする。
「離れて!!」
みことが、声を張り上げた。
若手の袖を掴んでいた指が、不自然に痙攣した。まるで糸で吊られた操り人形のように。
「……!」
抱えた身体が、急激に重くなる。いや、違う。
抱えていた人物が、突然にして首を驚異的な力で絞めつけ、そのまま地面にたたきつけてきた。
突然のことと、恐ろしいまでの速さと怪力。何が起きたのか。助けに入ろうとしたもう一人の若手も困惑を浮かべる。豹変した人物は、苦悶する若手の腰から刀を奪い取り、そのもう一人をも容赦なく切りつけた。
斬られた若手は反撃をするも、元は助けようとしていた人物でもあったからか、躊躇いから、相手に与えた傷は浅かった。首を絞められていた若者が、緩んだ隙に相手を蹴り飛ばして立ち上がる。
刀に手をかけ構える若手二人を、あざ笑うかのように、どこからともなくこの空間全体に声が響いた。
「ここは医療を施している家ですよ?はいて捨てるほど人も臓器も集まる。価値のない人に、価値を与えてあげているんです。どれもこれも、それらのなれの果て。役目を終えても利用価値がある」
素晴らしいでしょうと、告げてくる術師の声。彼の告げた内容に、その場にいた全員がそうであってくれるなと願っていた最悪の結論に至った。
人形が元は人だと分かった瞬間、若い二人の手が止まった。敵は、その一瞬を見過ごさなかった。
今まで巳坂に向かっていた敵が、一斉に標的を変え二人に向かう。
みことはとっさに彼らに結界を張ろうとした。それを分かっていたとばかりに、みことの目の前にいた敵だけはみことを狙ったままだった。結界の展開が僅かに遅れると判断したみことは、己に向かった刃を避けると同時に、彼らに綾紐を伸ばした。
敵は一瞬で二人との距離を詰め、切り掛かる。二人の心臓を狙っていた敵の刃は綾紐で止められたが、数が多い。敵の刀は二人を切り裂いた。
新たな血の匂いが妙に鼻につき、みことは顔をしかめた。
