カグラバチ
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「どうだ?」
みことの隣にいた六平が、呟くように投げかける。
「……うーん。いけそうな気もする」
みことは、摘まんでいた雫天石の欠片を睨むように見つめながら、ぽつりと溢した。
今まで多くの術師が、雫天石に玄力を注ぎ、爆発的な力に身体が耐え切れず爆散してきた。
みことは、自身が手にしている石に対して、自分を迎え入れているような、あるいは溶け合うような感覚があった。
その感覚のまま、静かに極々微量な玄力を込めた。増幅した力に目を見開き、すぐに玄力の流れを遮断した。
「どう?」
隣にいる六平に顔を向ける。真剣な眼差しをしていた六平は、目頭を指で押さえた。あり得ないものを見た、とでも言いた気な様子だ。
「やっぱり、規格外だよなぁ。なんで爆散しないんだ。今の量でも、普通なら、手が捥げてもおかしくない」
それくらいの力だった、と六平は告げる。
「して見せようか」
「やめてくれよ」
冗談冗談とあっけらかんと言いながら、みことは、摘まんでいた雫天石をひょいっと宙に投げ、己の手に握った。雫天石を握りながら、みことは何かを決意するような目で、前を見つめた。
「だけど、この感じをうまく使えば――真打を折る妖刀を、作れるかも」
「……ああ」
みことと同じ目をした六平も、静かに頷いた。
そのためにどうするべきか、改良点等をみことが六平に話しかける。ああでもない、こうでもないとお互いの見解をすり合わせていく。
雫天石を片手に、メモを記しながら頭を悩ませるみこと。
そんな雫天石を扱うみことの横顔を見て、六平が、ふと呟いた。
「みこと。お前、生まれは何処だったけか」
「なに急に。生まれ。生まれか……」
みことは言葉を繰り返しながら、持っていた雫天石の欠片を静かに和紙の上に置いた。そのまま、ふうと息をつき、上を見た。僅かな沈黙が流れた。六平は、静かにみことを見つめていた。
「正確には、知らない」
「知らない?」
「あー。ほら、六平たちに会う前、私は鏑斗の家にいたでしょ。そこに引き取られる前のこと、あまり覚えていないんだよね」
困ったとばかりに手を挙げ、明るい口調でみことが告げる。
「唯一覚えているのは――両親に手を引かれながら、浜辺を歩いていたのだけ」
穏やかで楽しい時間だったよ、とどこか遠くを眺めながら告げるみこと。
「まあけど、多分邸の近くなんじゃないかなぁって思うよ」
「……そうか」
「何かあった?」
考え込むように、六平が顎に手を当てる。
「六平?」
雫天石に玄力をこめた時も、六平はじっとみこととその玄力の流れを見つめていた。そしてそこには、疑念の瞳も見受けられる。
六平から向けられる視線に、みことは意図が読めず、頭上に疑問符を浮かべた。
素っ頓狂な顔をしているみことに、六平は力を抜いた。
「いや、お前みたいな破天荒な奴は、どこ産なのかと気になってな」
「どこ産って、人に向かって言うものなの?」
呆れ顔のみことに対し、六平は鼻を鳴らすと、両手を広げて仰々しく肩をすくめた。そのあと、わざとらしく自分の頭を叩き、閃いたとばかりに叫んだ。
「思い出した!前に千晃がお前を拾って来た時、お前、飯の代わりに砂利とか食ってなかったか?だから石と仲が良いんだな。納得だわ、スッキリした!」
「食べてないし!何その記憶?!そんな訳ないでしょう!」
みことはとんでもない推測に、堪らず吹き出した。六平は、みことの笑い声に合わせるように、豪快に笑ってみせた。だが、その笑い声の裏で、彼は奥歯を噛み締めていた。
「父さん。みことさん。何しているの?」
「おーチヒロー!」
「チヒロ君。騒がしくしてごめんね」
二人の笑い声に、どうしたのかと千鉱がひょこりと顔を出した。みことは、とっさに和紙の上の雫天石を片付けた。六平は、千鉱の方に顔を向け、自身のお腹をさする。
「あーあ、みことがアホなこと言ったから、腹減ったな」
「え。関係なくない?それにアホなこと言ったのは、六平でしょ」
「ごはん作ろうか?」
「お願いしやす!」
「チヒロ君。あんまり甘やかしちゃダメだよ」
素直な千鉱は六平の言葉に、準備するよと、台所に向かおうとした。みことは自分も一緒にしようと、立ち上がり、その小さな背中を追いかける。
「みこと~石じゃなくて、ちゃんとした米な!」
「うっさい。本当に石だすよ?」
二人の会話に、千鉱は石?と疑問を浮かべる。そんな千鉱に、気にしなくていい行こうと声をかけ、みことは歩みを進める。
千鉱とみこと、二人の背中を見つめ、六平は、どこか安堵と憂いが混じりあったため息を溢した。
「みこと。お前はただの俺らのダチの鎺みことだ」
そう、自分に言い聞かせるように。六平は、力を抜き、小さく笑った。
