カグラバチ
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「ただいま~」
泥と埃にまみれ、魂が抜けたような顔のみこと、無表情の薊、どこか笑いをこらえた様子の柴。そして、何が起きたのか分からず首を傾げたままの千鉱。玄関を開けた六平は、何事かと瞠目した。
「お前ら、土砂崩れにでも巻き込まれたか?」
みことは無言で、土埃まみれになっている服の袖を払った。
「六平。世の中には、暴かない方がいい神秘というものがあるんだね」
「僕はしばらく巻物という言葉を聞きたくないね」
遠い目をするみことと薊。柴だけが、肩を震わせてクククと笑っている。かくかくしかじかと事のあらましをみことが伝える。千鉱がいるのも慮り、巻物が春画であったことは濁して。
「いやぁ、六平。アレは傑作やったで。先人の情熱、凄まじかったわ」
「柴、それ以上言ったら埋めるよ?」
柴のノリと薊の低い声に、六平はだいたいの察しがついたようだ。ハハッと短く笑った。
「なるほどなぁ。妖術の深淵に触れるつもりが、人間の深淵に触れちまったってことか」
そこで六平は、汚れ一つない顔で立っている息子に目を向けた。
「チヒロ、お前は大丈夫だったか? 怪我は?」
「うん。皆さんが守ってくれたから。でも、結局あの巻物には何が描いてあったの。父さんは分かった?」
純粋無垢な千鉱の問いに、玄関の空気が一瞬で凍りつく。
みことと薊が、鋭い視線を六平に飛ばす。余計なことを言うなよ、という無言の圧力だ。
六平はしばし沈黙した後、千鉱の頭をぽんぽんと叩いた。
「チヒロ。あれはな、究極の護身術だ」
「護身術?」
「ああ。あまりの衝撃に、見た相手が戦意を喪失して、顔を真っ赤にして逃げ出す……という、恐ろしい術だ。お前がそれを習得するのは、あと五年……いや、十年早いな」
「そう……。修行、頑張るね」
父の言葉に納得したのか、とりあえず皆さんにお茶でも入れるねと告げながら家の中へ消える千鉱。その背中を見送り、大人三人は深く、深いため息をついた。
「六平。お前、適当なこと言いすぎやろ」
「いいんだよ。実際、ある意味では最強の防壁だろうよ、アレは」
六平はニヤリと笑うと、お前たちも中に入れと声をかけた。
「ま、詳しい話は茶でも飲みながら聞かせろ。その秘伝の内容をな」
「「「絶対に教えない!」」」
三人の呆れた声が、六平邸に響き渡った。
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