氷帝怪事件
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「おい、そのへんにしとけよ」
そう言って現れたのは、青と白に黒いライン入ったジャージを着た人だった。その後ろには付き添うように大きな人が立っている。二人ともどこか威厳に満ちた雰囲気を纏っており、思わず背筋が伸びた。
――あれ?
ふと後ろにいる大きな人の腕に目が留まった。
彼の腕には、以前杏についていたような黒い雲のようなものがあった。
その雲に驚いている私を一瞥して、先ほど制止の声を上げた彼は言葉をつづける。
「全く。部のコートが使えないから、こういった場所に来てみれば。弱者の貯まり場だな、ここは」
「なんだとてめぇ。偉そうに出てきやがって。デートの邪魔すんじゃねぇよ」
「とりあえずその手を離せ。嫌がる女性を連れていくデートなんて初めて聞くぜ」
「ふざけやがって」
そう言って殴りかかろうと男が彼に向かった。とっさに「危ない」と声をかけてしまったが、後ろにいた人が彼を守るように立ちはだかり、男の腕を掴んだ。
男は振り払おうとしたが、掴む力が強いのかびくともしない。焦ったような表情が浮かんでいるのが、ここからでも分かった。
「樺地。はなしてやれ」
「ウス」
樺地と呼ばれた人が、前にいる人の言葉と共に掴んでいた腕を離した。相手は舐めやがってと言いながら恨みがましく睨みつけていた。
「聞き分けのない奴だな。なら、ここはストリートテニス場って言うくらいだ。テニスで勝負しようじゃねぇか」
「いいだ、」
「おい、やめとけ!こいつは跡部だ」
「……まじかよ」
もう一人のその場にいた男が何かに気が付いたのか、焦った様子で仲裁に入った。男も「跡部」という名前を聞いて、そそくさと逃げていった。
ふんと鼻を鳴らし跡部と呼ばれた彼は去っていた背を冷たく眺めていた。
「あの、ありが、」
「杏ちゃん!峰子ちゃん!」
「……神尾君?」
なぜ男たちが逃げたのかはよくわからないが、助けてくれた跡部さんと樺地さんにお礼を言おうと思ったら、神尾君が息を切らせながらこちらに来た。
神尾君とともに、もう一人の男の子がいる。不動峰では見ない顔だ。神尾君の友達だろうか。
「神尾君。桃城君」
杏がそう名前を呼び、神尾君と桃城さんたちが駆け寄って来た。
私たちの前に立つ跡部さん。そのさらに前に、割り込むように神尾君たちが入った。思いっきり警戒を露わにしている二人の様子に、私は焦った。これ何か勘違いしていそう。
跡部さんはそんな二人をみて、何か思いついたのか怪しげに笑った。
「で、あんたがデートしてくれんだっけか?」
「……は?」
「ちょっと!何言ってんのよ!」
「気が強ぇトコもカワイーじゃねぇの」
突然私の方をみて言う跡部さんに、何を言ってるんだ彼はといった目線を送ってしまう。
杏ちゃんに至っては跡部さんに反抗している。さっきのナンパ不良の真似でもしているんですか。似ていないし、似合ってないですよ跡部さん。後ろの樺地さんは無表情のまま立っている。……いや、突っ込まないの?この人。
そんな跡部さんのやりとりに神尾君と桃城さんが怒り、テニスをすることになった。
跡部さんはテニスがしたかったのかな。
いやけど、普通に一人コートで座ってますけど。樺地さん一人でダブルス状態ですが。あれいいんですか。
「杏。あれってありなの?テニスってあれがダブルスなの?」
「そんな訳ないでしょう!ふざけているわ。助けてくれたかと思ったけど、しょうもない人だったわね。頑張って神尾君、桃城君!」
杏は神尾君と桃城さんの応援に夢中だ。
周囲は試合で盛り上がっている。私はそんな中でも、一人でコートに立っている大きな彼に纏わりつく黒い雲が気になって仕方なかった。
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