不動峰の日々
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――幽霊っていると思う?
夏場の心霊特番などがあるときや、日常の何気ない会話の中で何となく耳にする質問。
私は昔からこの質問に答えるのが下手くそだった。
幼少期から何となく見えていて、それが周りにも見えていると思い込んでいた私は純粋に口にしていた。
『あそこにいる子、一人で寂しそうだよ』
『何言ってんの。誰もいないじゃん』
『まぁた言ってんのかよ。いいかんげんにしろよなー。ほっとけーそいつ変なことよく言うんだよ』
小学校の先生に何気なく口にしたことが先生の顔色を変えたこともあった。
気味悪がられ、そういう悪戯はよくないと母から酷く怒られた。
それから何となく、これは周りには見えていないんだ。と納得するようになった。
口に出したらおかしい子と言われる。母が病院の案内について父に相談している場を見たとき、これはいけないと幼いながらに思った。
それ以降は見えても無視。気にしないのを心掛けていた。
「ねえねえ、峰子はどう思う?幽霊っていると思う?」
「え?私?うーん」
クラスメイトに声を掛けられ、ぼんやりしていた私は突然話題が降られると思わず曖昧な返事をするしかなかった。
「やめなって。そんなことよりさ、次の時間体育だよー。早く着替えよう」
「そうだった。あの先生遅刻するとねちねち煩いからね。いっそげー!」
私の気不味さを切り裂く様なまっすぐな声が横からやってきて、話はおひらきになった。
ほっと胸をなでおろし、感謝の念を込めて先ほどの声の主の方を向く。
「杏、ありがとう」
「なんのなんの。峰子があの手の話題苦手なの知ってるし。私も怖いの苦手だし」
「神尾君は鬼太郎みたいな感じなのに?」
「ちょっと、なんで神尾君がでるのよ!まったくもー」
そう言って、むくれながら体育着を準備する杏。
橘杏。
彼女は昨年九州からこの不動峰に転校してきた。
色々あって仲良くなり、更に今年は同じクラスになったのもあり、だいたい一緒にいることが多い。
彼女のおかげで、あの幽霊たちへの考えが変わったのもまた事実。
見ない、無視を心掛けていた以前の私に、少しの勇気をくれた。本人には言えないけど。
今まで逃げていた私に、この目の意味を考えさせてくれるきっかけになった大切な友人だ。
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