Pokémon短編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朝日が顔に当たっている。鳥ポケモンのさえずりが耳に届く。そして、背中にある温もりと共に優しい香りが鼻孔をくすぐった。それら全てが、ゆっくりと私の覚醒を促していった。
「あれ、私」
ゆっくりと目をあけると、ふわふわのベッドに横になっている。何となく気だるい。視界の先は大きな窓。そこから太陽が眩しくおはようをしている。この陽の高さと強さから考えてそれなりに昼に近そうだ。
にしても、だ。この景色は、いつもの部屋のベッドから見る景色と違う。
何処だ、ここ?
うーんとぼんやりする頭に覚醒を促す中で、目が覚めたときに感じた背中にある温もりに意識がいった。今も感じる。あれ、なんか今更気が付いたけど、後ろから腰に手も回されていないか。これは、自分以外の誰かがこのベッドにいて、後ろから私を抱きしめて……はっ!
そうだ。昨日は確か、久しぶりに恋人との時間を共に過ごした。何かと忙しい彼との時間。もともと定期的に会ってはいたが、ここ最近はちょうどいろいろ仕事が重なったことに加え、私との都合も上手くつかず、しばらくご無沙汰だった。
そんな中、本当に久しぶりに二人でゆっくりと過ごした時間。恋人との時間が愛しくて、久しぶりというのもあって気が付けば色々と盛り上がって……。ああ、なるほど微かに気だるいのはそれが原因か。
呆れたように笑い、後ろにいる彼を起こさないように細心の注意を払って体の向きを変える。
ついさっきまで大きな窓だった景色が、今度は穏やかに眠る彼の顔になる。
「髪サラサラだな」
氷の石のように輝く銀色の髪をふわりとひと撫でする。相変わらず綺麗な顔をしている。僅かに彼の口元が綻んだ気がした。そんな姿に私も思わず破顔してしまう。
こんな見た目で意外と激しかったり、もう無理といっても飽きることなく続けてくるのだから困ったものだ。しかも私の今の姿から考えると、後処理もしてくれたようだ。律儀なのか何なのか。一体全体、どこにそんな体力あるんでしょう。まるで付き合い始めた頃のように、昨日は特に盛んだったな。
今日は彼も私もオフの日。久しぶりに会ったことに加え、こんなに幸せな朝があるだろうか。朝と言っても、もう昼に近そうだが。一緒に過ごした夜の次の朝の多くが、あまりゆっくりできないということが多くあった。優しい口づけと共に挨拶を交わしまたねとお互いに出発する朝は、幸せな中にも僅かに寂しさがあったのもまた事実。今日はこれからも一緒に過ごせる。幸せな思いが心を満たしていく。
さて、朝ごはんの準備でもするかな。
腰にある鈍い痛みを気にしないようにして、ベッドから起き上がろうとした。
しかし、素早く動いた彼の腕が、私を背中から抱きかかえ彼の胸元へと引き寄せた。
「ちょ、ちょっとダイゴ。起きてたの?」
「今起きたよ。で、どこに行くんだい?」
行かせないとばかりにぎゅっと抱き寄せられる。力強いって。
「どこって。朝ごはん」
朝ごはんという単語に、僅かに彼の腕の力が抜けた。そうか、そうだった、とぼんやり呟いている。
「今日はお互いオフだったね」
「うん。折角だし、どこか行こうよ」
あれ、そう言えば昨日もどこか行こうよとか、そんな話をしたな。結局どこに行くってなったんだっけ?
……そうだ。同意してきて、ゆっくり考えようと言っておきながら、何やかんや彼のペースにのせられて、結局お互いを求めあってそのまま今を迎えているんだ。
「ダイゴが体力底なしのせいで、今日の予定なんも決まってません」
「そういうなまえだって一緒に盛り上がってたじゃないか」
それは貴方がそう仕向けたんでしょう!と叫びたくなったが、結局は自分も盛り上がっていたということを認めることになる。やめとこう。
黙った私に気をよくしたのか、ダイゴがぎゅっと再び抱きしめてきた。あろうことか顔を私の首元に押し付けてくる。サラサラの髪が僅かにくすぐったい。もう好きにさせておこう。
その状態のまま、せっかくのオフだし、何がいいかと考えを巡らす。カイナやミナモに行って買い物をするのもありだ。久しぶりに一緒にバトルをするのもいい。それか何なら散歩とかでも。洞窟近くを通ったら石探しが始まるだろう。まあ、それもいいか。
ふと、ダイゴの手が私の体を撫でた。はじめはさする感じであったためあまり気に留めていなかったが、徐々にその手つきが不穏になってくる。
「ダイゴ、なんか」
「なんだい?」
「その手、ちょっと」
そう遠慮がちに告げると、ダイゴが顔を上げ楽しそうに微笑んでいる。明らかに意図してやっているこの人!
これは危険信号だ。今日は折角のお互いオフなんだ!ダイゴのペースにのせられないようにベッドから降りようとするが全く動かない。こんの馬鹿力!
「ダイゴ!」
「なまえ」
ダイゴの方を見ると、まっすぐとこちらを見ている。その眼差しにドキリとする。綺麗な人の真顔ってちょっと怖い。なんでそんな真剣な顔をしているんですか。戸惑う私に、言葉は不要とばかりに顎を掬って深い口づけを落としてくる。
「今日の予定、ボクとしてはもう決まっているんだよね」
愛してる。その言葉と共に私は再びシーツの海に沈んだ。
2/3ページ