24 -seasons-
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朝晩と冷え込む季節になった。運動会シーズンでもあり、道ですれ違う小学生がソーラン節などを口ずさんでいる様子をよく見かける。
今年は中学最後の運動会。先生たちと準備をすすめ、恙なく明日は運動会が実施できるだろう。
「よし!これで終わりだ!皆よくやってくれた」
「やりましたね橘さん!」
「神尾さ。明日が本番なのに今日そんなにはしゃいだら、疲れて当日動けなくなると思うんだよな」
「そういう伊武も、楽しそうに準備してたじゃねえか」
「鉄の言う通りだぜ深司」
実行委員長である橘くんが、今日までの準備に対しねぎらいの言葉を全体にかけている。その周りには、男子テニス部の人たちがいる。それぞれが楽しそうな表情をしていて、見ているこちらも頬がゆるむ。
橘くんが明日頑張ろうと言い、それに応えるように実行委員全員で拳を空に掲げ気合いを入れる。
テニス部の部長でもある橘くん。以前テニス部での事件から、何となく怖いイメージがあったが、話をしてみると中身は熱血で漢気あふれる優しい人だった。テニス部の二年生もかなり慕っている様子からもその人柄がうかがえる。
そんなことを思っていると、冷たい風が吹いた。気が付けばもう夕方だ。日中は暖かかったが、やはり夕方になると冷え込む。半袖で準備をしていたが、上着を着た方がよさそうだ。
腕を軽くさすりながら、帰宅の準備をしていると橘くんが全員に再び声をかけた。
「実行委員の皆には世話になっている。どうだ、身体の温まるようなものを作って来たんだが、良ければ食べていかないか?」
満面の笑みと、出されたものに全員の目が釘付けになる。そこには、温かそうなスープがあった。いいにおいがする。寒暖差の激しいこの季節。身体を温めるにはぴったりだろう。それを忙しい中でも、実行委員たちを思って作ってきてくれた彼。料理も上手なようだ。
「橘さん!」
テニス部の人たちと同じように、尊敬のまなざしを込めて実行委員全員が彼の名前を呼んだ。
「志木!実行副委員長のお前には何かと世話になったな」
「そんなことないよ。橘くんこそありがとう。料理まで差し入れしてくれるなんて流石だね」
そう言いながら橘くんが作ってきたスープを受け取る。その際に再び冷たい風が吹いた。その風に思わず腕をさする。そんな私に、橘くんは何かに気が付き焦ったような表情をした。
そして自身の上着を脱ぎ、私を包むようにかけてくる。彼が今まで纏っていたのもあり、あたたかい。だが、今度は彼が半袖になってしまった。突然のことに驚きを隠せない。
「い、いいよ!それじゃあ橘くんが寒いでしょ。悪いし」
「半袖だと冷えるだろう!妹も言ってたが、女性は体を冷やすといかん。副委員長のお前が明日風邪で休んだりしたら困る。それに俺は暑がりだからな!」
そう言い私の背中を叩いた後に笑顔で去っていく橘くん。本当に彼はどこまでも優しい人だ。
彼から受け取ったスープを眺めながら、自分の頬にともった熱を風が冷ましてくれることを願った。
二十四節気「霜降」