フェルム地方出身
最終章
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『もしある日突然、存在が消滅したら、どうなるんですか?』
バーネットさんと話をした後に何気なくムクゲさんに聞いた質問。ないものとして扱われる。そうなった場合、それはどうなるのか。
もともとなかったものとして扱う、それはつまり、忘れるということだろうか、と呟いていた。
「ネリネちゃん!しっかり」
「ネリネ。ガブリアスたちも、どうしたの」
ダイゴさんとヒガナさんの焦ったような声が耳に届き、意識が戻される。これは夢か現か曖昧な感じだ。
ふわりと何かに支えらえ、温もりを感じる。誰かに抱えられているのだと気が付いた。薄っすらと目を開けると、視界の端でガブリアスたちも体が重いのか、身を低くしている。
体に鉛がついたかのように重い。誰かが、私を遠くで呼んでいる気がする。
『けど、その未来の世界がもともとその改変した過去が大きな転機となってできたものなら、やはり存在は矛盾を生むから、ないものとして扱われるんじゃないかしら』
『何が正しいのかというのは、実際に起こるまでは分からないものよ』
バーネットさんの言葉が頭に響く。隕石があのホウエン地方に落ちる結末は回避した。そして、それはつまりその未来の姿であるフェルム地方の存在もなくなったということだ。
ここに向かう直前に、ダイゴさんがこぼした疑問を思い出す。フェルム地方にいた君はどうなるかと。その答えが今ここで、出ようとしている。
正面を見るとダイゴさんの顔がある。そんな顔をさせたい訳じゃなかった。ごめんなさい、と心の中で謝罪を溢す。けれど、あの世界の貴方を救うことはできた。
「ダイゴさん。一緒に世界を回る約束、果たせそうにありませんね」
「ダメだネリネちゃん」
何か方法があるはずと、告げながら腕に力を籠められる。そんな彼に笑いかけるも、上手く笑えていたか分からない。
けど、大丈夫。きっと、今は悲しくても。その記憶はなくなる。
「大丈夫ですよ。全てが正しく、戻るだけです」
もともと私はこの世界の人間じゃない。
だけど、ほんのちょっと悔しいも事実。運命、宿命、そんなものを抜きにして貴方に会いたかった。
ふと、自身の体が微かに光をおびているのが分かる。時間がもうない、そう思った。
「それなら、必ず、僕は君を迎えに行く」
そう真っ直ぐ告げてくるダイゴさん。彼なら本当にしそうだなんてぼんやりと考える。
仮初の約束でも私は口元が緩むのが抑えられなかった。そんな約束していいの、なんて言いたい。
「ダイゴさん、これを」
「これは、」
「それはあたしがあの世界のネリネから受け取ったものだよ」
ヒガナさんの言葉に、コクリと頷く。流星の滝に連れられた時に、私に返したらしい。そして、これは、あの世界の貴方から私が受け取った物でもある。これが、きっと私たちを繋いでくれる。そう思えてならなった。
最期に見せる顔が泣き顔なんてまっぴらごめんだ。ガブリアス、エーフィ、ブラッキーが重い体を引きずって私の元に来た。私は、ダイゴさんに支えられながら相棒たちを抱きしめる。
「ありがとう」
その言葉と共に、私の世界は光に包まれた。