フェルム地方出身
第七章
名前変換
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「じゃあいくよネリネちゃん」
「はい!」
ガブリアス!と相棒の名を叫ぶ。私の掛け声と共にガブリアスが前に躍り出た。その様子に頷き、ダイゴさんもモンスターボールからポケモンを繰り出した。
光と共に現れたのは、青色の4本足のポケモンだった。見たことのないポケモンだ。ガブリアスと視線を交わす。
「見た感じ、鋼タイプ……?」
「ご名答!メタグロスは初めて見るかい?」
鋼エスパータイプだと告げてくる。とてもよく育てられていると肌で感じられる。ガブリアスも見たことのない相手に武者震いをしている。
「気負い過ぎずおいで」
「はい!ダイゴさんもケガしないようにお気をつけて」
「おっ、言うね」
不敵な笑みを浮かべながら構えるダイゴさんを見つめ、バトルグラスに触れる。そして、ガブリアスと私のお互いの手首についている装置を撫でる。
どちらともなくお互いの相棒の名を呼ぶ、激しいぶつかり合いが始まった。トクサネ宇宙センターの裏にある開けた場所で轟音が響く。きっと、またロケットの開発などをしているのだろうとこの音を聴いた人たちは思うだろう。そんなことを頭の隅で考えながら、久しぶりの強敵とのバトルに、実験でのバトルとはいえ心が躍った。
そもそもこうなった経緯は、つい先ほどのことに遡る。
ダイゴさんの家で休み、今日はトクサネ宇宙センターへやって来た。ソライシ博士を紹介され、今回の計画への協力を感謝された。さっそくとばかりに渡されたエネルギーを分析する装置。まずはそのエネルギーの実際を抽出し解析したいとなった。
共鳴バーストをするには、バトルなど相棒との共鳴ゲージをためる必要がある。それならば、とダイゴさんにより提案されたポケモンバトル。
チャンピオンであるダイゴさんとバトルができることに、ガブリアスがノリノリだった。
激しい攻防を繰り返しながら、ダイゴさんが楽しそうに笑った。実際にバトルをしてみて、ダイゴさんとメタグロスはバトル慣れしていることがよく分かる。チャンピオンであるから当たり前か。
メタグロスの素早い鋼の拳がガブリアスに向かって放たれる。あれは避けるよりも受けて流す方がよさそうだ。ガブリアスがメタグロスの拳を受け、その勢いを利用して地面に叩きつけた。そして、そのまま地面から砂の竜巻を引き起こし相手を弾き飛ばす。
メタグロスはその嵐をサイコキネシスで止め、体制を立て直すと同時に、ガブリアスの立っていた地面を激しく揺らし地を裂いた。ただではやられない。流石だった。ガブリアスが身を翻しながら後ろにジャンプしメタグロスと距離をとる。
「そろそろかな、ネリネちゃん。僕も、本気にならせてもらうよ」
ダイゴさんが、胸のポケットについていたものに触れる。それが瞬く。これは、まさか。
いくよとばかりにこちらに微笑みかけてくると同時に、メタグロスが光に包まれた。そして、再びメタグロスの姿が見えたときには姿が変わっていた。
「?!これが、メガシンカ」
「そう。さあいこうか、メガメタグロス!」
姿が変わり、たしかに共鳴と似ている。初めて見るメガシンカに驚いている私に、隙ありとばかりに攻撃を仕掛けてくる。先ほどよりもスピードが増している。それに、繰り出す拳も力強い。
ガブリアスがメガシンカした相手の攻撃を避けながらこちらに視線を送ってきた。
そろそろだ。決めるとばかりに私の右側が瞬いた。
ガブリアスと頷き合う。私がバトルグラスに手をかけたと同時に、ダイゴさんの目つきが鋭くなる。今度はガブリアスが眩い光に包まれ、姿を変えた。
お互いが姿を変え、パワーアップした状態でぶつかり合う。先ほどよりも更に激しい轟音と振動があたりに広がる。
メタグロスがガブリアスの間合いに入った。ここだとばかりに私は叫んだ。
「ガブリアス!いくよ、バーストアタック!」
その声とともに、ガブリアスが嘶き眼前に迫っていたメタグロスに腕を振り下ろす。ダイゴさんもメタグロスに指示をしている。
メタグロスとガブリアスの拳がぶつかり、その衝撃で二匹の足元の地面が沈んだ。すさまじい地響きがあたりに広がった。
「わああネリネさん!ダイゴさん!そ、そこまでですー!抽出完了ですー!」
「?!」
「あ」
泣きそうな声が響く。その声に、ガブリアスと一緒に動きを止まる。私たちが止まると、ソライシさんが私とダイゴさんの間に入った。
お疲れ様でした素晴らしいですとガブリアスと私の手首についていた装置を外した。これから解析に入りますとお礼と共にトクサネ宇宙センターに戻っていくソライシさんの背中を見送る。
そうだ。すっかり夢中になってバトルをしていたけど、今回は共鳴バーストのエネルギーの抽出が目的だった。一応は被害のない開けた場所でバトルをしているが、あのまま続けていたらそれなりに後始末が悲しい現場になっていたかもしれない。さっき「あ」とダイゴさんも溢していたあたり、ダイゴさんもきっと忘れてただろうな。
ガブリアスにお疲れ様と告げると、シュンと姿が元に戻った。気が付けばメタグロスも姿が戻っており、私たちの方にやって来た。メタグロスに楽しかったよとお礼を言うと、メタグロスも嬉しそうに返事をしてきた。
「やはり、シロナ君が言っていたトレーナーは、君だったんだね」
「?」
「ありがとうネリネちゃん。こんなに昂ったのはこの前のチャンピオン戦以来だよ。ここ最近でこんなに楽しいバトルが2回もあるなんてね」
嬉しいよ、とどこか興奮冷めやらぬ様子でダイゴさんが告げてくる。その様子に私も思わず頬が緩んだ。
メタグロスかっこいいですね、と告げると、ダイゴさんの目が輝いた。あ、これまずいな。ガブリアスが知らねとばかりに背を向けた。ダイゴさんは、昨日ダイゴさんの家で石に反応した時と同じ目をしている。
「そうだろう?!鋼タイプはね、」
私の手をがしりと掴んで、鋼タイプについての愛を懇々と語ってもらった。
いつも以上に饒舌になっているダイゴさんに、一つの連絡が届いた。
「そうか。あの子が隕石の欠片を。分かった。今から連絡を入れて、トクサネ宇宙センターに一緒に向かいます」
何やら、隕石の欠片を集めていたトレーナーがそれを手に入れたらしい。これからトクサネ宇宙センターに向かうようだ。
「ネリネちゃんも来るかい?」
「トクサネ宇宙センターですか?」
ああと首肯される。エネルギーのことや、ワープホールのこと、知りたいことがそれなりにあるため、一緒に行くことにした。
「ソライシ博士が自由に見てくれて構わないとのことだ。ちょっと僕は博士のところに行ってくるね」
「はい。私は展示をみています。お気を付けて」
トクサネ宇宙センターに着き、ダイゴさんと別れる。
先ほどやって来た時は、ソライシさんのいるラボにすぐに移動してしまったため、展示などをじっくり見る時間がなかった。ガブリアスたちと共に宇宙の展示をみる。
ワープホール、それがあれば、こことフェルム地方が繋がることもあるだろう。フェルム地方とホウエン地方が自由に行き来できる未来もあるのだろうかと思いを馳せる。
展示をみていると、何やら騒がしい声がどこかから聞こえた。何かあったのだろうか、その騒動の元に向かおうとしたら、何かがこちらに走ってきた。
何だと思い、ガブリアスたちも身構える。にょにょーと鳴きながら私の前で止まり、ぴょんぴょん跳ねている。
「ゴ、ゴニョニョ?」
野生?いや、それにしては人に慣れ過ぎているというより、なぜこんなに嬉しそうなんだ。何だろうと思い、しゃがんで手を伸ばし撫でるとこれまた嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。
「迷子?」
そう告げるとゴニョニョは違うとばかりに体全身を使って否定をした。何だろうか。とりあえず、受付の人にポケモンがさ迷っていると言った方がいいのかと立ち上がり、受付の方に行こうとした。
しかし、ゴニョニョがんにょーと鳴きながら私の足にひしりとしがみついた。ええ。何だろう?ガブリアスたちも何だと困っている。
そんな私に向かって驚きのような声音が飛んできた。
「え、シガナ……?」
シガナ。どこかで聞いたな、と思っているとゴニョニョが走って来た方向に一人の人物が立っていた。
その人物は驚愕と共に、信じられないという心情を包み隠さない顔でこちらを見ていた。