フェルム地方出身
第七章
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あれからダイゴさんと別れた後、久しぶりにツツジと会い話に花を咲かせた。ツツジに石を見て目の色を変えた人がいると伝えたらもしやダイゴさん?と言われたので、まさかそこが繋がっているとは思わなかった。なんでも石友らしい。確かに石を前にしてのあの様子、二人は話が合いそうだ。不思議なものだ。
ツツジと別れた後、ハギさんに連絡を入れて戻ろうとした。ちょうどポケナビを出したそのとき、ムクゲさんから連絡が来た。何だろうとガブリアスに目配せをすると、首を傾げた。
連絡に出ると、ムクゲさんの申し訳さそうな声音が響いた。
ーネリネちゃん。急ですまないが、カナズミのデボンコーポレーションの本社に今から来てもらえるかい?
「ムクゲさん。まだカナズミ付近にいるので問題ないですよ」
ーそうか。それはよかった。ハギちゃんにはもう許可は貰っている。今から我が社の社員が迎えに行くよ。
「いやいや!大丈夫ですよ!」
今からすぐ行きますと告げ歩き出す。ハギさんにはもう伝えたと言っていた。何か時間がかかるものなのだろうか。
何だろうねと相棒たちと顔を合わせると、とりあえず行くしかないだろうという顔をしている。そうだね。
途中でデボンコーポレーションの社員さんと合流し、本社にたどり着いた。ちょうどそのタイミングで若いトレーナーが何か急いだ様子でポケモンに乗り南の方に飛んで行っていた。何だろうかと思っていたら、社員さんからこちらですと声をかけられ、社長室まで足を進めた。
社長室ではムクゲさんが椅子に座り、こちらをみていた。
「ネリネちゃん、急な呼び出しの中で来てくれてありがとう」
「いいえ、大丈夫ですよ。どうされました?」
実は、とムクゲさんが再び眉尻を下げた。ダイゴには最後まで反対されたが、と前置きをした。やはり、あのダイゴさんが急いで去った時の要件なのだろうか。
「ネリネちゃん。君のその共鳴バーストと呼ばれるそのエネルギーをどうか、ホウエンを守るために使って欲しいのだ」
「ホウエンの、ために?」
何のことだろうかと思っていると、ムクゲさんから衝撃の事実が告げられた。
シシコ座流星群と共にこの星に近づいていた隕石。元からその規模に、落ちた際は甚大な被害になると注意して動向をうかがっていた。そして、この前、突如その隕石が軌道を変え、何でもホウエン地方に向かっているとのことだ。
デボンコーポレーションはトクサネ宇宙センターと協力し、メガシンカの時に発生する超大なエネルギーを利用して宇宙にワープホールを作り出し、隕石を他のところにズラすという計画を行っているらしい。
「そんなことが起きていたなんて。もし、隕石がホウエン地方に落ちたら……?」
「おそらく、ホウエン全土が消える。いや、世界そのものが消失するかもしれない規模だ」
隕石、世界が消滅する規模、脳裏に夢の幻影が浮かんだ。あれが起きる、そう思えてならなかった。
だがムクゲさんの話の中で気になることがある。
「ネリネちゃん、どうしたんだい?」
「その。ワープホールでズラすといういことは、隕石自体は破壊しないんですよね。その隕石は、どうなるんです?」
私の疑問にムクゲさんが一瞬険しい顔をする。だが、安心してくれと言うように笑顔を向けられた。
「通信ケーブルというワープホール同士をつなぐもの次第らしい。だが、安心してくれて構わない。この星に落ちることはないから」
ワープホールを繋ぐ先は、通信ケーブル次第。なんだか嫌な予感が胸をよぎった。それで本当にいいのだろうかと、胸に何かが常につかえている感じだ。軌道をズラしたりして星とは反対の方のところにしたりするのだろうか。
私が考え込んでいると、ムクゲさんは更に話をつづけた。通信ケーブルの制御に更なるエネルギーが必要だということも分かった。そこに関しては、隕石の欠片を今集めてくれている協力者がいるらしい。
「どうだい、ネリネちゃん。本来は一般人で、ましてや大変な中にいる君を巻き込むべきではないとダイゴは強く反対しているが……」
ホウエン地方がなくなってしまうかもしれない。それは、嫌だった。ハギさん、ゲンジさん、ツツジ……今まで出会った人たちの笑顔、そしてホウエンの長閑な街並みを思う。それに、被害はホウエン地方だけではない可能性の方が大きい。世界が消失するかもしれない。
それなら、私にやれることがあるのならば。
相棒のガブリアス、エーフィ、ブラッキーも頷いている。
「協力させてください」
私の一言に、ムクゲさんがホッとしたような顔をした。
それから忙しなく事が運んだ。
何でも今からトクサネ宇宙センターの方に向かって欲しいとのことだった。トクサネ宇宙センターと言うからにはトクサネシティだとは思うのだが、いかんせんどう行こうかと頭を悩ませていると、心配無用とばかりに交通手段をデボンコーポレーションが手配してくれた。
ムクゲさんに挨拶し、ホウエン上空を抜け、あっという間にトクサネシティに着いた。
「トクサネシティ。ここが。見てガブリアス、あれが宇宙センターかな?」
そんなことを相棒たちと話をしていると聞きなれた声が私の名を呼んでいた。
「ネリネちゃん!」
「ダイゴさん!トクサネシティにいらっしゃったんですね」
「親父からきいた。巻き込んでしまって、本当にすまない」
「いえ。私にできることがあるなら、協力させてください」
「……ありがとう」
「こちらこそ、心配してくださったとムクゲさんから聞いています。お気遣いありがとうございます」
「全く。親父、余計なことを……。けど、本当に無理はしないでね」
「はい」
とりあえず疲れただろうと、時間も遅いため一旦休もうと誘われる。どこかで宿を探そうかとしたら、何でもダイゴさんの自宅がこのトクサネシティにあるらしく、そこでよければとなった。
てっきりカナズミに住んでいると思っていたが、どうやらトクサネで一人暮らしをしているようだ。
「あ。安心してくれて構わない!別にやましい気持ちがある訳じゃあないんだ」
「そんなこと別におっしゃらなくても大丈夫ですよ」
それにしても人の家なんて久しぶりです。あのシロナさん以来だと呟くと、シロナ君と知り合いなのかと驚かれた。
「ダイゴさんも、シロナさんをご存知なのですか?」
「まあね。チャンピオン同士、交流もあってね」
「そうなんですね。……ん?チャンピオン?同士?」
「?」
「ダイゴさん。まさか、ダイゴさんってポケモンリーグ関係者とおっしゃってましたけど、まさか、」
しれっと発言した内容に目を見開く。まあついこの間、新しいチャンピオンが誕生したから、正確には今は違うかなと笑うダイゴさん。
「言ってなかったっけ?」
「初耳です!」
何なんだこの人。と言うより、シロナさんといい、チャンピオンってこんなにプラプラしていていいのか。
驚いて絶句している私にからからと笑う綺麗な顔に拳をいれたくなった。