フェルム地方出身
第六章
名前変換
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懐かしい声と共に振り返る。そこにいたのは銀髪に高級そうなジャケットスーツをまとった青年だった。その姿に自然と目を見開いた。
「おや。人がいたのか。君、大丈夫かい?」
突然声をかけられ、どう反応していいのか分からなくなる。とりあえず頷いた私の背後に楽しそうに赤いドラゴンタイプのようなポケモンが来て、背中に頭を押し付けてきた。
「え。ちょ、ちょっと」
「ラティアスがそんなに甘えるなんて。この前のトレーナーの時といい、最近はラティオスとラティアスが楽しそうで何よりだよ」
ラティアスとラティオスとはこの二匹のポケモンの頃だろうか。もう一方の青いポケモンを撫でながら彼が言葉を溢す。
何が起きているのか、急なことに戸惑っている私に彼が話しかけてきた。
「ああ。急だっただろうから、びっくりするよね。僕はダイゴ。この子たちはラティオスとラティアスだよ」
「ダイゴ、さん」
その名前に再び目を見開く。
確か、前にシンオウ地方でハギさんから告げられた人の名前が、ダイゴだった気がする。それに、その時と同じように名前を呟くだけで心臓が鷲掴みにされたような感覚に陥る。
はじめて会うはずだ。だが、何故久しぶりに会ったという感覚が沸き起こるのだろう。そして、この胸に溢れて渦巻く感情は何なんだろう。
「あの。私たち、以前どこかで、お会いしたことありますか?」
遠慮がちに尋ねると、ダイゴさんは一瞬驚いたような表情を浮かべる。それから考えるような様子を見せ、悪戯気に笑いかけてきた。
「もしかして、口説いてる?」
「え?!あ。そんな滅相もありません!!失礼しました。その、お気を悪くされたのならごめんなさい!」
「はは。ごめんごめん。冗談だよ」
確かにいきなり初対面でそんなことを聞かれたら不審に思うだろう。そんなつもりはなかったため、全力で謝ったが、そんな私の様子にダイゴさんが声をあげて笑った。なんだこの人。
「ただ、自慢じゃないけど、僕はちょっと有名でね」
そう告げた彼は、僅かばかりに寂しそうな表情を浮かべる。
有名なのかと彼を見つめる。確かに見た目も綺麗だし、モデルさんとかやっているのかなと考える。いずれにしても、有名ならば、きっとその有名さに目をつけて悪意のある人も近寄ってきたりするのだろう。フェルム地方でリーグを勝ち上がっていき有名になるにつれ、そういう負の面も多くみられるようになっていた自身の経験を思い起こす。
色々と大変なのだろうと一人思っていると、ダイゴさんが私の方を見てほほ笑んできた。
「変に気を遣わせてしまって、ごめんね。冗談でも言うべきではなかった。君が善良なトレーナーであるくらい分かるさ。ラティアスやラティオスが姿を見せたんだ。それに、君の連れているポケモンを見て分かるよ」
「ありがとう、ございます」
ポケモンの扱いに慣れているのか、ガブリアスの口元を撫でながら告げられる。とりあえず悪い人や怪しい人ではなさそうだ。ガブリアスもはじめは警戒していたが、私が大丈夫だと思うというように背中に手を当てると大人しくしていた。
「ん?おや。それは、もしかして石?」
ダイゴさんが何かに気が付いたのか、私を示しながら声をかけてくる。私はその視線に先にあるものに手を当てる。触れた指先からひんやりとした心地よい感覚を与えるのは、バトルグラスだ。
「これですか?」
私がバトルグラスに手を当てながら尋ねると、ダイゴさんは興味津々とばかりに目を輝かせていた。それはもう子供のように。
「感じたことのない石の波動を感じる!よければ、見せてもらえないだろうか?!」
ガバリと私の手を掴んで詰め寄って来る彼にたじろぐ。
え。石の波動って何、いや、そもそもさっきまでのクールな感じはどこへ。
その変貌っぷりに私とガブリアス、エーフィ、ブラッキーは顔を見合わせた。その視界の端で、呆れたような楽しそうなラティオスとラティアスが見えた。