フェルム地方出身
第一章
名前変換
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ゆっくりとまどろみから覚めていく。
私は確か、フェルムリーグをしていた。そしたら突然、謎の少女と黒いポケモンが参戦してきて。
そのまま戦って。大技を相手が繰り出して、地面が揺れて。
そうだ。そのまま眩しい光に包まれて。
あれ?それから、どうしたんだっけ……?
ふと疑問を浮かべると同時に、誰かが私の名前を呼んだ気がした。その声に振り向こうとして視界が暗転した。
気が付けば、白い天井が視界一杯に広がっていた。
「ここは……?」
どうやら私は眠っていたらしい。温かい毛布に包まれている。
起き上がろうとした途端、何か衝撃に襲われ私は再び柔らかい綿の海にダイブした。
この感じ。いつものあれだ。よかった彼らは無事のようだ。
「ガブリアス、エーフィ、ブラッキーどうしたのよ」
そう私が呟くと、3匹は嬉しそうに声を上げた。
いったいあれは何だったのか。夢だったのだろうか。それにしてもここはどこだろう?
「おう。気が付いたかお嬢ちゃん」
現状に疑問を浮かべながら3匹と戯れていたら、突然見知らぬ声が聞こえた。見ると入り口のところに、豪快というような単語がぴったりそうな老人が立っていた。
「あの。あなたは?それに、ここはいったい……?」
「わしの名前はハギ。ここはカイナのポケモンセンターじゃ。お嬢ちゃんこそ、なんであんなところで海の藻屑となっておったんじゃ?」
「えっ。海の藻屑、ですか?私が?!」
老人はベッドのそばにあったソファに腰かける。ガブリアスたちが大人しくしているあたり、ひとまずは危うくはなさそうだ。
カイナってどこ?ポケモンセンターって?疑問は尽きないが、一番引っかかったのは、海の藻屑という言葉だった。どういうことだ。
「キナギで海にでも落ちたか?」
「い、いえ。確か、私。フェルムスタジアムでバトルしていて」
「フェルムスタジアム?」
私は目覚める前までのこと、自分が覚えていることを話す。
お互いがお互いに、話す単語に検討が付かず、話がうまくかみ合わない。
「すまんな。わしがその地を知らんせいもある」
「いえ。私こそフェルム以外の地方があるなんて今まで知りませんでしたし。あ。申し遅れました。私、ネリネと言います」
そう言えば名乗ってなかったと思い自己紹介をしたが、彼は私の持っていたトレーナーカードを見て名前は知っていたらしい。
そうだ。海に浮かんでいたということは、私の所持品は。ふと右耳を触れるといつものバトルグラスがないことに気が付く。なんで今まで気が付かなかったのか。
焦った私に気が付いたのか、ハギさんがどうしたのかと心配してくる。
「バトルグラスが、ない」
「バトルグラス?」
ハギさんは、バトルトレーナーの必須のアイテムであるバトルグラスを知らないようだ。こう耳に着けるやつですと説明すると、ああ。と彼は声を上げた。
「これか?」
「ああ!よかったです」
「わしからしたら馴染のない物じゃが、大事な物なんじゃな」
「はい」
彼が徐に差し出したものを受け取る。傷もついていない。よかった。大事に手の中におさめる。
ガブリアスも安心したような顔をしている。
先ほどまでのやりとりといい、恐らくこのハギさんが海に浮かんでいた私を助けてくれたのだろう。
お礼がまだだったと思い、お礼を告げる。当然のことだと答えるハギさんはきっと心根がとても優しい人なのだろうと思えてならない。いい人がたまたまそこに居合わせてくれていてよかった。
「おう。気が付いたか」
「おっ、ゲンちゃんか。色々と手続きをしてくれてすまんな」
再び入り口から声がした。見ると、ハギさんと同じくらいの年頃の人が立っていた。海賊みたいな格好だ。
ゲンジと名乗る彼は、大事がなくてよかったと言いながら私にトレーナーカードを差し出した。ハギさん曰く、二人で船旅をしているときに海に浮かぶ私を見つけ、ゲンジさんがここまで運んでくれていた。
「ゲンジさん、ハギさん、ありがとうございます」
「気にするな。それにしても。ネリネ。お主、何者だ?」
ゲンジさんの目が鋭く光る。警戒されている?
「何者、と言われましても。フェルム地方のバトルトレーナー、くらいしか」
戸惑う私を見て心配した3匹が微かに唸り声をあげる。それを宥める様に彼らを撫でる。
「その3匹は、手持ちか?」
「手持ち、と言ったことはないですが。パートナーとサポートの2匹です」
大事な家族です。と告げると、ゲンジさんの表情が微かに和らいだ。
「ゲンちゃん、それくらいでいいじゃろ。ネリネちゃんから悪い感じは全くせん」
ハギさんが呆れたように、ゲンジさんに告げる。ゲンジさんもため息を溢し、そうだなと告げ、姿勢を崩した。場の張りつめていた雰囲気が途端に柔らかくなった。
「すまぬネリネ。ポケモンリーグの者として、身元が分からぬ者の調査をせねばならんのでな」
ポケモンリーグとは何だろうか?フェルムリーグと似たものだろうか?そんな疑問も少しばかり浮かんだ。
ゲンジさんはどうやら漂流していた私のことを心配し、身元を探索してくれていたらしい。ハギさんがきょとんとした顔をしている。
「身元が分からんのか?」
「ああ。トレーナーカードのIDはエラー。ポケモンセンターの職員もお手上げだった」
「長く生きとるが、やはり海では不思議なことが起こるのう」
二人が不思議なものだと顔を突き合わせている。仲の良さそうな二人の雰囲気に思わず口元が綻ぶ。
うーん。と頭を悩ます彼らに、私は先ほどから疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「あの。先ほどから、気になっていたんですがポケモンセンター、って何ですか?」
二人は私を驚いたように見た後、再び顔を突き合わせていた。
え。そんな変な質問でしたか?