フェルム地方出身
第六章
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はじまりは唐突であり、終わりもまた唐突だった。きりばらいをしたように、異常気象がぴたりと止んだ。
澄み切った空が広がる。心地よい陽光が地を照らし、穏やかな海の音が響く。
それまでの天気が嘘のように感じられたが、抉れた地面や広がる土砂に、現実に起こっていたことだったのだと諭された。
ツワブキさんが息子さんから事態を治めたという連絡をうけ、周囲からあがった歓声が今も耳に残っている。ピーコちゃんを助けてくれたトレーナーが、今度はホウエンを助けてくれた。感謝の念がたえなかった。
それからすぐにツツジたちと共に、被害状況を調べ、帰宅できる人は安全を確認次第、帰宅することとなった。ガブリアスも私と行動を共にしながら、瓦礫を運んだりしている。
ふうと一息をついたところで、一人の少年が私に声をかけてきた。どうやら避難所にいる最後の家族のようであり、安全の確認が取れたためこれから自宅に戻るようだ。
「気を付けてね」
「うん!ありがとうお姉ちゃん。お姉ちゃんの相棒のガブリアスも。僕、お姉ちゃんみたいなトレーナーになれるように頑張る!」
「ふふ。ありがとう」
「本当に、ありがとうございました。ほら行くわよ」
避難所内の最後の家族を見送る。その家族と入れ替わるように、周囲の安全を確認していたエーフィとブラッキーもハギさんと共に戻って来た。
「ありがとなネリネちゃん。おかげで助かったわい」
「お役に立てたなら何よりです。ハギさん、少し休んでください」
「そうじゃの。こう何日も気を張り詰めていては流石に疲れたわい。一息つくとするか」
そう言い、誰かと電話をしているツワブキさんの元に向かうハギさん。電話が終わったのか、二人で談笑をしている。
二人を眺めながら、ゲンジさんのことを思った。事態の終息から数日経った時、どうやらリーグの招集がかかったらしく、そちらに向かったきりだ。新たなチャンピオンが出るかもしれんの、と呟いて去っていったゲンジさんは、どこか期待に胸を膨らませているような様子だった。
ぼんやりと立っている私に向かってガブリアスが甘えるように頭を押し付けてきた。最近はドタバタしていて、ずっと動いていたこともあり、傍にはいてもあまり構っていられなかった。
「少し散歩しようか皆」
そう告げるとガブリアス、エーフィ、ブラッキーは嬉しそうに返事をした。少し出かけてくるとハギさんたちに告げ、笑顔で見送られた。
「戻って来たね、ホウエン地方」
シンオウ地方とはまた違った光景だ。高くそびえていたテンガン山。湖。花畑。遺跡。謎の洞窟。それらを思い返す。
目の前には、穏やかな海が広がっている。遠くに微かにえんとつ山から出ていると思われる煙が見える。
穏やかだ。
空を仰ぎ見ながら、相棒と共に歩く。フェルム地方を探す日々がまた始まるだろうとぼんやりと考える。けれど、本当に戻れるのだろうか。そもそも戻ることが正しいことなのか。もし、時空の神によるものならば、何かそこに意図があってのことなのか。疑問はつきない。
ふと、何かが目の前に揺らめいた気がした。気配を感じ、立ち止まる。
ガブリアスたちも同時に気が付いたのか、ピクリと身体を揺らし身構える。
「?」
何だろうか?悪意は感じないが、何かを感じる。
あたりを見回していると、何かが横切ったように左右に風が吹いた。驚く私の前にガブリアスが躍り出た。
私の横を通った風が吹き戻るような気配がした。
「待って!ガブリアス!」
唸るガブリアスを安心させるように抑える。悪意は今も感じられない。ガブリアスが理解したのか、私の横にそれた。
その瞬間、風が私の目の前でぴたりと止まった。
しゅわん!という鳴き声と共に、景色を揺らして目の前に露われたのは青色と赤色の対となるようなポケモンだった。
私と目が合うと、嬉しそうにまた鳴いた。
「ラティオス、ラティアス、急にそっちにいってどうしたんだい?」
呆気にとられる私の耳に、とある声が届く。
その声に何故だか分からないが胸がいっぱいになり、鼻の奥がツンとした。