フェルム地方出身
第六章
名前変換
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「ぶわっかあもん!!」
茫然とするように名前を呟いた彼は、はっとした表情をしたのちに開口一番に雷のような勢いで叫んだ。
その勢いに思わず耳を塞ぐ。近くいたガブリアスもビクりと体を跳ねあがらせていた。
危険じゃと言ったじゃろう!なぜ戻って来たんだと告げるハギさん。ごもっともでございます。言われるだろうと思っていたのもあり、ハギさんの剣幕と相対して私は素っ頓狂な顔をしているだろう。けれど、何もせずただシンオウ地方で待つなんてできなかった。あのままもし何もしないでいたら、きっと私はそんな自分を一生許せない。身勝手だとは分かっているが、何もしないなんて選択肢は私には無理だった。
ノンブレスで告げてきたハギさんは私を見つめ、息をつく。じゃが、と言葉をぽろりと落とした。
纏う雰囲気も変わり、小さな声音に微かに驚く。
「ありがとうネリネちゃん。おかげで助かったわい」
「ハギさん」
言葉と共にがっしりと私を抱きしめるハギさんの声は僅かばかりに震えていた。私の存在を夢や幻じゃないんじゃなと、呟くハギさん。抱きしめられる温かさにお互いに生きていると実感できる。
「おかえり」
「はい!ただいまです!」
お互いに笑い合う。ガブリアスもハギさんやピーコちゃんに久しぶりに会えたのが嬉しいのか、全力でハグをしていた。
「ネリネちゃん!おかえり。ハギちゃんを助けてくれてありがとう」
「ツワブキさん!ありがとうございます。ご無沙汰しております」
「ああ。積もる話もあるが、今は避難が先だ。カナズミに行こう!」
「はい!」
再会を喜ぶ私たちに、ツワブキさんが声をかける。ツワブキさんもいるとは思わなかった。集団に感謝されながら、それぞれの無事を確認し慎重にカナズミの避難所に向かう。
ユクシー、アグノム、エムリットの力でホウエンに戻って来た。テレパシーのようなもので、ロトムが図鑑に入り込んでいることや、場所さえわかればそこに送れると告げてくれた。
ホウエンに着いた時、辺りは出発した時と大きく変わっていた。地は抉れ、天候も異常であった。近くにいるはずのハギさんを必死に探し、エーフィとブラッキーが何かに気が付いたようにピンと尻尾を立て、駆けだした。
たどり着いたとき、地鳴りと共に崖崩れが起きていた。崖崩れの先には集団がいた。人の悲鳴に交じり、ハギという単語が聞こえたときには既にガブリアスたちと共に駆けだしていた。
『力を持つ者の宿命なんだ。ボクは、最期までチャンピオンとしての責務を全うする』
頭の中にその言葉が響いた。その言葉に頷き、相棒の名前を呼び落ちてきていた岩を砕く。エーフィやブラッキーが崖崩れの土砂から集団を守った。
砕いた岩が向かおうとしてた先にいる人物を見て、守れたことに心底安堵したものだ。
「シンオウ地方はどうじゃった?」
「素敵な出会いがたくさんありました。そして、時空の神や感情の神のことなども知れました。世の中には知らないことがたくさんありますね」
「ほんとにな。ワシも長く生きとるが、初めてのことだらけじゃ」
この異常気象もなと、空を見上げて呟くハギさん。ツワブキさん曰く、今この異常気象の解決に向けて一人のトレーナーとツワブキさんの息子さんやポケモンリーグ関係者が奔走してくれているらしい。
元の自然豊かな穏やかなホウエン地方が一日でも早く戻るようにと祈るように私も空を見つめた。
避難所に着いた時、ゲンジさんやツツジが、私がいることに驚きの声を上げていた。ただいま、とへらりと告げるとこんな危ない中に戻って来てと相変わらずお小言を言われたが、無事で良かったことやおかえりと笑顔で告げられた。本当にホウエン地方に戻って来たんだと改めて感じる。
かつてない規模の異常気象。その対応に奔走していたであろう、ツツジやゲンジさんたちは疲労の色が濃かった。
「ツツジ、無理しないで」
「平気よ。ジムリーダーとして人々を守る。当然の務めですもの」
そう高らかに告げる彼女。流石といったところではあるが、心配は拭えない。だが、やめさせる訳にもいかない。自分ももしジムリーダーであれば、そう思って行動するだろうと思うと、なんと言えばいいのか言葉に詰まる。
そんな困り顔をする私を見て、ツツジは一瞬驚いた顔をしてにこやかに笑った。
「けどそうね。倒れたら元の子もないことは分かってる。だからネリネ!手伝ってちょうだい!」
「もちろんよ!」
ありがとうと告げ私の背中を叩くツツジ。
お礼を言うのはこっちだよ。そう思いながら、ガブリアスたちを連れてツツジと共に避難所の対応にあたった。