フェルム地方出身
第六章
名前変換
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ールネシティを中心にホウエン地方全体で異常気象が発生中。住人は直ちに避難をしてください。
警報と共にアナウンスが響き渡る。
「ハギちゃん!こっちは大方大丈夫だ。あとはハギちゃんとブッキー達だけだ」
「承知した。ゲンちゃん!ボーマンダと共に先に避難所に向かっててくれ。ツツジちゃんと一緒に安全確保を頼む。ワシはブッキーと共に最後の集団たちと共に行く」
「気を付けるんだぞ」
もちろんと親指を立て告げるハギと頷き合い、ゲンジはボーマンダの翼の音と共に嵐の中を飛び込み、その場を去った。
ハギはゲンジの去った方に再び頷き、強い眼差しをもって踵を返し、集団の元に向かう。ふと、通信機の画面をみるも、着信は来ていない。
「先ほどのは、夢じゃったのか?」
シンオウ地方にいる人物と一度だけつながった。信じられないことだった。一瞬この悲惨な現状にあるホウエン地方に戻ってきてしまったのかと思ったが、まだシンオウ地方にいたようだ。ハギは、その事実に安堵していた。孫娘のように思っている彼女の声が久しぶりに聞けたこと、彼女とまた会って話をしたいという思いが、ハギに力を与えていた。
「ハギちゃん、こっちだ!」
「ブッキー。皆も無事か?」
「ああ。この集団が最後だ」
「よし。行こう。デボンの本社が近くで助かったわい」
この異常気象で土砂災害や洪水、地割れ、ありとあらゆる自然災害が発生していた。
そのような中で、ポケモンリーグの協力の元、各所で避難所が設けられていた。カナズミシティ付近は、デボン本社が避難所として開設されていた。
「息子も物資の調達など協力してくれているが、いつまでもつか」
「何とかもたせるしかあるまい。避難所にはダイゴ君もいるのか?」
「いや。あいつは今、例のトレーナーとともにルネシティに向かっている」
「そうか。この異常気象、ホウエン地方の崩壊を止めてくれることを祈ろう」
自分たちは、今ここでできることをしようと告げる。自身の後ろについている集団にあと少しだと告げ、歩みをすすめる。天変地異という言葉がぴったりなこの現状に、ハギは眉を顰める。
ふと、ハギの頭上を飛んでいたキャモメがけたたましく鳴いた。
「どうしたピーコちゃん」
「ハギちゃん!危ない!」
ムクゲの焦った声と同時に、頭上から何かがパラパラと降りて来た。一瞬、大粒の雨かと思ったが、砂粒や細かい石だった。
「皆逃げるんじゃ!」
まずいと思った時には頭上から影が差し迫った。
大規模な崖崩れと共に、ハギに向かって巨石が落ちてきていた。
ハギは集団を後ろに逃がした。逃げた人々は巨石からはなんとか逃れられそうだが、崖崩れも起きているのだ。無傷でこの場を切り抜けられることは不可能に等しい。
そして何より、自身はこの巨石からは逃れられそうもない。ハギは万事休すかと握りこぶしを作った。集団の後ろにいたムクゲが自身の名前を叫ぶ声がどこか遠くに、ゆっくりとハギの耳に届いた。周囲の悲鳴に、もはやこれまでと静かにハギは目を閉じ、いくら逃げろと言っても傍を離れようとしない相棒のキャモメを抱きかかえ訪れる衝撃に身構えた。
「ガブリアス!!」
崖崩れの轟音、人々の悲鳴、それらを切り裂くような真っ直ぐな声が響いた。
それと同時に周囲に眩い光と共に何かが砕けるような音がした。ハギの前にまた何かの影が落とされた。
何事かと目を開けると、人が立っていた。
背後から当たる光を浴びて輪郭が浮かび上がる。先ほどの声と共に、ハギは驚きを露わにする。そして、何故ここに、という思いがよぎる。
「遅くなりました。ハギさん、ピーコちゃん。ご無事でよかった」
自身の方に身体を向け、手を差し伸べる人物。逆光で先ほどは顔が見えなかったが、正面を向いたことで、ハッキリとその人物の顔をハギは視界にとらえた。
「ネリネ」
幻でも見ているかのようにハギがぽつりと名前を呟くと、ネリネと呼ばれた人物は破顔した。
「ただいま戻りました!」