フェルム地方出身
第五章
名前変換
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「じゃあネリネちゃん元気でね」
「はい。お世話になりました!」
「こちらこそ。無事に旅ができたのもネリネちゃんたちのおかげだよ。ガブリアスちゃんもエーフィちゃんもブラッキーちゃんもありがとね」
「うう。ネリネちゃん!」
「おい、お前顔すごいことになってるぞ。落ち着けって。ったく、ネリネちゃん、これからまた旅するんだろ?気をつけてな」
「ありがとうございます。シロナさんもいますし大丈夫です」
「ネリネ、いつでも用心棒は募集しているからね」
「行ってらっしゃい!」
ありがとうございましたと笑顔で告げ、手を振る。
共に過ごした時間はそんなには長くはなかったが、とても充実していた。そもそも、彼らがいなければ私はシンオウ地方に行くきっかけをもてなかっただろう。自分がどれほど役に立ったかは分からないが、微かに涙目になりながら笑顔で見送ってくれる姿に胸がいっぱいになる。
またと手を振り、彼らの姿が見えなくなるようなところで深く頭を下げる。本当にいい人たちだった。感謝の念がたえない。
「素敵な方々ね。さあ、行きましょうかネリネさん」
「はい!よろしくお願いしますシロナさん」
頭を上げた私に、隣にいたシロナさんが声をかける。
「カンナギタウンまで少しあるから、途中あたしの家によりましょう」
「ありがとうございます」
よろしくお願いしますと告げると、シロナさんが連れていたガブリアスが焦ったようにシロナさんに何かを訴えている。だが、シロナさんは何のことかと首を傾げている。家に行ったらまずいのだろうか?
「家に行かない方がいい?」
私が彼女のガブリアスに尋ねると、ガブリアスが首を縦に振る。
「あら?どうして?ああ大丈夫よ!ネリネさんには研究内容が知られても問題ないもの。そういう方じゃないのはガブリアスも分かっているでしょう?」
「?シロナさん、ガブリアス何か違うことを訴えていそうですけど……」
「大丈夫大丈夫!行きましょ!」
「シ、シロナさん?!」
彼女のガブリアスはそういう意味じゃなくてといったような表情をしているが、流石の相棒なだけありシロナさんの性格を熟知しているのか、諦念したようだ。大人しくついてきているが、私に向かってごめんなさいといような表情をしてきた。
何なんだろう?
その疑問はすぐに明らかになった。
「シロナさん!なんですかコレは!!」
「ええ?!」
「足の踏み場もないじゃないですか!!」
「これでも一応どこにあるのかは分かっている……はずよ!」
「片付けできない人はみんなそう言います!!ってあああ!そこ今にも崩れそうですよ!」
「だ、大丈夫よ。ほらーこの通り」
「あああ!そっちのぬいぐるみの雪崩がおきましたよ!」
彼女のガブリアスが言わんこっちゃないというような顔をしている。私の相棒のガブリアスやブラッキーもあまりの物の多さに呆気に取られている。雪崩となったぬいぐるみをエーフィがサイコキネシスで食い止めている。
とりあえず足の踏み場をと思いあたりを見回す。脱ぎっぱなしの上着や読みかけの雑誌など様々なものがある。
溢れている物の多さから、きっとシロナさんは多趣味なのだろうとは思うが。
「いや、それでも多すぎるでしょう!」
「片付けは苦手なのよ。けどやるときはやるのよ!」
続けて告げられた「これでもまだ綺麗な方だと思うんだけどな」といった言葉は聞かなかったことにしよう。彼女のガブリアスも聞かなかったことに、と目が語っている。
散らかっているかしら、なんて手を合わせながら軽く俯いて尋ねてくるシロナさん。その姿はめちゃめちゃ美人さんだが、背景がいかんせん、言い方が悪いが汚い。
彼女のガブリアスが、どうかよろしくという風に頭を下げてきた。そんな様子に微かにため息が零れる。
「シロナさん!しますよ!片付け!!」
「……はい」
美人で強くて頭がいいシロナさん。そんな完璧そうな彼女の、まさかのずぼらな面に驚かされた。
ゴミはそんなにないため、溢れている物の整理整頓がメインだった。
片づけをする中で、シロナさんは研究している神話についても語ってくれた。途中であの資料はどこだったかしらーなんて言いながら、探してそれを放置して散らかるという出来事が何回かあった。きっと、部屋があんなだったのはこれが原因かな、なんて思いながら相棒たちと顔を合わせ笑った。
「次から人を呼ぶときは気をつけなきゃいけないわね」
綺麗になった部屋を眺めながら呟いたシロナさん。現状維持がどれくらいできるだろうかと再びガブリアスたちと共に顔を見合わせた。