フェルム地方出身
第五章
名前変換
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「元気出してガブリアス」
ずーんといった効果音がぴったりなほど沈むガブリアスに申し訳なさがふりかかる。エーフィとブラッキーも心配そうな面持ちをしている。
あれからコンテストの舞台を降り、着替えた私。ちょっと待っててねと言い会場に戻っていたシロナさんを今は待っている。
コンテストが終わったのか、微かに会場から歓声と拍手が響く。その会場に最後までいれなかったのが少しばかり悔しいが、仕方ない。
「君は、先ほどの」
「?どなた?」
会場の方に微かに顔を向けて考え事をしていたら突然声をかけられた。なんだろうと思い見ると、青い髪で三白眼の男性がいた。雰囲気に圧があるが、目の下に隈がありどこか体調が悪いのだろうかと思ってしまう。ガブリアスたちも、警戒するようにじっと見つめている。
「莫大なエネルギーを感じた」
「え」
「あれは、いったい何なんだ?」
まっすぐに私を見つめなが好奇心をあらわにした表情で詰め寄って来る。
共鳴バーストのことを言っているのだろうか?どう答えたらいいか返答に困る。きっとあの会場の雰囲気の感じでは、共鳴バーストですと言っても全く理解はされないだろう。
いや、そもそもだ。この方は、ど、どなたなのでしょうか?!そもそも会話できてます?!
「君は、」
「ネリネさーん!」
戸惑っている私に言葉を続けようとした様だが、後ろからシロナさんの声が響く。その声の方を見ると、コンテストが終了し多くの人が会場から出てきていた。人の波の中から、シロナさんがこちらに手を振りこちらにやって来る。
「お待たせ。大変だったわね。無理くり参加させてしまってごめんなさい。お疲れ様」
「いえ。私こそトラブルを起こしてしまい申し訳なかったです。けど、楽しかったです。お誘いいただいて、ありがとうございました」
「ガブリアスとの絆、ばっちりと感じたわ。審査員からも好評よ」
1次審査はどうなるかと思ったけどと笑うシロナさん。あれは、うん。見なかったことに。
「立っていたみたいだけど、何かしていたの?」
「あ。そうなんです」
そう言い、あの人の方を向いたが、その人物はどこにもいなかった。あたりを見回してもそれらしい人はいない。
「どうしたの?」
「いえ。人に話しかけられて、少しお話したのですが……いないみたいです」
「話?」
「エネルギーがどうのこうのと。コンテストで私がしたことに興味を持っている感じでした」
「あのガブリアスの姿が変わったやつかしら?」
「恐らく」
「確かに、このシンオウ地方では見かけないものね」
先ほどの人物とのやりとりを簡潔に話すと、シロナさんは考え込むように告げてきた。その言葉に引っかかりを覚える。
「シンオウ地方、では?」
「ええ。あたしの兄弟子が、今はカロス地方ってところにいるんだけど、そのカロス地方では見られる現象なのよ」
カロス地方?また聞きなれない地方の名前が出てきた。どうやらホウエン地方の近くにあるらしい。シロナさんの言う人物は、プラターヌという方で、ナナカマド博士に師事しているらしく、メガシンカというものを研究しているらしい。
「メガシンカ、聞いたことがあります」
どこで聞いたんだっけと思い返す。確か、ツツジや旅芸人の方との会話で出てきたことがある気がする。
「けど不思議ね。カロス地方やホウエン地方以外でメガシンカは見たことも聞いたこともないわ。兄弟子もシンオウ地方でメガシンカを試したけどダメだったとか聞いたけど」
「私の地方ではあれは共鳴バーストと呼んでいます。メガシンカとはまた別なのかもしれません」
「そうね。なんにせよ不思議な現象だわ」
今度兄弟子に聞いてみるわねと告げるシロナさん。
「とりあえず本当にお疲れ様。さっ、美味しい物でも食べに行きましょ!奢るわよ!」
「本当ですか?!やったー、ありがとうございます!」
「ガブリアスたちも行きましょ!」
シロナさんに手を引かれ、おすすめのお店で舌鼓をうつ。高そうなお店だが、ここは奢りに甘えさせてもらおう。
「ネリネさん、旅芸人の一座さんたちと別れた後の予定はあるのかしら?」
美味しいごはんに幸せな気分になっていると、シロナさんがふと尋ねてきた。今後のことは前から何となく考えてはいた。
最近ポケナビの調子だけでなく、ポケモンセンターの通信も不具合があるのか、ホウエン地方と通信が繋がりにくい。繋がったと思っても、ハギさんが出られないことが多い。何となく嫌な感じもして、なるべく早くホウエン地方には戻ろうと思っている。
「そうですね。カンナギタウンに向かって、一旦ホウエン地方に戻ろうかと思っています」
「そう?!旅芸人は確か今週までよね?」
「はい。その予定です」
「じゃあ、折角だし一緒に行きましょ!」
「いいんですか?」
是非と笑顔で告げるシロナさん。ガブリアスたちもシロナさんと一緒に行動できることに嬉しそうにしている。どこかでバトルもできたりするだろうか。
それからは他愛もない話をして、気が付けば夜は更けていった。
「今日はありがとうございました」
「そう言って貰えて嬉しいわ。少しでもリフレッシュできたかしら?」
「はい!」
「じゃあまたね。旅芸人の皆さんにもよろしく伝えておいてちょうだい」
今日色々な経験をさせてくれたシロナさんにお礼を言い、別れる。旅芸人の人が宿で出迎えてくれた。今日のコンテスト騒ぎを知っている人がいて驚いた。それに見ていた人もいたらしい。棄権となったのは惜しかったけど、とてもよかったと褒めてくれてちょっと嬉しかった。
この人たちとももうすぐお別れか、と思うと寂しさも覚える。
「シロナさんと二人旅とか羨ましいー!」
「ほんとに」
「シロナさんって有名なんですか?」
コンテストの審査員とも親し気な感じだったし、顔が広そうだ。
「なんたってシンオウ地方のチャンピオン様だからな」
「えええ?!」
絶叫する私に知らなかったの?!と全員がツッコミをいれてきた。とんでもなさそうな人だとは思っていたけれど、チャンピオンとは思わなかった。
だが、今まで親し気に話もしていたし、今更チャンピオンだとなってもシロナさんはシロナさんとしか思えなかった。