フェルム地方出身
天上の花束
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やっと見つけた。
やっと帰って来た。
やっと、また一緒に遊べる。
『今は、まだその時ではない』
大切な存在を乗せ、反転世界で浮かれる自分に、創造主はそう告げてきた。まだだ、まだだと言われ続けた。ホウエン地方にやって来て歓喜した時、まだだと言われた。シンオウ地方にやって来て、今度こそと思ってもまだと言われた。やっと会えたと思っても、まだだと告げられる。
ひっそりと鏡の世界から見守っているつもりだったが、ピンチに我慢ができなかった。きっとここが創造主の言うその時だと思い、手を出してしまえば、あっという間。
しかし、創造主は違うという。
どういうことか問うも、今はまだだと同じことを告げるだけ。創造主は多くを語らない。いつもそうだ。年月を重ねても、全てを見据える創造主の考えていることは、やはり自分には分からないままだ。
そんな創造主に一度は反旗を翻した。しかし、あれは愚かな行為だと身をもって知った。そして、創造主は絶対なのだとも分かった。
創造主が今というまで、鏡の世界から、静かに見守り続けよう。それに、自分だけがあの子といたら、時間と空間も黙ってはいないだろう。
離れることを惜しみながら、時間と空間に干渉されない場所に、静かに寝かせた。かつて、良かれと思い我々がしたことがあのような結果になるとは思わなかった。一人は寂しいと願った者と、もっと外の世界を知りたいと願った者を繋いだ。思えばあれが、悲劇の始まりだったのかもしれない。
だが、かつてのことを悔やんでも仕方がない。今、ここに、再び彼女はいるのだから。
怪我はなさそうだ。穏やかに眠る顔を眺めながら、洋館に残してきた彼女の相棒たちを思う。外の世界で新たな世界で得た相棒も、ドラゴンタイプとは。反転世界に引きずり込んだ時に見せた彼女の相棒たちの表情から、その慕われ様がすぐに分かった。相棒というポジションを得られる彼らが羨ましい。
立場や地位は、責任というのはいつの時代も、いつの世界も疎ましいときがある。
ふと、彼女のもつ鞄から微かな光が瞬いた。おや?同じタイプの存在に気が付く。悪戯したい思いでついて来たのか。害はなさそうだ。それに、洋館では反転世界に引きずり込む前、自身と共に彼女とその相棒たちをゲンガーたちから守ったのはこの存在だったのかと合点がいった。そのままにしておこう。
微かに彼女が身じろぎをした。どうやら目覚めそうだ。
祈りに似た願いを心で告げ、静かにその場を去った。
どうか、もう遠くに行かないでおくれ。
竜と心を通わせる者よ。