フェルム地方出身
第四章
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「なんでテレビ、ついてるの」
ここは廃墟。電気なんて、とうに来なくなっているはず。それなのに砂嵐状態で画面がついている。
ポツリと湧いた疑問を口にする。冷静に考えるとあり得ない状況だ。勘弁しておくれと思わず頭を抱えた。
気にしたら負けだと思い、エーフィ、ブラッキー、ガブリアスと身を寄せ合い入って来たドアに耳を寄せる。とりあえず物音はしない。脱出するには、きっとあのゲンガーたちと戦わなければならないだろう。どうにか穏便に行いたいものだが……。
これからどうするか考えていると、ふと、何か視線を感じた。
「なに?」
感じた方をばっとみると、そこは砂嵐のテレビがあるだけ。ガブリアスたちも何か感じ取ったのか、少しばかり身構えている。
「だれかいるの……?」
テレビの方に少し寄り、テレビに尋ねる。我ながら変な光景だと思う。じっとみつめるも、ただ白黒の砂嵐があるだけだ。
気のせいかと思い、再びドアの方に行こうかと思った途端、テレビが笑った。比喩でも何でもない。画面に青い目と白い口のようなものが現れ、楽しそうに笑ったのだ。
「ちょっ、ええ?!」
突然のことにびっくりしていると、ふと画面が光り輝いた。あまりの眩しさに、目を瞑る。
瞑ったと同時に、何か押されるような軽い衝撃を受けた気がした。
「ガブリアス、エーフィ、ブラッキー、大丈夫?!」
軽くよろめきながら眩い光が消えたタイミングで、相棒たちの安否を尋ねる。ガブリアスたちはすぐそばにいて、よろめいている私を咄嗟に支えてくれていた。何が起きたのかさっぱりだ。
ブラッキーがテレビの方を見てとばかりに、テレビの方を見ながら軽く鳴き声をあげる。
「消えてる」
テレビを見ると、先ほどまで砂嵐であったのに、今は真っ暗な画面があるだけだ。何があったのだろうか?あの砂嵐は幻だったのか?けど、あのフラッシュのようなものと先ほどの衝撃は?
真っ暗な画面に、私、ガブリアス、エーフィ、ブラッキーが不思議な顔をして仲良く覗き込んでいる姿が映っている。その絵面に少しばかり面白おかしくなり、笑みをこぼした。
しかし、その笑みがあるものを見つけ、固まった。
仲良くのぞき込んでいる私たちの後ろに、複数の目がある。テレビ画面越しに目が合う。ぎぎぎと錆びたブリキ人形の如く、ゆっくりと振り向く。
どうやら先ほどのフラッシュ騒ぎで居場所がばれたらしい。
「あ、ははは。こ、こんにちは」
手を振り、挨拶をするも、ゲンガーたちはおもちゃを見つけたとばかりに嬉しそうにしている。
そして、もちろんそのまま私たちに襲い掛かって来た。
「話し合いって形はないんですかねー!ガブリアス!!ブラッキー!!」
繰り出してくる攻撃を避け、エーフィを自分の傍にいさせ、ガブリアスとサポートとしてブラッキーを繰り出す。
バトルグラスに触れる。仕方ない、ここは廃墟ということもあり、共鳴バーストをさせてもらおう。ガブリアスと目を合わせ、頷く。
さあ行こうか!そう思った途端、激しい耳鳴りがした。突然のことに、微かに身をかがめる私に、ガブリアスたちがどうしたのかと心配する声をあげた。ゲンガーたちの攻撃かと思ったが、そうではないみたいだ。
『…… ナ。やっと。また……う』
何かが私の頭に直接話しかけてきた気がした。だが、ノイズがかかったようになっていて聞こえない。
何だと思い、辺りを見回すが、ゲンガーたちやガブリアスたちが戦っているだけだ。控えているエーフィが大丈夫かと心配の眼差しを向けている。
ふと、戦っているうちに移動して私の後ろにあったテレビに目とまる。画面が水面のように揺れた気がした。これは、マサゴタウンの研究所の時と同じ。あれは、気のせいではなかったの?
耳鳴りが一層ひどくなる。いったい何が?
ガブリアスとブラッキーが私の様子に違和感を覚えたのか、ゲンガーたちを振り払いこちらに来ようとしている。ゲンガーたちはそれをチャンスとばかりに攻撃を一斉にしかけようとしてた。
大丈夫だよ、と告げてバトルに集中しようとした。ゲンガーたちが攻撃を放ってくる。レベル差があるといっても、あれだけの数をまともにくらったら、ガブリアスたちだって無事でいられるか。応戦しようと身構えるも、突然何かに引っ張られる感覚があった。
いや、感覚ではなく実際に引っ張られている。けど、何に?後ろにあるのは真っ暗な画面のテレビだけ。ガブリアス、ブラッキー、エーフィが私の後ろに何かがあるのかそちらに向かって吠える。彼らの後ろに、ゲンガーたちの攻撃が迫っている。全てがスローモーションのように見えた。
テレビの方に振り向こうとした。ガブリアスとはまた違った激しい竜の咆哮のようなものと同時に、私の鞄から先ほどのような眩い光が飛び出した。