フェルム地方出身
第四章
名前変換
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「え。私はダメってことですか?」
「いえ。そうではなく、ポケモンは外に出さずにご利用をお願いしております」
申し訳ございませんと、眉を下げながら言う受付の方にこちらも戸惑う。戸惑う私に、旅芸人の皆も慰めのような声掛けをしてくる。
皆でソノオタウンを満喫し、205番道路を通る中で夕暮れ時となってきていた。今日の宿にたどり着いたものの、そこはポケモンはモンスターボールに入れる決まりがあった。
そもそも、この世界はポケモンの外に出しての連れ歩きはあまりメジャーでないことを思い出した。今思えば、カイナシティで珍しい眼差しを向けられていたのはガブリアスが珍しいだけなく、連れ歩きをしていることに対する眼差しもあったのかもしれない。
「ですが、私はモンスターボールがありません」
戸惑いながらも呟く私に、受付の人が驚いたような声をあげた。モンスターボールがなくてどうやってポケモンを連れているのですか、なおさら危険ですので申し訳ないのですが……と気まずそうに告げられる。ガブリアスたちも話の内容を理解したのか、シュンとしながらも仕方ないといった表情をしている。
「ガブリアスちゃんたちには、外でも快適な場所をご用意いたしますのでご安心ください」
「うーん。だけど、仕方ないね。ネリネちゃん、今晩だけだから」
「では、ご案内いたします」
え、ちょっと待ってください。そう告げるよりも先に、ガブリアス、エーフィ、ブラッキーと離されるように、スタッフの人たちが私たちを案内する。ガブリアスたちと目が合う。いつも近くにいた存在がいなくなる寂しさに加え、彼らの表情も相まって言葉を失った。
ガブリアスたちに軽く手を伸ばすも、旅芸人の人たちに迷惑をかける訳にはいかないと思い、この場は堪えた。
部屋についても、全く落ち着かなかった。
ガブリアスたちは、私にとっての家族だ。見知らぬ世界に来ても、何とか今まで過ごせているのも、優しい人に出会ったことももちろんあるが、何よりもガブリアスたちがいたからだ。
よし。決めた。
部屋に入り座ることもないまま、私は静かに扉を開け、左右を確認した。誰もいない。そのまま身を滑らせるように廊下に出た。
旅芸人の人たちには伝えた方がいいだろうか。けど、迷惑をかけたくない。後は各々で軽く夕飯をとって寝るだけだし、朝までに戻れば問題ないだろう。
足を進めると、まるで見計らったようにちょうど一つの部屋が開いた。出てきたのは旅芸人の姉御のような存在のあの方だった。ばっちり目があっている。どこかバツの悪い気分になる。
「ネリネちゃん。行くのね?」
一瞬何か叱責されるだろうかと思ったが、その声音から全くそのようなものは感じられなかった。不安が霞の如く消えていき、素直に自分のことを伝えようと思えた。
「はい。せっかく宿をとっていただいているのに、すみません。私にとって、ガブリアスたちは大事な家族なんです。朝までには戻りますので……」
「分かっているわ。そうだろうと思った。ガブリアスたちとネリネちゃんを見ていて、引き離そうなんて思えないもの。私たちこそ、ポケモン連れての利用がダメだって知らなくてごめんね」
「いいえ!皆さんが責任を感じないでください!」
申し訳ないというような顔をする姉御さん。そもそも日程を組んでいるときに、私はまだ一緒にいなかった。付いてこさせてもらっている身、それに今いる世界のルールに合わせるのは当たり前のことだ。
「朝までには戻ってきなさいね。あと、あまり遠くにはいかないように。何かあったら連絡をするのよ」
「はい!本当にありがとうございます」
いってらっしゃいと見送られる。姉御さんの気遣いに心から感謝の念がわく。
どこか軽くなった心で、宿の外に出る。
「ガブリアス、エーフィ、ブラッキー!」
私がガブリアスたちに気が付くのと同時に、外にいたガブリアスたちも私に気が付きやってきた。嬉しそうな姿に、よかったと安堵する。
「久しぶりの野宿だね。楽しもう!」
笑いかけるとガブリアスたちも嬉しそうに声を上げた。それから、ガブリアスと私のお腹が同時に鳴った。そのタイミングに照れ笑いをするようにお互いに顔を見合わせた。エーフィとブラッキーも尻尾を振り軽く飛び跳ねている。
「まずは腹ごしらえだね」
楽しそうなガブリアスたちの声が重なって返ってきた。