フェルム地方出身
天上の花束
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不安を押し隠すように笑顔と共に旅立った彼女を思い、ため息を溢す。
「ハギちゃん、心配しなくてもネリネなら大丈夫だ」
「そうじゃの。孫を旅に出すというのは、こういう気持ちになるんじゃなあと思っておったわい」
「孫か。年頃的には娘でも可笑しくはないが、確かにそんな感じがしなくもないな」
海で拾った、という言い方が正しいかは分からんが、海で出会ったネリネ。あまり見かけないポケモンに守られるようにして浮かんでいた。
しかもやってきたという地方は、ホウエン地方ともカントー地方などとも違う、話だけでは、まったく想像もつかないようなフェルム地方というところだった。
トレーナーIDがエラーであること、モンスターボールを使用していないこと、ポケモンセンターやジムを知らないこと、同じようで決定的な何かが違っていた。
友人のゲンジが134番水道付近の海難事故を調べても、何一つとして引っかからなかった。
134番水道にいたとなると、やはりキナギタウンあたりから流された可能性が高いが、キナギでそういった目撃者はいない。キナギタウンと134番水道の間は海流があり船はあまり通らない。ふと、キナギタウンの東側にあるものを考えた。ルネシティ。幻島。空の柱。いや、そんなはずはないか。
ある日、他の地方の博士と話をしてくると出かけていったネリネ。帰ってきたら、別の世界から来た可能性があることを告げられた。可能性と言ったが、確信に近い言い方だった。
もしやと薄々は思っていたが。
突如として別世界に飛ばされてきたネリネ。見知らぬことばかりで戸惑いも多いだろう。心配させないようにと笑顔を浮かべてはいたが、時折何か寂し気に家から海をポケモンと共に見つめていることもあった。
フェルム地方は、水の街と言われるくらい海が広がっていたと語っていた。故郷に思いをはせていたのだろう。帰れるかどうかも分からない不安につぶされまいと頑張っていた。
「ゲンちゃん。いつの時代も、若人には厳しい試練が待っておるの」
「そうだな」
シンオウ地方に飛び立った彼女が、何か希望を見つけられると良いが。
共に夕暮れ時の海を眺めていると、ゲンジがおや、と声を上げた。
彼の視線を追うと、そこにいたのは友人の息子であり、チャンピオンである彼だった。
「ダイゴくん。久しぶりじゃのう!」
「ハギさん、ご無沙汰しています。ゲンジも。すまないな。遅くなった。何か僕に用事があったのだろう?」
なぜ彼がここに、と思ったが、デポンコーポレーションの本部があるのがカナズミなのだ。いてもおかしくはない。それにどうやら、トウカに着任するジムリーダーのことでトウカにも用事があったらしい。つい先ほどまではトウカの森にいたようだ。
「他にも色々とあってね。何にせよ、ちょうどゲンジがここにいると耳にして。カゲツを通じてでなくゲンジから直接ということもあって、どうしたのかと心配した」
「そうだったのか。わざわざすまないな」
ゲンジがダイゴにネリネのことを話す。共鳴石のことも。
「共鳴石、親父から少しだが聞いた。興味深い。それにタイミングといい、何かひっかかる。そのネリネさんはどこに?」
「ちょうどシンオウ地方に行ったところじゃ」
「シンオウ地方に?」
なぜと疑問を浮かべる彼に、彼女のことを話した。どこまで話すべきか悩んだが、彼はチャンピオンだ。情報の収集量も多いだろう。どこかで彼女の助けになるのではないかと思った。
「なるほど。僕も何か情報を掴んだら知らせよう。ゲンジ、ハギさん。もしそのネリネさんがホウエンに戻ってきたら僕に教えて欲しい。一度お会いしたい」
「あい分かった」
それからダイゴは何か連絡を受けていた。すぐに向かうと伝えているあたり、やはり多忙な様だ。
彼が去っていく背中を見送る。
「チャンピオンは忙しいの」
「ああ。最近は特にな。何かあるんだろうか」
「お主も知らんのか?」
「リーグが開催されていない間は、四天王それぞれどこで何をしていてもそれなりに自由ではあるからな」
海を見ると、先ほどまで沈みかけていた太陽が、完全に海に隠れるタイミングであった。