桜花爛漫
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最高学年となり、全国制覇を目指す俺達は練習にも力を入れていた。その練習を行いながらも、朝や練習の後、ナマエに会いに行った。少しでも、可能な限り共に過ごす時間を多くしたかった。
そして、その日は突然と訪れた。
ナマエといつものように桜の下で会話をしていた。その時、ふとナマエから花びらが散った。それこそまるで何か紙を捲るように、はらりとナマエの身体から。
ナマエはそれに、あっと声を軽く上げ、俺の方に寂しそうに微笑んだ。その表情に、すべてを悟った俺は心臓が鷲掴みにされたような感覚になった。
「……逝くのか」
「ええ。弦一郎殿がいる時で、よかった」
ナマエは徐に立ち上がる。俺も立ち上がり、ナマエと向かい合う形となった
「枝垂桜ナマエの最後の雄姿をご覧あれ!」
ナマエが両手を広げ、笑顔とともに告げる。ここ数年で一番力に満ち溢れている様子だ。そう思った刹那、桜吹雪が舞った。
風が俺を優しく包む。視界は一面桜色だ。桜色を背景に、ナマエが微笑んでいる。息をのむような光景だ。俺はその姿を脳裏に焼き付けた。
どこかから、すごい桜吹雪だ、絶景と言っている人々の声が聞こえた。
「弦一郎殿。ありがとうございました。お元気で」
ナマエのその言葉と共に桜吹雪がやんだ。
静寂があたりを包んでいる。彼女の姿は、どこにもなかった。
ひとひらの花びらが俺の手のひらに舞い降りた。
「ナマエ。俺の方こそ、感謝する」
花びらを握りしめ、心の中で再び別れを告げた。