舞い降りた天使
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それからも俺は普通の日々を送っていた。テニス部の練習をして、休みの日とかはブン太や赤也と出かけ、二人に奢ったり。オヤジの店の手伝いをしたり。
そうだ。オヤジの店と言えばナマエことを思い出す。ここ最近は会っていない。以前ナマエに飯はどうしているのかと聞いたら、特に必要ないため食べていないと言っていた。食べるという行為はできるようだが、別にお腹もすかないし必要ないものらしい。その発言にやはり人ではない存在なのだと再認識したものだった。だが、食の楽しみを知らないなんてもったいないと思い、今まで助けてくれた礼を込めてオヤジの店のラーメンをごちそうした。
オヤジたちはまさかの彼女か?!なんて驚いて喜んでいたが、命の恩人であることを伝えて知り合いだと伝えた。一方のナマエは、初めて食べたというラーメンに感動していた。あっという間に平らげ、オヤジに握手をしてまた来ますと言っていた。
しかし忙しいのか、見かけたらまたお店に誘おうと思っているがなかなか会わない。まあ、そもそも会わないのが普通か。今までポンポン会いすぎていたのか。
そんなことをボンヤリ思っているとまるで俺の思いが通じたかのように、ナマエが視界に入った。
何かを待っている様子だった。あそこはバス停か。
ちょうどバスが俺を追い越していった。ナマエの待つバス停にとまり、ナマエが乗ろうとしている。その表情は疲労のような陰りが見て取れる。
俺は折角久しぶりに会ったんだしラーメンでもおごってやるかと思い走った。バスにギリギリで乗り込んだ。
バスに乗り込むと、丁度目の前にナマエがいた。ナマエは驚いたような顔をしている。
「ジャッカルさん。久しぶりですね」
「ああ。最近会えねえなと思ってたところだったんだぜ」
「会わないのが普通です」
「今日はこの後あいてるか?」
「今日ですか?ちょっと忙しいですね」
「そうか。にしても疲れてそうだな。ほら、これ。この前渡し忘れた。いつでも来いよな!」
「ラーメン無料券?」
ナマエは俺の渡した券を掴み呟く。普通に払いますよ、なんて言いながらも少しばかり嬉しそうにポケットにしまっていた。
「ありがとうございます。では、ジャッカルさんは次で降りてください」
「ちょっと遠回りだけど、俺の家の近くまで行くバスだし乗ってくぜ」
「いえ。ダメです。次で降りなさい」
「なんだよ偉く強引だな」
「ダメなものはダメです。さあ」
いつになく強引なナマエの様子に疑問をもつ。どうしたのだろうか。そんなに俺といるのが嫌なんだろうかなんて思ってしまう。
戸惑っている間に次のバス停のアナウンスが入る。ナマエが押しのけるように俺を降り口におくる。
俺がバス停に足を降ろそうとしたその瞬間、乗ってきた小学生のような女の子が衝撃の発言をした。
「ママーあの人、背中に羽があるよ」
俺は足を止め、振り向く。女の子の発言を受け、乗客がナマエを見る。ナマエの背中には何もない。ナマエは苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
「ナマエ?」
「ジャッカルさんには関係ありません。では」
そう言い俺を押しのける。しかし。
「ま、待てよ!」
あれってそういうことだよな。
バスの運転手が降りますかと聞いてる、ナマエが降りますというが、俺が大きく否定する。俺はナマエの手を押しのけ、バスの車内に残る。出発しますと言ってバスのドアが閉まる。
ナマエの方を向くと怒りをあらわにした表情をしていた。初めて見る表情に俺は更に戸惑った。
「あなたという人は!命を何だと思っているんですか?!また、私が助けるからいいとでも?!」
「お、おい落ち着けよ。あの子を助けたいだけだ」
羽が見えたということは、あの子が死に直面しているということだ。初めてだった。ナマエの羽を見えると発言した人物は。
「分かっているのに手を出さないなんて、俺は無理だ」
「それは禁忌です。それにあの子だけではないんですよ」
「おい、それって」
どういう意味だと伝えようとしたが、ナマエの背中に白い羽を見た途端息をのんだ。そして、乗客の悲鳴が聞えたと同時に激しい衝撃が体を襲った。