平行世界って知ってるかい？
　ふふ。マルチバースって言い方もあるかもね。それと似た感じ。

　例えば、ある世界では大人になってから君に会ったり、俺と君が幼馴染だったり、君は氷帝生だったり立海生だったりする。

　不思議なことに、俺の周囲にいる人や関係性は君以外あまり変わらない。何かやっぱりルールがあるのかな。前に蓮二が、平行世界は分岐していく未来ひとつひとつで、今この一瞬でも無数の平行世界が生まれているって言ってたね。
　まあ同じ木から枝分かれしていると考えたら、あまり大きくは変わらないよね。真田は俺の幼馴染だし、蓮二も乾と幼馴染だし、赤也は後輩だ。時々、性格がちょっと違うこともあるけど根底は同じさ。

　この前とか俺がある人に俗に言う壁ドンってやつで詰め寄っていたり、同じ学校で部長同士だったり、跡部や白石と同じ人を好きになったりしてた平行世界もあったな。

　さて、なんか長々と変なことを話してごめんね。俺ばっかり喋っているね。え？別にいい？そう。
　俺としては君の声が聞きたいんだけどな。

　さっきも言ったけど、不思議だよね。この世には説明できないことが多すぎると思わないかい？
　そして、一番不思議なのはね。もう毎回、お決まりなんだけど、俺が君を好きになるってこと。
　姿かたちや立場は違えど、何なら性格だって様々だけど、分かるんだ。あ、君だって。

　ふふ。君に言っているんだよ。

　ミョウジナマエさん？

　ああ。けど、この名前も仮なのかな。まあそんなのは別にどうでもいいね。


　画面越しにいる君さ。そうそう。色んな表情を見せてくれる君。


　ああ。もう時間だ。残念。ここでは700字までしかダメだって言われたんだ。

　じゃあ、おやすみ。よい夢を。また別の世界で、待ってる。