四季めぐり
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季節は巡り、校門の桜が再び桃色に色付いていた。今年は遅咲きだったのもあり、新入生歓迎会後も門出を祝うように咲き誇っている。
春の心地よい陽気の中、賑やかな声が校舎に響く。
「部活決めたー?」
「悩んでる。居合道部が気になっているかな」
「あー!わかる!歓迎会の部長と副部長、かっこよかったもんね」
「今まで知らなかったけど、興味でるよな」
「今年、段位持ちの子が入学してきているらしいよ」
「県大会の優勝、準優勝の先輩二人がいたら憧れて入学してくる人も多いだろうね」
そんな会話が三年生の教室にも届いていた。一人の女子生徒の口元がわずかに緩んだ。
「嬉しそうだな」
「弦一郎君。見てみて、この入部届の数!」
「ほう。なかなかだな」
「すごい数だね」
「テニス部の数には敵わないけどね」
「撫子を目当てに来ている人も多いんじゃないかい?」
新しい三年生の教室。その中、席に座っている女子生徒の前に、腕組んでしかめっ面をして立つ男子生徒の姿があった。もう一人の座っている男子生徒は、そんな二人を見守るように穏やかな笑みを浮かべている。
まるで宝物を扱うように入部届を大切にしまい、彼女は、先ほど一年生から入部届を渡されたときに言われていた言葉を思い出し、微笑んだ。
「弦一郎君、巷では副武将って言われているんだね。なんだか笑っちゃった」
「絶対呼び始めたのはあいつだろう」
「彼も弦一郎君を尊敬しているんだよ」
「この前も打倒俺を宣言していったぞ。撫子のことをまだ諦めていないと見える」
「ふふ。なかなか骨のある子じゃないか」
三人で笑い合う。
春の柔らかな風に誘われて、窓の外では桜の花びらが舞っていた。
立海大附属高校居合道部。
今年の全国学生大会の団体戦で、初の優勝を飾り、それから連覇を重ねていく。王者立海。居合道界でも全国に名をとどろかせることになる。
今はその伝説の開始点であることを彼女たちはまだ知らない。
〈完〉
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