最強ダブルスを結成せよ!
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今回は立海がサーブ権を獲得した。切原がサーブを決める。さすがはたけと桃城のテニス歴の長い者同士。先ほどよりも切原のサーブが打ち返されることが多くなったものの、切原のナックルサーブが決まっていく。
1ゲーム目は立海が先取した。青学側からのサーブとなり、桃城のサーブがくる。それを難なく返す切原。
「ほら急いで急いで!」
「桃城、いったぞ!」
「任せてくださいたけ先輩!」
「まつ先輩!俺が取ります!」
「ありがとう切原!」
まつは必死にボールを見る。それと同時に、切原の動きも気にかけていた。また、切原もまつに先ほどボールをぶつけてしまったことを気にしており、まつの様子を気にかけていた。
「まずいですね。まつさんと切原君。お互いの動きを意識し過ぎていて動きが遅れていますね」
柳生が眼鏡を直しながら呟く。青学側がゲームをとり、1-1となった。まつと切原が立海側から声をかけられる。
「まつ。赤也。もっと自由に動いていい」
「お互いが意識し過ぎだ」
「分かりました」
「そう、かもしれない」
「まつ先輩。んじゃあ改めてよろしくお願いします」
「こっちこそ」
切原とまつは笑い合う。まつのサーブとなった。入るようになったものの、他の三人よりも劣るのは当然であり、打ち返される。
「容赦なしでいくぜまつ!遊園地券は私たちがもらう!」
「これで私たちが勝ったら、もう一回なんだから譲りなさいよ!」
「大人しく乾汁飲んどけ!」
「絶対いや!」
「まつ先輩は立海が貰うッスよ!」
「何スかそれ?!じゃあ俺たちもたけ先輩を青学に貰います」
「桃、いいねそれ」
「周助?!」
それぞれの思惑が錯綜しながらラリーが進む。先ほどより、まつも切原ものびのびと動いている。デュースまで持ち込んだが、あとわずか立海はポイントを取れず1-2で青学がリーチとなった。
「あれ、このスコアボード間違ってねえ?」
「え?!」
そんな中、ほれ、とボードを管理していたうめに仁王が話しかける。先ほどの試合の様子を話す仁王に、うめは頷く。
「そういえば、そうだったかもしれない。ありがとう仁王くん」
「プリ」
「っておかしいだろ!おい!」
「たけ静かにしんしゃい。審判がそう言っとるんじゃき」
「こんの詐欺師め」
「ピヨ」
スコアボードを1-2から2-1に直したうめにたけが待ったをかけるも、舌を出して素知らぬ顔をする仁王。まつに勝って欲しくない跡部も声を上げている。だが、そんな二人にうめが先ほど仁王に言われた内容を述べ、それを聞いていた鳳をはじめとした氷帝の面々がうめが言うならそうかもしれないと信じた。
試合は2-1、切原とまつのペアが大手をかけた状態となった。
「コート上の詐欺師。流石ね」
「ちゃっちゃっとやっちゃいましょうまつ先輩!」
それからも2-2、2-3、3-3となり再びタイブレーク試合となった。
「またタイブレークじゃねーの」
「まつもやるやん」
「なかなかの動きだな」
氷帝がスコアボードを整えながら試合を見守る。試合を見ていた手塚もまつの上達っぷりに驚いていた。立海も青学も一歩も引かない。ポイントをそれぞれ重ねていく。
切原とまつも息の合ったコンビネーションをしていく。ポイントをとり、ハイタッチを交わす。
「7-6か。意外とやるじゃんまつ」
「王者立海にコーチして貰ったんだから当たり前でしょ」
「まつ先輩。こっから決めていきましょう」
「悪いけど、これで決めさせてもらいますよ!」
「いけ桃城!」
桃城がサーブを放つ。打ち返したボールを、たけがつばめ返しの構えで返球する。
「跳ねる前に返す!」
まつがボールが跳ねる前に返すも、ロブとなった。それをチャンスとばかりに桃城がジャンプをする。渾身の力を込めて、桃城がダンクスマッシュを放つ。切原がそれに向かう。
「決めさせないッスよ!」
「あれ返すのかよ切原」
打ち返すも切原のラケットが弾き飛ばされた。たけと桃城はまさか返されるとは思わず一瞬驚くも、ラケットがない切原をチャンスと思いそちらに向かってリターンを決める。
「切原!!」
「まつ先輩!どうもッス!!」
「まじかよ!」
だがこれはダブルス。とっさにまつが切原に自身のラケット渡す。そのラケットをキャッチし、切原は返した。その間に、まつは走り落ちている切原のラケットを拾う。
桃城がリターンしたボールをまつが切原のラケットで返すも、ボールはネットにかかった。
ゲームセット。
「あああ!負けたー!」
「ちっくしょう!けど、最後のまつ先輩かっこよかったですよ」
「危ねえ危ねえ。焦ったぜ」
「やりましたねたけ先輩!」
タイブレークの末、青学が勝利を飾った。それぞれが思い思いに感想を口にする。試合には負けたが、まつはどこか満足していた。試合をしていた4人には笑顔が浮かんでいる。
まつと切原は立海の方に向かう。負けてしまい申し訳ないと伝える。真田が手をあげたとき、まさか鉄拳かなんて二人で震え上がったが、切原とまつの頭に優しく手を置いた。立海は満足そうな顔をしている。
「お疲れ様でしたまつさん、切原君」
「なかなかいい試合だったぜよ」
「最後のラケット渡すのクールだったぜ」
「負けはしたが、お前の成長を十二分に感じられたな」
「まつたちが楽しそうだったから良しだぜ」
「またいつでもテニス教えてあげるよ」
「今回のデータはなかなかいいものが取れた」
「皆ありがとう」
「先輩たちが優しいッス」
「俺たちはいつも優しいよ」
笑顔でこたえる幸村の背後に黒いものを見た気がしたまつと切原はこれ以上は余計なものを言わないようにしようと口を噤んだ。
優勝した青学は遊園地券を手にしている。
笑顔で今日の試合を振り返っているたけとうめ。その様子にまつの口元も緩む。
あれ、何か忘れているようななんて思っているとまつは肩を叩かれた。振り返るといたのは乾。眼鏡が逆光で怪しく光っている。
「ようこそ乾汁の世界へ」
「ちょ、ちょ。色!明らかに自然界に存在しない色でしょこれ!なんか泡立っているし!き、切原ー!」
「うわあまつ先輩!こっちに振らないでくださいよー!」
「仁王!メインコーチのあなたももちろん飲むでしょ」
「何のことかのう?」
「この野郎」
連帯責任となり、一杯の乾汁を立海の皆でちょっとずつ分け合い飲むことになった。ほんの一口だが、色とその匂いに全員の顔が青くなる。
「ちなみになのだが……貞治、何を入れたんだ?」
「知らない方がいいぞ蓮二」
「こうなりゃ仕方ねえ。一番に飲むぜ!ジャッカルが!」
「お、俺かよ?!」
皆の視線を浴びながら、漢気だと勢いよく飲むジャッカル。一瞬にして青くなるが、流石その強靭なスタミナ。何とか堪え立っている。その雄姿に全員が賞賛を送る。
「やべえ。しばらく俺、歩けそうにもない」
顔を青くし、これ以上喋れば吐きそうとばかりに口元を抑えるジャッカル。ジャッカル以外の全員が手に持っている乾汁に視線を注ぐ。皆で一斉に飲もう、誰ともなく言葉を発し、静かに頷く。
「じゃあいくよ皆。乾杯」
「胃袋に入らんかー!ぐわああ」
「貞治。腕を、上げ……ぐふは」
「いくしかないッス!ぐあああ」
「……これにて、終わり、です。あでゅー」
「皆大げさだって……ぐえええ」
「……ぷり」
「大丈夫よまつ。乾汁みんなで飲めば怖くない……ぐはあっ」
「な、なんだ口がまたあの味を……ぐおは」
「ふふふ。皆大丈夫かい?」
飲んでいないジャッカルまで突然倒れこみ、立っているのは優雅に微笑む幸村だけ。それ以外のまつを含めた立海のメンバーは皆死体のように転がった。
幸村のみが立ち、周囲が倒れこんでいるその様はまるで神の子に捧られた生贄の如く。恐ろしい状況にその場にいた青学、氷帝の面々は静かに倒れている人物たちの冥福を祈った。
こうして元氷帝マネージャー同士の試合は、青学の優勝で幕を閉じた。
「プリ。全く恐ろしい結末ぜよ」
意識を失い倒れこんだ人の中、一人がわずかに目を開け悪戯に成功したかのように舌を出し、どことなく呟いた。
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