最強ダブルスを結成せよ!
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氷帝学園。休日の男子テニス部のテニスコートには、賑やかな声が立ち込めていた。コートには、いつもの氷帝のユニフォーム以外の姿があり、いつもより華やかになっていた。
「よし。くじが決まったね。最初は氷帝と青学か」
「総当たり戦で、優勝チームは遊園地券」
「ちなみに最下位は、この乾汁が待っている」
「は?!聞いてねえよ!」
集まった面々はそれぞれ、楽しそうな表情を浮かべている。そんな中、黄色のユニフォームに囲まれ青い顔をしている一人が、隣にいた元気な人物に肩を叩かれ声をかけられている。
「まつ先輩!勝ちにいきましょう!」
「切原、私もう全身ボロボロなんだけど……」
「情けねえなまつ。お前の実力はそんなもんじゃねえだろ」
「うっさいアホ部。だいたい、なんでこんなレギュラーが集まる企画になってんのよ」
「榊監督からお前たちマネージャーに労いの企画だ。ありがたく思え」
「だから!なんで労いで私たちがテニスの試合をしなきゃいけないのよー!」
まつの悲痛な叫びがコートに響く。近くにいたたけとうめも苦笑を浮かべ同意している。だが、たけはどこか楽しそうだ。
そう、今日この氷帝学園では、氷帝、青学、立海の全国大会レギュラー陣が集まっていた。だが、これから行われるのは、氷帝マネージャーのテニス試合である。
事の発端は、全国大会が終わり、少しした頃にさかのぼる。
「痛たた」
「すごい変な歩き方しているけど、大丈夫?」
「全身が筋肉痛でございます」
「何があったんだよ」
ある日まつが油の切れたようなロボットのような動きで歩いている様子から、うめたちが心配の声をかけた。まつは二人に、切原や丸井、ジャッカルと遊んだ時、自分のテニスしたことがないという発言がきっかけでテニスをしたことを伝えた。その内容が、王者立海にふさわしいスパルタであったこと。しかもそこに、色々あって立海の全員が集合することになり扱かれまくったことを遠い目をしながら語った。
「お、お疲れさま」
「よく生きて帰って来たな」
「ほんとに死ぬかと思った」
けど楽しかったよ、と笑顔で伝えるとたけがそれなら今度一緒にテニスをしようと誘う。うめも興味がある様子で、それに加わろうという会話を行っていたら、突如三人に声がかかった。なんとそこにいたのは榊太郎。どうやら三人の会話を聞いていたらしく、せっかくならテニス部の面々とやるといいなどとなり、それからどことなく現れた跡部も加わり、なんか話がどんどん変な方向になっていった。
そして後日、突如跡部から、氷帝と立海と青学の合同練習という名の元氷帝マネージャーのテニス能力の向上と対決などといった企画が伝えられた。
「は?なにそれ?!」
「私たちのテニス能力の向上だあ?」
「対決って、何をするの?」
「そのまんまだ。各校がお前たち三人のコーチになり、テニスを教える。そして、そのコーチの学校の3年以外とダブルスを組み対決するだけだ」
「だけって……いろいろとツッコミしかないんですが」
「なんで3年以外?」
「監督とも話をして、次世代育成も兼ねられるだろうということになっただけだ」
「いや私たちに構わないで、普通に自分たちで練習してなよ」
「教えることは俺たちの学びにも繋がる。それに、マネージャーを終えたお前たちへ、テニスをしたいという願いを叶えることにもなる。感謝を込めて教えてやるぜ」
「いやおかしいって!」
そんなやり取りをしたのが今から2週間くらい前。話が既にまとまり決定していたためまつたちがNOと言うことは実質無理であった。そのまま話がすすんだ。全国大会も終わり、肩の力が抜けていることもあり他校も含めテニス部の全員がノリノリだった。
真っ先に鳳がうめのダブルス相手に立候補し、即決まった。その勢いはまさしくスカットサーブだった。うめは氷帝がコーチとしてつき、メインコーチとして忍足がついた。ひそかにまつと組もうと画策していた日吉は、鳳に先を越されたことに悔しそうな表情をしていた。
不二と付き合っているたけはその話をしているちょうどそのタイミングで、不二から連絡を受けていた。確実に狙って連絡したな不二と、周囲は思った。桃城がダブルスの相手に立候補したけと組むことになり、不二をメインコーチとして青学がたけについた。テニス経験者であるたけは、コーチなんていらないんじゃないかという言葉を氷帝たちは飲み込んだ。
一方のまつである。
「ちょっと!私、これもう実質一択?!選択の余地なしになってるんですけど!」
「前に教えてもらってたんだろ?ちょうどいいんじゃね?」
「いやいや立海がコーチとか無理!死ぬから!」
「そないに危険なら、なおさらうめは氷帝やな」
「なんだとこの変態眼鏡。その眼鏡かち割ったろうか?」
「まつ落ち着いて」
「たけ。テニス経験者である貴女が行くべきよ」
「悪りいなまつ。周助と桃城ともう約束済みなんだわ」
薄情者とまつが嘆いていると、携帯が鳴った。画面を見るとそこには幸村の名前があった。まつは悲鳴をあげた。
「なんでこのタイミング……!」
「もしもーし幸村か。そうそう。まつは横にいるぜ。ん?話は理解した?おう。話が早くて助かる。よろしくな!」
「ちょっとたけさん?!」
幸村との通話を終え、たけが爽やかな笑顔でまつの肩を叩いた。
「コーチやってくれるってさ。楽しみしていてね、だってよ」
まつはムンクの叫びのような様子で頽れた。氷帝はそんなまつに手を合わせた。まつと付き合っている跡部としては氷帝でコーチをしたいものだが、3人の中で、立海にふさわしい、というより生きていけるのはまつだけだろうとも思っていたため、まつの背中をさすりながら生きて帰って来いよなんて言葉をかけていた。心配する位ならこの企画をやめてくれとまつは嘆いていた。
そんなこんながあり、2週間がたち、当日を迎えた。
それぞれのコーチの学校のユニフォームを纏った三人。たけは不二から、まつは丸井から借りたユニフォーム。氷帝のユニフォームでない二人に何だか違和感を覚えるも、それぞれのコーチの学校の面々はその姿に満足している様子だ。
たけと桃城の青学チーム、うめと鳳の氷帝チームのダブルス試合が始まった。今回は特別ルールで、3ゲーム先取した方が勝利となる。3-3となった場合はタイブレークとなるようだ。
バーニングと青学の旗を振りながら暑苦しく河村が声援を送っている。試合を眺めつつ手の空いている学校が審判をするため、スコアボードの前でまつは切原とストレッチをしている。満面の笑みで自分を見ている切原に何事かとまつは問う。
「まつ先輩、立海のユニフォームめっちゃ似合ってます。やっぱり立海マネージャーぴったりですよ!」
「おいワカメ。そんなタマゴ寿司みたいなユニフォームより、氷帝のユニフォームがまつさんには一番似合うに決まっているだろ」
「なんだとこのキノコ野郎!」
「はいはい。喧嘩しないの」
自分を挟んで口喧嘩をはじめた日吉と切原に呆れるまつ。キノコとワカメに挟まれるタマゴ寿司、シュールだ。そんなことを思いながらストレッチを終え、目の前で繰り広げられている試合を再び見る。たけは相変わらずテニスの腕はばっちりだ。うめも氷帝に教えられて、基礎の動きは十分にできていそうな様子だ。
この2週間、隙間時間を使ってそれぞれのコーチから教えてもらった。ちなみにまつのメインコーチは仁王だった。三強以外でとまつが凄まじい勢いで伝え、三役でもある三人よりは平の自分がいいだろうなど言い、仁王がうまくいなしてなったようだ。
今までの血反吐をはくような練習を思い返し、よく頑張ったなまつと、自分で自分を慰めていたら試合終了の声が響いた。
どうやらストレートでたけたち青学のペアが勝利したようだ。流石だ。青学のペアは大石とグータッチをしており、海堂が桃城に何か語り掛けていた。
「鳳くん。ごめんね足引っ張ちゃって」
「うめさん。そんな謝らないでださい!初心者なのに、十分うごけていましたよ!むしろ俺のフォローが十分でなく申し訳なかったです」
「そうだぜうめ!十分動けてるって」
「俺も今度うめちゃんと一緒にテニスしたいな」
「流石やなうめ。練習の成果がでとったで」
「皆ありがとう。皆のためにも頑張るね」
ねぎらいの言葉をかけられているうめを見て、まつもその様子に笑みをこぼす。やはり氷帝はいいチームだ。勝利した青学のペアも笑顔で喜びを分かち合っている。楽しそうな各校の様子に、自分も頑張ろうと思った矢先、まつは後ろから名前を呼ばれた。
何かと思い振り向くと、三強が笑みを浮かべていた。
「次だな」
「鳳とうめのペアだ。サービスエースに注意だな」
「まつ。分かっているよね?」
笑顔の圧にまつの背筋が凍る。悲鳴を飲み込み。行ってきますとぎこちなく言う。
強く生きろ自分よ、と言い聞かせる。丸井やジャッカルがまつに親指を立て、行ってこいと笑顔で送りだす。柳生も仁王と一緒にこちらを見ている。
立海からのプレッシャーにまつは頬を叩き、よし、と声をあげた。
うめと鳳の氷帝チーム、まつと切原の立海チームのダブルス試合が始まろうとしていた。
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