番外編
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3年生の日々よりも、高校生となるまでの日々の方が短くなってきた頃。
内部進学の試験がもうすぐある。と言っても、通過儀礼のようなもので殆どの生徒が合格となるものだ。だが、油断はできない。勉強をしようと思いこの前侑士くんを誘おうとクラスに向かった時のことを思い出して、ため息を溢す。
「うめどうしたの?大丈夫?」
「なんか元気なさそうだな」
二人が私の顔を覗き込んで心配な面持ちをしている。二人に隠し事は今更不要だ。私は、胸に閊えるものを伝えた。
「え?!忍足、転校するの?!」
「まじか」
そう。この前、クラスで耳にしたこと。それは、侑士くんのお父さんの転勤が決まったという話だった。もともと大学病院勤務をされている方だから、いつか異動があることは分かっていた。しかし、まさか都外でしかも地方も変わるなんて。
引っ越しで忙しくなるという会話をクラスメイトの人としていた。
「なんで私に伝えてくれないんだろう」
呟く私に、二人が困ったような顔をする。まつがふと、クラスの入り口に目をやり、あと声を上げた。それにつられて私たちも見る。
「あああ!こんの変態眼鏡野郎!彼女のうめになんで真っ先に言わねえんだ!」
「どういうことなの忍足。説明してくれるかしら」
「え。なんやえらい殺気だっとるやん」
教室に入ってきた侑士くんを威嚇するように私の前にたつ二人。相変わらずな二人にいいからと声をかけ、前に立つ。
「侑士くん。その。……私、侑士くんと遠距離になっても好きなままでいていい?」
「?当たり前やん。寧ろ離れられたら困るわ。どないしたんや急に」
私の言葉に驚いたような表情をする侑士くん。好きなままでいいと言ってくれる彼に安心する。まつたちも安堵の表情をしている。
今回、私に話がなかったのはきっと、何かわけがあるのではないかと思う。
「忍足、それでどの学校に通うんだ?」
「ちゃんとうめに定期連絡よこしなさいよ」
「私からも連絡するからね」
口々に言う私たちに、疑問を浮かべる侑士くん。何かその様子に違和感を覚える。
「どうしたの侑士くん?」
「いや。寧ろそれ俺の台詞や」
「?」
「俺、氷帝のままやけど?」
その言葉に私たちは驚きの声を同時に上げた。お父さんの転勤場所から氷帝に通うなんて難しい距離だ。ま、まさか侑士くんも跡部くんに感化されてヘリコプターを使ったりするんだろうか?
「なんやそれでかいな」
私がクラスでの会話を聞いたことを伝えると、侑士くんは呆れたような困ったような面白いような顔をしている。
どうやら私たちは勘違いしていたらしい。
「なんだよ。忍足は東京に残留か」
「よかったあ」
「心配してくれたん?可愛ええなうめは」
「おいこら、公衆の面前でイチャコラするんじゃない」
侑士くんのご両親は地方に行くみたいだが、侑士くんは東京に残り、高校から一人暮らしをするらしい。それで、引っ越しの準備といったのか。成程と思い、安堵が心に広がり心の声が漏れた。
そんな私を侑士くんは自然に抱き寄せる。本当に、自然にそういうことができるのは反則だと思う。
「高校楽しみやな。家、遊びに来てや」
耳元で囁くように言われると顔に熱がいく。恥ずかしさのあまりに沸騰しそうだ。うるさく鳴り響く心臓を落ち着かせようと、侑士くんの腕から逃れまつたちの元に行く。
「お前マジで歩く18禁だよな」
「見てるこっちまで何かこそばゆいんですが」
まつとたけが侑士くんに生暖かい目を送っている。
「せや、せっかくやから氷帝の寮に入ってまつのお隣さんもありやな」
「全力で拒否します」
「それ跡部に殺されるよ忍足」
もし来たら毎晩壁叩いてやるなんてやり取りをしている三人をみて思わず笑みが零れる。
もうすぐ高校生。期待と不安が入り混じる。この幸せな日々が続くことを願ってやまない。
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