副編集長からの贈り物
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静かな一室に午前の日の光が差し込んでいる。まつは部屋で一人静かに写真を眺めていた。
まつは昨日はあれからどのようにして帰ったのかはっきりと覚えていなかった。夢であればいいのにと思うが、今日目が覚めたとき、たけたちから確認で送られてきた『約束通り病院に行くからな!』という連絡に、現実に起こったことなのだと再認識した。
ふと、受け取った封筒がまだ見れていないことを思い出し手を伸ばした。それと同時にインターフォンの音がなり、まつは伸ばしていた手を止めた。
ガチャリと重たい扉を開けると、扉の先にいたのはたけとうめ。二人はまつを気遣ってか、ぎこちないながらも笑顔を作り挨拶を交わす。
「おはようまつ」
「行こうぜ!」
うんと返事をするとともに手を引かれたまつ。本当にいいだろうかという顔をするまつにしばらく押し問答のようなものを重ね、気にすんなと半ば強引に家から引きずり出していた。
駅に向かって3人で歩きだす。
「マジでさ。まつのせいじゃねえからな。あの馬鹿どもの言うこと気にすんなよ」
「そうだよまつ。あ、駅前のさ、あのケーキ屋さんでお土産買っていこうよ!」
「そうだな。けど、跡部の口にあうものあるかねー」
「ありがとう二人とも。跡部は意外と何でも喜んで食べてくれるよ」
「おっ、流石まつ。跡部のこと、分かってじゃん」
「たけあまりからかわない」
「悪ぃ悪ぃ。けど跡部のやつ、意識普通にすぐ戻ったみたいでよかったよな。一応ってことで入院しているっぽいけど」
「そうだね」
そのような会話をしながらまつたちは駅前のケーキ屋で手土産を購入し、電車に乗りこんだ。
跡部の入院している病院の最寄駅に着く。時刻をみてうめが忍足たちの方が先に着いていそうだと呟いた。
まつはとことん自分は病院と縁があるようだなどと思いながら、二人と共に跡部の入院する特室に向かった。
まつは正直言って怖かった。不本意であるとはいえ、跡部を傷つけてしまった事実は変わりない。跡部家の人にも何と言えばいいのか。家の人がいたら、などと思ったが、看護師に声をかけると「ご友人方もいらしていますよ」とのことであり、どうやら今日は先にいるのはテニス部のみのようだ。
「特室ってまつが入院していた時みたいな部屋か?」
「多分。跡部だし、もっと豪華なんじゃない?」
「わあ、ちょっと部屋見るのも楽しみかも。まつの時もすごかったもんね」
そんな会話をしながら部屋の扉の前にたどり着く。
中から聞こえてくる賑やかな音の中にある声にまつはほっと胸をなでおろす。宍戸あたりだろうか「何言ってやがる」といった声が上がっているのが聞こえる。恐らく何か冗談でも言ったのだろう。
行こうかとたけたちに背中を押されたまつが控えめに扉を叩く。まつが二人に視線を送ると、二人も中の賑やかさに安心しているのか微笑んできた。
数拍空いてガラリと扉が開いた。開けたのは忍足のようだ。忍足の体越しから見えるベッドに座っている、目当ての人物にまつはすぐに気が付いた。
よかった。まつはその思いと共に、安堵が全身を包んだ。
しかし、たけやうめは跡部を囲むの男子テニス部のいつものメンバーが、自分たちと跡部を交互に見てどこか浮かばれない表情であるのに気が付いた。とりわけうめは忍足が何か言いにくそうな、悲しそうな顔をしているのに気が付いた。
どうしたのかとうめが尋ねる前に、とんでもない言葉が病室に響いた。
跡部と名を呼んでそちらに向かおうとしたまつがぴたりと足を止める。
「あーん?おい忍足。誰だ、その女は?」