彼女の生態



彼女の生態

“が、しかしはまかり通らない-1”


「マジで?」

会社帰り、待ち合わせに近くのカフェを指定したはずの彼女が何故か目の前にいる
しかも良い笑顔で手を振っている
すれ違う男共の視線が必ずと言っても良い程、彼女にピントを合わせる
俺の同僚達も少しざわついた
が、しかし俺は100%慌てていた
今までこんな時間に外出した事無いし
見知らぬ人間が彼女に近付く可能性も考慮して待ち合わせをしたと言うのに

「ごめんね、やっぱり外に出てきちゃった♪」
「あー、うーん」

一応、薄着で無かったのは誉めるべきだろうか
そんな事を考えているうちに同僚が思い切り俺の肩を掴んでる
良い笑顔で

「例の彼女?」
「まぁ、そうです」
「こんばんわー」

なんつーか、早くも外仕様の顔が展開されている
ファミレスの時のように行儀も良く、買い物の時のように僅かな警戒も怠らない
事情を知らない周囲は既にデレ全開
だから、本当に家の中の彼女はなんなんだ?
待ち合わせの本題を無くしそうになり、同僚には悪いが話を区切らせてもらおう
名残惜しそうな連中とは違って隣の彼女は淡々としている
別れるとすぐ向き直った

「優しい人、楽しい人♪」

そりゃ女子の前だから、ね
明日以降の質問攻めにやる気を削がれながら歩き出した


さて、本題はと言うと

「予約しといて良かったねー♪」

何を隠そう、俺のスマホが大破したのだ
掃除中の不慮の事故によって、本当に何をどうしたらそうなるのか未だに疑問なのだが
彼女曰く、
掃除機のヘッドで突いたらアイスホッケーよろしくあちこち衝突してゴールしたとの事
その上、液晶はバリバリ本体自体もあちこち欠けているし、電源が入ったと思ったらすぐに真っ暗
一応、ショップに持ち込んだら店員にドン引きされて買い替えを勧められた
幸いだったのは最重要の部品は無傷だった事くらい、とは言え

「ゴメンねー♪」

本気で謝ってます?
本体の代金は彼女持ちだったけど
きっとそれが誠意だと思う

が、しかし、はまかり通らない-2
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