彼女の夏休み【2019】



彼女の夏休み

“**日目”

《霧の中をさすらうのは不思議》
《生きるとは孤独でいること》
(ヘッセ「霧の中」より)

「ひとりぼっち」
「どうした?」

本が欲しい、と言うから本屋で幼児向けのコーナーに向かう覚悟を決めたら何故か詩集を手にした彼女
とりあえず、羞恥心は回避したが謎は残る
世界でも有名らしい人物のほんの一部の作品を集めた本
彼女は家に帰るなり俺が居る事も忘れるくらい没頭中
が突然、発したのが冒頭の一言

「人間は孤独、ひとりぼっち」
「・・・・最初は、な」

顔をあげて泣きそうな彼女の頭を撫でてやる
彼女の後ろに腰を下ろして一緒に詩を見てみる
俺はその詩を知ってる訳じゃない
簡単な解釈を読んでもイマイチ解ったとは言えない

「ひとり」
「でも、俺、いるだろ?」
「?」

少し前に気付いたが彼女は“一人”やそれに似た言葉によく反応する
過去に何があったかもしれない、でも聞かない

「俺にお前が居るように、慰安のお前には俺がいるだろ?」
「うん」
「ただ、肝心な部分は自分で決める、で良んじゃね?」
「じぶんで、きめる」

詩の意味なんて解らない
一人だってやれる時はやれる
ダメなら少し手伝えばいい
ただ、何かを決めるのは自分自身じゃないと

「腹減ったー、て台詞まで誰かに設定されるとか嫌じゃん」
「やー!!!!」

良んじゃね?それで

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