彼女の生態の裏側

「〜〜〜♪」
久しぶりの仕事。
面倒だけど仕方がない。
ご指名とあってはねぇ。
でもいぃの、だってこれが終わって明日になれば、、、

「随分上機嫌だな」
久しぶりの仕事で双子の妹はさぞや怒り狂うだろうと思いきや鼻歌交じりで作業をしている。
手元にはさっきまで人間だったもの。
殺してバラバラにしたらかなりの数になってしまったが依頼人は何故か満足そうな顔をしてボーナスも出すという始末。
世の中は本当に変化の連続なんだな、などと考えながら自分の手元にある元人間の破片をホームボックスに詰め込む。
ぱっと見は工具入れや遠出のイベントに使えそうなボックスが今となってはただただ肉片を入れる箱に成り果てていた。
成人男性五人はさすがに骨が折れそうだ。

「だってぇ、今日の仕事が終わる頃にはぁ、彼が帰ってきてぇ、アタシの手料理を食べる手筈になってるのぉ」
急に出張とか言い出すから会社を潰してやろうかと思ったけどアタシの収入だけだと不安定だからなぁ。
単価は高いけど。
バラバラにするのはさして問題じゃないけどボックスに詰め込むとか意味不明。
大体、用意したやつサイズが適当だからどこまで詰めて良ぃのか難しぃんだけど!!
日頃から煮物とかカレーとか鍋料理は一通りマスターしたから出来る事であって人体パーツはパズルじゃないんだっつーの。
てか蓋にも余裕があるから積めるかな?

「そうか、なら急ぐか?」
「平気ぃ、帰りが遅くなるから先に寝てろって」
そんな遅くに帰ってきた人間が食事とか採れるんだろうか。
とは言え妹の機嫌が悪くならなければなんでもいい。
手料理、確か自分が作るとなんだかんだ言って食べてくれてたな。
思い出してみると二人もそれなりに料理はしてくれたが自分が作っている時は視線だけど終始寄越すくせに何も言わなくなる。
最初は警戒されているのかと思いきや物珍しさと彼女?が作る手料理は格別なのだとか。
作っているのは同じ人間だと言うのに意味が解らない。
妹の現象もいわゆる格別、と言うものなんだろうか?

「、、、、、」
「どうしたの?なんか変なもんとかあった?」
帰ってからの予定を再チェックしていると急に黙り込んでた事に気づいてまさか何か異物でもあったのではと慌てて覗き込むが手元は相変わらず肉片ばっかり。
ぼんやりと何かを見ている時はあまり良くない路線に考え込んでいるケースが多くてひとまず意識だけでも引っ張っておかないと一人で抱え込んでしまう。
彼氏が一人でもあれこれ思案するのに何故か二人もいる。
ストレートにブチ込めば良いのに。
詐欺か、行き倒れかと思ったけど真剣に考えてくれるみたいだそし。
お互いに対面こそしていないけど誰なのかは知っている変な状況。
でも間違えて殺したりなんて事にならないだけマシ。
そもそも殺られる前に殺れば良いんだし?

「今度、やってみようかと考えた」
「喜ぶよ、絶対」
珍しく姉が微笑んだ。


「おかえりー☆」
「ぅお!寝てろって言ったじゃん!?」
確かにそう言われたけど『はい、解りましたー』じゃつまらないじゃん。
用意しておいた食事のご紹介へw
「これ、明日寝坊するコースー!!!明日買い物に行くんだろ?ワンピースとか靴とかバックとかそれから、、」
おつまみセットに日本酒、メインはお疲れな彼に冷や汁を。
眼の前で頭を抱える彼を見てどうしてか嬉しくなってしょうがない。
「いいじゃない、買い物は逃げないし、また今度にしたって変わらないし」
「そうだけどさー」
買い物も好きでも二人きりの方がもっと好き。
出張で置いてけぼりをくうのも
仕事で彼を家に一人にするのも
嫌い
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