彼女の生態



彼女の生態


“親の死に際って”



「そう言えば、このドラマって流行ってんの?」
「んー、わかんない」

それはいわゆる韓流ドラマ
内容は普通、演出は引くぐらい過剰
ちなみにさっき聞いたドラマの内容はかつての友人が主人公の親を死においやるシーン
なんか、派手に色んなものが散らかってる

「嫌い?」
「そーでもねーけど、なんか近いなーって」

俺の親は死に方が謎だった
ある朝、会社で首を吊った父親
公園の公衆トイレで首を吊った母親
一軒家に残された俺
親戚に引き取られることも無く施設に入って過ごした日々
最近、二人が死んだ時の話を思い出す事が増えた気がする
一緒に暮らしているせいか?
遺書も無く、殺されたようでも無い
子供だったせいか詳細は直接聞かされていないものの
だからこそ話していた言葉が記憶に残る事だってあると言うのに
零れ落ちたことだけとりあえず片隅にしまっておいた子供がいた事を当時の大人は知らない
もしかしたら他殺かもしれない
事故かもしれない
よく解らないけどとっくに時効を迎えたのだから考えても今更だ
ホント、今更だ

《ねぇ、●●●。私がこんな親でゴメンね》
《●●●、結局、自分を守れるのは自分なんだ》

ハッキリ覚えているのはそれくらい
それより前は忘れた、てくらい覚えてない

「なんか、凄ー今更」
「いまさら?」

リンゴの皮をキレイに剥き終わった彼女が差し出す
普通に美味い、真ん中に蜜が入ってる

「これ、お高いやつ?」
「スーパーのリンゴ」

箱買いしたのかよ、誇らしげに段ボールを突き出す
毎食のおかずにだけはされませんように、と祈ってみた


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