彼女達のバレンタイン
彼女の生態
“はっぴーバレンタイン”
こんなに普通に好きになるなんて思わなかった
普通に恋して、普通に付き合って、普通に...
ずっと一緒、ずっと好き、ずっと傍にいて
ウソ
いつか殺すくせに
いつか嫌いになるくせに
いつか捨てるくせに
嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、
イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、イヤ、
「おーい、苺ジュースか?」
「え、あ、...あぁ、ジュース」
虚ろな瞳で苺を握り締めてるから何かあるなぁ、と思って呼んでも反応が無い
いつかの絞首プレイはゴメンだったので正面ギリギリ大丈夫そうな距離を保ちながらテーブルに向かい合わせで座ってみた
やっと反応したと思ったら大粒の苺は無残な姿に
え、つーか、それって千●屋の一つのカゴでも数万円するんだろ?
こういう時、ホントに金銭感覚が異次元だな、と痛感する
正気を取り戻してテーブルを拭くのを手伝おうとした俺の袖をつまむように引かれた
「どうした?」
「いつかの話だけど嫌いになったら捨ててね。ここの住人は騒ぎを起こしさえしなければ」
「嫌だ」
今度は唐突にいつかの別れを想定した話になる
多分、さっきもソレで考え詰まったのか
最近、この手の事には敏感になってきた
元々の住む世界が違った事
手が怪我以外で赤くなった事がある事
全部OKした上で今居るのに
時々、不安がる
そんな顔すんなよ
いつものヘラヘラした顔が好きなのに
こういうところで馬鹿を発揮すんなよ
「これからも一緒に居んだから、いつかとか無いって」
「未来なんて不確定だらけ」
俯く彼女
そう言えば苺を潰した手で袖を掴んでたんだっけ、赤くなってる
「見てくれしか同じになれねーけど、好きだからそれ以外は同じになれねー」
「そう言うところがバカで好き」
泣きそうな顔をして無理に笑うからキスの代わりにまるごと抱きしめた
本気だっていつか信じてくれんのかな
それとも逆に俺が嫌われんのかな
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