彼女の生態
彼女の生態
“その名は大家さん”ー2
「今日も元気だねぇ」
「それぐらいしか取り柄が無いもんで...」
「またまた」
記憶が長持ちしないらしい大家さんと知り合ってから数週間後
休暇の昼間に出くわす事が多くなった。
テキトーに流せば無事と教えてもらったので当たり障りの無い会話をする。
「最近はこの辺りも物騒になっちまったからねぇ」
「怖いですねぇー」
この会話も何回目だろう...
「10年前に改築した時にはみんなに悪い事をしてしまってね。みんな他所へ越したきり...でも新天地で上手くやってると信じるしか無いね」
「そうですね」
同じくだりでも悲しそうな顔を見ると上手く返す言葉が見つからない。
最近はちょっとした事故でも場合によっては大事になるからマンションの管理も難しいんだろうなぁ
「もー、改築は5年前だよー10年前はガサ(警察関連)だよぉ」
「...へー」
改築自体は事実らしいがどうやらそれ以前に結構ヤバイ事があったらしい。
因みに大家さんは皆他所に行ったきりと言ってたけど
「あー、偽名だもん。帰ってきた時、別の偽名になってたんでしょ」
ですよねー。
ヤバイ人達が長くネグラにするくらいなんだからそうなるんだろうね。
普通は戻らないと思うけどクオリティーが上がって私的リンチもOKとなればそうなんのかな
「もー相変わらず、金勘定以外は宇宙だなー♪」
笑って、特大サイズの土鍋を置いた彼女。
豆乳鍋、しばらく健康でいられそう。
注:文中の《ガサ》の単語は諸説あります。