彼女の生態


彼女の生態


“セコムのセコム”


「君が新しく引っ越して来た人?」
「へ?」

突然、声をかけられ振り返ると灰色のフードを深く被った男が決して良いとは思えない笑顔で立っていた
彼女曰く同業者だらけのマンション
なら、こんな呑気にしかも声をかけてくるなんて
大丈夫なのか?
色々ためらいながら後ずされると男は笑った顔のまま一歩前に出て俺の顔を覗き込んできた

「!!」
「ゴメンネぇ?忘れてた、ヨ」

眉毛が無い
無いだけならまだしも眉があったであろう部分に沿って切り傷ができていた
驚いて謝罪の言葉を残して玄関に一目散
同業者!?ホラー・ハウスじゃなくて!?
自宅のドアを勢い任せに閉めて玄関に座り込む
手が震えて靴が脱げねぇ

「なんなんだよ」
「何が?」
「ギャー!!!」

突然、背後からの声に叫ぶと目を細めて俺を見下ろす彼女
彼女が手にハンガーを持って立っていた
スーツを掛けながらソファに掛けるよう促される
言われるがまま部屋着に着替えてソファに腰を下ろすと暖かい緑茶が出された
ひとまず、飲みきってつい先程の事を話すと途端に彼女の顔色が変わった

「あんのカメラ小僧・・・・」
「え、えとーーー」

鬼の形相な彼女に声を掛けるが自分の世界に入っているのかしばらく彼女も怖かった

「変態の覗き野郎だから返事しなくて良いよ、調子のるから」
「へ、へーーーーー」

その後、怒りが落ち着いた彼女が教えてくれた、その名前と対処方法に曖昧な返事しかできない
殺られそうになったらどうすりゃ良いの


「あ、この前は、ゴメンねぇ」
「ッ!?」

エレベーターで乗り合わせた
さっそく教えてもらった通り返事をせずに会釈だけ
するとソイツは一方的に話し続け結局、降りる階までエンドレス状態

「?」

降りる時、ちらりと見えた顔には絆創膏が見えた気がした

「ホント、ゴメン、ネエ」



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