彼女の双子の姉の生態


彼女の姉の生態

“ぐるりと回ってニャンコの目”


ぐるりと回って見て率直な意見

「広い」
「よかったな」

彼女の両隣で口を大きく開けたまま立ち尽くす二人とは大違いに彼女はさっさと中へ入っていく
知り合ったばかりの頃、大きな日本家屋の彼女の家は二人には身長的な問題が日常だった
いつもそれを無言で見守っていた彼女から突然引っ越しの話が持ち上がった
静かな場所での生活に落ち着きまだ不安要素が残る彼女を思えば少し早いと思われる決断だったが
既に物件を抑えているうえに彼女自身の私物が異様な早さで処分されている事から嘘でも計画案でも無いのは解った
ひとまず荷造りを始めて大量処分されていった光景がふと二人の脳内に蘇り
自分たちも後に続こうとして分別段階で挫折
それを心底不思議そうに見ていた彼女の一声で引っ越し業者一任となった
最低限触られて困る物だけ退けようとして
一方はショルダーバッグ一つ
もう一方は人生で二度と来ないだろう絶望を味わう事となる
と言うのも成人指定の書籍や映像作品に関しては彼女が秘密裏に瞬殺していたようで業者も微妙な空間に首を傾げていた
そして新居に到着して冒頭に至る

「どっかのセット?」
「だとしたら雨風大変だな」
「都内にもあるんだな、こういう物件」

端から見るとこぢんまりしているようで実際は広いと言うトリックアートのような一軒家
各自与えられた部屋に運び込まれた荷物を解いて状態の点検
彼女が信頼の置いている業者だとは言っていたが彼女自身も信用の為に点検は怠らないそうだ
色々が終わって天井を見上げる頃には一日が終わる合図のように夕日が沈みきっていた
散々迷って結局、ピザのデリバリー
一通りの種類を頼んで家を出る
配達の環境を考えて尋常で無い数の注文数を先方が最後はかなり小さな声で受けていた事からお察ししての結論
清算を終えて男二人はピザを両手に重ねられるだけ重ねて彼女は手ぶら
不満気な表情に帰り道を延々なだめながら家に付いてピザに齧り付くと彼女の機嫌は美味に支配された
外食が少ない以前にまともに食事を採っていたのかさえ怪しい彼女の言動
二人は彼女が興味を持ったものは端から試した
うどん、蕎麦、丼、他にも試せるものはなんでも試した
その甲斐あって彼女は今は二人が提案した時は嬉しそうにメニューを見ている
そして食べる、ひたすら食べる
実は食欲が人の倍以上あるので発注も一苦労だがその件はまた別の機会に今日は割愛願う

「んー、中々パンチ効いてんなー」
「チーズ、サラミ、チーズ、サラミ」
「美味いな」

必死にかぶりついて子供のように繰り返す彼女の様子を横目に二人は内緒でその表情を独占する

この新しい家でも変わらず彼女の横顔を独占できるなら、と
新居にやっと落ち着いた彼等だった


ついでにベッドも風呂も大きく作られている

「これなら○○○○できるな!」
「諦め悪いな」

成人指定の会話は相変わらず悲劇を招く

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