彼女の生態の裏側


彼女の生態の裏側で


“ソレはとても単純なモノだった”

僕がどうした、とか
彼女が何をした、とかでは無くて

単純に事故だった
銃口が僕を捉えた時に前もって解っていたのだろう
彼女が防御態勢をとってくれて僕は助かった
でも、

「申し訳ありません」

彼女の腕から出血していた
ただ、それだけ、だった
最初は笑って気にも留めないで置いたが
気付けば視線は彼女と彼女の腕を追っていた
彼女は雇われの掃除屋
依頼すればなんでも殺してくれる
最近、らしくもなく依頼を増やしている
それを口実に彼女を見ていた
時々、血に濡れていたりもするけれど
あれ以来、彼女は失敗をしない
ソレが退屈に思ってしまったのか?

「ごめんね」

彼女の右の頬が腫れている
理由は簡単な事

「いえ、平気です」

僕が殴ったからだ
そういう気がある訳じゃない
ただ、負傷した彼女の姿が頭から離れなくて手をあげてしまう
彼女は逃げもせずにその場に立ち尽くす

「逃げないの?」
「依頼なら実行します」

依頼、彼女を動かすもの
僕はなんでいつまでも無駄な期待ばかりしてしまうんだろう


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