彼女の生態の裏側


彼女の生態の裏側で


“1・2・3で息を止める-1”


「マズ」

目の前の死んだソレが最後に暴れた為返り血を大量に浴びるはめになってしまった
今までにありえないくらい不味かった
もっとも血なんて食べた事など無いが
顔面に付着した大量の血液は後で洗い流してしまうから良いにしても口の中の味が消えそうに無い
適当に飲み物で流してしまいたいが手近にそういったものは無く、
仕事もやっと折り返しくらいになったところで
おそらく殺すだろう標的は50弱はいる
その状況で休憩など言ってられない
慎重は欠かさず、できる限り先を急いでみる事にした


「雨に降られたのかい?」
「作業途中でやむを得ず」

依頼主がいつもより車両の窓を広めに開けて声をかけてきた
無傷の時は自分も車内に招かれた形で報告をするが顔面にあびた返り血は衣服にも大量に付着している
そんな状態で車内に入るのは流石にマズイ事くらい知っている
それ以前に車内での報告の際に途中で体ごと別処へ連れていかれそうになったのでそれ以降、報告事は一定の距離をもってするようになった
依頼主は少し残念そうな表情を見せたが次の瞬間にはいつも通りの表情をしていた

「以上です」
「ありがとう、ところで替えの服は?」
「いえ、このまま帰宅するので問題はありま・・・」
「じゃあ、決まりだ」

依頼主以外の誰もが驚いた
彼が自ら外へ出てきてしまったから
想定外の事態に自分も一瞬、驚くがすぐに周囲を警戒し自分のできる防衛術で彼を囲んだ
相変わらず突発な行動が多いようだがとうの本人は全く気にしない様子で
自分の手を取ると強引に車内へ引っ張り込んだ

「・・・・・あの」
「ごめんね」

まだ外では依頼主の護衛の声がしたがそれどころでは無かった
抱きしめられて倒れこんでしまった挙句、依頼主を下敷きにしてしまった

「これくらいじゃ、潰れたりしないよ」

笑い声が聞こえた



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