このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

UK

 いつものようにお互いの体だけを求めあったあとのベッドの上。
 気怠い寝室の空気が肺に溜まってくるようでたまらない、と感じた戒は、緩慢な動作で起きあがってタバコに火をつけた。前髪をかきあげ、傍らに眠る麗に視線をやる。

(相変わらずキレーな顔…)

 戒は、この男の顔が好きだ。寛大な性格が好きだ。ギターを奏でる、白く長い指が好きだ。少し高めの声が好きだ。欠点など見えないくらい、麗に溺れていることを自覚しているし、麗の側も戒という存在を求めていることは自覚している。
 しかし、お互いに自らの気持ちを伝えることは決してしない。夜を共にするだけの関係で十分だと考えている。その理由は、気持ちを伝えて今以上に溺れていくのが怖いからだ。おそらく、それは麗も同じなのだろう。

(それに男と男じゃ、きっと周りが悲しむよね)

 戒も麗も、なにも男性だけを好きなのではなかった。普段は女性を求めるが、どうしてもその都合がつかない場合や気を遣わない相手が良い場合。そういったときの関係だ。さみしさを発端として、なし崩し的に続いている。この関係は、当然二人だけの秘密だった。



(いまは、この秘密を共有できてるだけで良いや…)

 すっかり短くなったタバコを灰皿に押し付け、戒はまたベッドに潜った。麗の、トーンを落とした茶髪を触り、いまこの瞬間、麗を独占できていることは幸せじゃないか、と自分に言い聞かせる。

「麗…」

愛しい男を想って、口をついて出た言葉はあまりにも情けない声で、今の関係を悲観している自分の心情を投影しているようだった。
少し、麗が身じろぎしたようだったが、それすら愛しくて戒は目を細める。

(やっぱり好きだなあ)

そんなことを考えながら、戒はまた眠りに落ちていった。



5/9ページ
スキ