俺は安眠ができない

 ねえ、起きて。
 起きてよ。
 起きてってば。

「……む?」

 やあ! やっと起きたんだね!
 ボクたちはずーっと待ってたんだよ、寝坊助さん。

「これ、は……鳥の、魔物……? それも複数……」

 うん!
 ボクたちは君に美味しく料理されるのをずっと待ってたんだ!

「私に?」

 だってキミはいつもワタシたちを美味しく食べる方法を探して、一番ベストで美しい方法を編み出してくれるもの!
 それがとってもとっても嬉しいのよ!

「何故?」

 ボクたちは魔物であり自然界の掟に沿って生きる生き物でもある。
 誰かに食べられてその生き物の肉体の一部となり、排泄されてまた大地に還る……それは、生き物が尊ぶべき自然の理のひとつなんだよ。
 理を守るためにワタシたちを美味しく料理してくれるアナタには感謝しているの!

「そうなのか? 私は当然のことをしたまでだが」

 そーゆー当然のことを当然だって思ってない人が大勢いるんだよー。
 だからお礼なんだ! ボクたちのためにありがとう!
 ありがとうだよ!
 ありがとう!!

「ふむ、何度も言われてしまうとくすぐったいな」

 感謝の気持ちを込めて作ったから食べてほしいの!

「……こ、これは……!?」

 ぱんぱかぱーん! でかでかターキーの丸焼きでーす!
 でかでかターキーくんもキミに礼ができるならって喜んで身を捧げてくれたよ!

「こ、こんなに巨大な鶏肉をひとりで……いいのか?」

 いいよ! 感謝の気持ちだもん!
 遠慮なく食べて! 夢だったんでしょ?

「ああ、ここまで巨大な鳥を食すのは数多い夢のひとつだったからな……」

 さあ! 召し上がれ!

「いただきます」

 がぶり










「……あのさぁ、なんでアオは右の二の腕に包帯巻いてて、ギンは頭にでっかいタンコブを生やしてるの? 僕の知らないところで痴話喧嘩でもした?」
「違う。正当防衛だ」
「……食べられなかった……」


2020.3.26
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