冒険者珍道中

辺境の地、タルシス。
とあるギルドが巨人を倒し、世界樹の迷宮が踏破されたと認められてから数ヶ月。
あのギルドに続け!と言わんばかりに次々にギルドを立ち上げる冒険者が溢れるこの街で、迷宮を踏破したギルドに憧れた冒険者がいました。
「パレットはすごい!やっぱりすごい!」
踊る孔雀亭。
伝説のギルド御用達のこの店には連日連夜多くの冒険者が集まり、冒険談に花を咲かせながら酒を楽しみ今日も大賑わい。タルシスの人間だけであるウロビトやイクサビト、帝国の人々も加わり3つの地域の者達が共に交流を深める光景は、他の国では決して見れないものでしょう。
「すごいんだよーやっぱりすごいよあの人達!迷宮を踏破した人間はやっぱ違うね!」
そこで高らかに叫んだのは新人冒険者フカミドリ。ソードマンの少女で16歳。帝国出身ですが今はまだ内緒。
幼い子供のようにはしゃぐ彼女を正面から眺めているのは、
「やけに興奮してますねぇフカ子。ようやくパレットのリーダーさんに稽古をつけてもらえてよほど嬉しかったんですか?」
街でとっ捕まえて仲間にしたルーンマスターの青年、クロ。自称紳士の女好き。
「わざわざ徹夜で頼みに行って、ご苦労なこった」
彼の隣で呆れながら手羽先をつまみに酒を飲んでいる男は、クロの先輩であるメディックの青年で、名前はハイ。
きょとんとする2人に対し、フカミドリの叫びは続きます。
「それもあるよ、うん。だけどそれだけじゃないんだ」
「なんじゃそりゃ」
「一緒に過ごして分かったんだけど、あの人達が巨人を倒して世界を救ったのは、自分達じゃなきゃ世界は救えない!という使命感じゃなくて、ただ迷宮踏破するための障害物を潰しただけなんだ!」
『……は?』
ギルドを立ち上げた当初から「パレットは正義感あふれるすっごいギルドだからアタシもそれを目標にして頑張る!」と豪語していた彼女の口から飛び出した言葉はそれとは真逆……とまではいかないものの、想像とはやや異なった言葉でした。
だというのに彼女の興奮具合はなんなのだろう。憧れのギルドから想像してなかった言葉が出たというのに、その瞳は光を失うどころかむしろ前より輝いて見えます。
「リーダーの彼本人の口から聞いたから間違いないよ。あの人達は正義の味方になりたいからじゃなくって、ただ自分の気持ちに正直になって行動しただけなんだ!だから、アタシはようやく分かったよ。どうしてパレットがすごいのか」
「強いからじゃねーの?」
「強いってのもあるんだけどさ、あの人達って絶対に自分の意思を曲げないんだ。自分が正しいと思った事を最後まで貫く頑固さというか自分の正義を信じる強さがあるんだよ。だからとってもすごいんだ!」
「ああー……なるほど、だからそう言ってたんですねぇあの方は。私はてっきり照れ隠しかと」
「ああいう性格の奴が照れ隠しなんてするかよ」
「だから!アタシも自分の正義を信じて行動する!絶対に自分の正義を曲げない、強い冒険者になって、いつかきっと!別の国にあるっていう世界樹の迷宮を踏破してみせるんだ!」
席から立ち上がって高らかに叫んだフカミドリ。それはもう酒場で一番目立った光景に、ほとんどの客が「何言ってんだこいつ……」と言わんばかりの視線を向けていますが、
「素晴らしい!さすがフカ子ですね!私もお手伝いさせてもらいますよ」
クロだけは笑顔で小さな拍手を送ります。心底呆れてるハイは悪態をつきながら酒を飲んでいますがさておき、
「ホント?クロ、手伝ってくれるの?」
「最初に会った時、貴女の冒険をサポートすると言ったじゃありませんか。貴女が冒険者をやめるその日まで、私は地の果てまでお供しますよ。先輩は面倒くさがるので期待できませんが」
「その通りだから否定できねぇわ」
「大丈夫、アタシもハイには何も期待してないから」
「おい」





前回のあらすじ
ちょこちょこ現れては不思議のダンジョンの同行を要求して来る少女、ナディカ。その正体は神々にあるものを届けるためにやってきた精霊族!
それを阻止するために妖魔族という奴らがナディカの命を狙っていることが判明!
アオニの私情がどうたら言いつつも、やっぱり放っておけないということで、パレッテはナディカと行動を共にすることになったぞ!
あとエミルたちが戻ってきたりイルコフが闘争心むき出しにしていたり第5迷宮があっさり解禁されたりしたぞ!



ナギット「どうしてこんなアバウトな説明文になってるんですかちょっと」
アオニ「言わないで、先にセーブしてから台詞を読んで、後でゆっくりメモろうとしたけど第5迷宮のBGMが気になっちゃってダンジョンに入ったら、オートセーブされる仕様のこと忘れてて台詞を全く回収できなかったミスを……」
キキョウ「致命的なミスだったなあ」
クロ「ま、ミスしたものは仕方ありませんし次起こさなければいいだけの話です。物語の核心を突くようなシーンが飛んだのではないですからまだよかったと前向きに考えましょう」
アオニ「う……クロにしてはまともな意見……だけど、そうだよね。うん、前向きに前向きに」
クロ「それにようやくサブクラスが解禁されたのですから、悪いことばかりではないじゃないですか」
アオニ「あ!そうだったね!うん!」
ナギット「サブクラス?それは一体……?」
クロ「今の職業とは別のもうひとつの職業のことです。まあ副業みたいなものですね。サブクラスを習得すればそのクラスで装備可能な武器や盾を装備できる上に、スキルも使えるようになりますよ」
アオニ「アスラーガにはなかったけどタルシスにはあったんだよねー。タルシスにいた頃のサブはダンサーしてたよ、少人数ギルドだったから補助できる人が足りてなくってね」
ナギット「へえーじゃあここでもサブクラスはダンサーなんですか?」
アオニ「いやーここでは人は足りてるし別のにしようかなーって。せっかくいっぱい職業があるんだしじっくり選んでから決めたいじゃん」
キキョウ「じゃあクロは?タルシスと同じにするのか?」
クロ「はい。私はここでもメディックのサブクラスを取るつもりなので、皆さんはそれぞれ自分の戦い方にあったサブクラスをゆっくり選んでくださいな」
キキョウ「じゃーお言葉に甘えてじっくり選ぼう!」
アオニ「んーんー何にしようかなーフーライもいいけどパイレーツにしようかなー突剣スキル増えるし……」
ナギット「いきなりこう一気に出されるとすぐに決められませんね」
キキョウ「俺フーライ!フーライがいい!あーでもシノビもカッコいいなー!迷うなー!」
アオニ「ナギットは補助を極めるか補助しつつ攻撃もしたいかで考えたらいいんじゃない?それだけでも選択の幅が狭くなるよ」
ナギット「なるほど……」
キキョウ「どーせ盾で殴らないんだから補助極めたらどうッスか?」
ナギット「いやそれとこれとは関係ねーだろ、つーか盾は殴るもんじゃねぇ」
アオニ「え?そうなの?アタシはタルシスではパワーブレイクしょっちゅう使ってて盾で魔物を殴ってたけど」
ナギット「え」
キキョウ「盾で魔物を殴る重要性が分かったんじゃないッスか?ホラホラ」
ナギット「だけど盾は守るもの……いや、うん、どっちにしろ俺はスマイト使う気ねーし補助極める方針で行くか」
アオニ「パラディンなら何がいんだろうね?プリンス?」
キキョウ「俺はダンサーでもいいと思うぞ!ナギットさん、見かけによらずダンスとか結構好きだし!」
ナギット「こら!余計な事を言うな!」
アオニ「へぇーダンスが好きなんだー以外だねーアタシの友達にもすっごいダンスが上手な子がいたなぁ〜」
キキョウ「ほえー」
アオニ「でも自分がこの世で一番可愛いと思い込んでるから機嫌損ねるととてつもなく面倒だったよ。前のメンバーが何度も絡まれてた」
キキョウ「こっわ」
ナギット「めんどくさっ」
クロ「(何故でしょう……心なしか寂しくなってきました……)」
アオニ「クロどうしたの?遠く見てるけど」
クロ「いえ何も。それより、サブクラスは決まりましたか?」
アオニ「うん、アタシは決めた」
キキョウ「俺も〜」
ナギット「まあ、一応……」
クロ「ではトラオレさんに頼んでサブクラスを習得しましょうか」
キキョウ「あれ?でも、レベル20になってないとサブクラスを習得できないってあるから、クロ以外は誰もサブクラス取れないなぞ?」
アオニ「え」
ナギット「え」
クロ「そんな目で見ないでください!」

というワケで新しく行けるようになっていた小迷宮でちょっとだけレベルを上げ、全員20を超えたところでギルドに帰ってきた。

アオニ「サブクラスを取るに当たって休養しよう」
キキョウ「なにせ?」
アオニ「今回は休養してもレベルが下がらないから今まで以上に気軽に休養できるってのもあるし、オーベルフェでの冒険にも慣れてきて本当に必要なスキルが分かってきた頃でしょ?だったら必要なスキルだけを取ってスキルポイントをちょっとでも有効活動したいじゃん」
クロ「では、この機会に3止めしていた採集スキル分のポイントを取り戻して、別のスキルに振り分けてしまいましょうか」
アオニ「いいねそれ!」
ナギット「休養ってレベルが下がるんですか?」
アオニ「タルシスとかではね。場所によって下がるレベルが違うってパレットの人が言ってたよ」
クロ「何気に他の世界樹にも精通しているのがすごいですよね。確か……エトリアでしたっけ?」
アオニ「え?アタシはハイラガードって聞いたけど」
キキョウ「よくわからないけど、そのパレットってスゲーギルドなんだな」
ナギット「そもそも何なんですか、パレットってギルドは」
クロ「ああ、あの方々はタルシスの世界樹を一番最初に踏破した伝説のギルドであり……」
キキョウ「あり?」
クロ「フカ子の恩人ですよ」

パレッテ一行、サブクラス習得。
アオニ→ソードマン/パイレーツ(突剣スキル&物理チェイス)
クロ→ルーンマスター/メディック(リフレッシュ&トリートのみ)
ナギット→パラディン/ダンサー(タンゴのみ)
キキョウ→ケンカク/フーライ(〇〇退治&罠破壊)

黄金の麦酒場でクエストを受けにやってきた。

アオニ「そう!これだよこれ!これを待ってたんだ!」
ナギット「何を待っていたんです?」
アオニ「ソードマンの奥義解禁クエスト!第4迷宮の時はパラディンとルーンマスターしかなかったからね!クエストが出るのを心待ちにしてたの!」
キキョウ「奥義!奥義って名前がカッコいい!なんとかシンケン奥義とか使いたい!」
ナギット「シンケンって何だよオイ」
アオニ「えっとーソードマンの奥義書を貰える条件は……」

クエスト名:ソードマンの必殺技を授けよう
目的:邪悪な花びらを5体倒す
場所:第5迷宮

アオニ「ギャーーーーーーーーー!!」
クロ「フカ子!!」
キキョウ「ぴゃあ!?な、なに!?何が起こったんだ!?アシダカグモでも出たか!?」
アオニ「あんなもの、奴らに比べたら可愛いもんだよ……だってほぼ人畜無害だもん……トラウマ植えつけてこないんだもん……」
クロ「いけない!タルシスのトラウマが!誰か!誰か鎮痛剤という名のアルコールを!甘いお菓子があればなおよしです!フカ子は甘党なので!」
アオニ「でん、でん、でん、でん、でん、でん、でん、でん」(以下、戦場 双眸爛爛と)
クロ「フカ子――――――――!ってそれは邪悪な花びらじゃなくて破滅の花びらですよ!」
キキョウ「タルシスの迷宮ってトラウマ製造機だったりしないッスかね?」
ナギット「そんなことないだろうと言えない」

第5迷宮、乾きの砂丘

キキョウ「うおーっ!砂漠!さばく!SABAKU!俺砂漠って本でしか見たことなかったから新鮮ー!」
アオニ「それはこっちだってそうだよータルシスとアスラーガには砂漠なかったもん。これが砂漠かーふむふむ」
クロ「砂まみれの灼熱の地……ですか、確かに厳しそうですね。あととっても歩きにくいです……ブーツに砂が……」
アオニ「それは慣れるかロープでブーツの口を縛るかなんらかをして対策するしかないね。まずはB3Fまで行って砦を建てよう」
ナギット「砦を建てるのはいいんですけど、アオニさん」
アオニ「…………」
ナギット「……アオニ」
アオニ「なに?」
ナギット「その、地図にある青いアイコンはなんでしょう?ドクロフロアでもお宝フロアででもないみたいですが」
アオニ「んー?なんだこれ、気になるなあ」

砦を建設しつつ、青いアイコンのフロアまで行ってみた。B4Fにて
結晶石フロアだ!

キキョウ「うおおっ!でっけー!なんだこれ!」
アオニ「わー透き通ってて綺麗!」
ナギット「魔物もいるから油断しないでくださいね。にしても、これは一体……?」
クロ「オーベルフェ観光ガイド~大イノシシ級~によりますと、あれは大結晶石。指定の回数攻撃を加えることによりTPが回復し、宝箱も落とすそうですよ。大きいものの方がより多く、レアな宝箱が落ちます」
アオニ「それどこで買ってるの……どこの土産屋さんにも置いてなかったんだよそれ」
クロ「秘密です♥」
キキョウ「で、魔物も結晶に向かってるっぽいんだけど」
クロ「魔物も結晶の恩恵を狙っているのですよ。魔物が結晶を破壊したら、欠片に含まれる力によって凶暴化し、手がつけられなくなるとか」
アオニ「じゃあ全力で止めないとダメじゃん!睡眠の巻物を使おう!」
キキョウ「寝てる隙に全力で殴りに行くスタイル嫌いじゃないッス!」

便利だがリスクもつきまとう結晶石について知ったところで、一行はB6Fへ

女商人「フフフッようこそ。魅惑の迷宮ショップへ」
クロ「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
女商人「えっなに」
アオニ「気にしないで、まさか迷宮のど真ん中でセクシー系美人と出会えるなんて夢にも思ってなかっただけだから」
ナギット「よく分かってますね……」
キキョウ「付き合い長いからなぁ」
クロ「ここで会えたのも何かのご縁……と、言いたいところですが実は我々クエストを受けてまして、貴女宛ての手紙を渡して欲しいという依頼でしてつきましては……」
女商人「え?」
アオニ「あーそれならもう終わったよ」
クロ「え……終わっ……た……?」
アオニ「うん、終わった」
女商人「ついこの間パレッテっていうギルドの人が持ってきてくれたわよ?いつものストーカー紛いの変な手紙」
クロ「えええええええええええええ!?なっ、ちょ、えええええええ!?ナンデェ!?
アオニ「クロには言ってなかったけど、金策として別部隊雇ってたんだよねー。お金稼ぎしてる間に女商人さんと会ったから、手紙を渡してもらったってワケよ」
クロ「そ、そんな……そんな……クエスト文を見た時から私は楽しみで楽しみで……というかどうして別部隊を作ったって私に教えてくれなかったんですか!女の子がいるからですか!」
アオニ「ぶっちゃけ言うとそう」
クロ「わーん!フカ子酷いですー!」
女商人「……痴話喧嘩なら店の外でやってくんない?」
ナギット「あ、痴話喧嘩じゃないんで大丈夫です。すぐ終わります」
キキョウ「いざって時には睡眠の水葉を飲ませて運ぶから。クロだけ」

騒々しくも一行はB10Fに足を踏み入れる。

アオニ「ぜぇぜぇ」
キキョウ「うー暑いー」
ナギット「鎧に熱が籠る……」
クロ「…………」
アオニ「ヤバイ。ナディカも一応いる状況にも関わらずクロが無言だ、相当キテる」
キキョウ「目付きが公式イラストみたいになってらあ。もう女の子のこと考える頭じゃないな」
アオニ「いや……あそこまで極限状態になってるんだから、少しでも自我を保つために思考回路を全て女の方に持っていって事が収まるのを待ってるんだ。今頃アイツの脳内には水着姿の乙女達が浜辺ではしゃぐ光景が広がっているはず」
ナギット「色々と酷いというか極めすぎているというか馬鹿というか……ナディカは大丈夫ですか?」
ナディカ「わ、私は大丈夫だよ!ぜんぜんへーき!」
キキョウ「俺らがこんなにバテバテなのにか?やっぱ精霊特有の強さみたいなのがあるんか……」
ナギット「どうした?」
キキョウ「(ナギットさん、なんかいるッス)」ボソボソ
ナギット「(え?なんかって何だ?魔物か?DOEか?)」コソコソ
キキョウ「(魔物の特有の気配じゃあないッスね。もっと別のものッスよこれ)」ヒソヒソ
ナギット「(別……?ま、まさか妖魔族が近くに……!?)」ドキリ
ネッド「ぐぼあーーーーー!!
アオニ&ナギット&キキョウ『ギャーーー!!出たーーー!!』
アオニ「って!ネッドとエミルじゃん!驚かせないでよねもう!」
エミル「おや、そこにいるのはパレッテ達じゃないか♪奇遇だね♪僕達も今ここを探索しているところさ♪」
ナギット「とか言いつつ足元で死んでる従者を蹴らないであげてくださいよ。しょっちゅう倒れて鬱陶しいのはわかりますが」
アオニ「わかるんかい」
ナギット「従者が鬱陶しいのはこちらも同じなので」
キキョウ「えー俺、ナギットさんの従者はイヤッスよー?てか無理だし、うん。そもそもナギットさんの従者してるつもりないッス」
ナギット 「は!!??」
アオニ「ろくな従者おらんわ……ねえ?」
クロ「……ビーチバレー……ビキニ……ぽろり……」
アオニ「いい加減帰ってこい」
エミル「そっちもそっちで大変みたいだね~そうじゃなくてもここって過酷すぎだし?ネッドほどじゃないけど僕もフラフラで……ってあれ?お嬢ちゃんもついてきてるんだね」
ナディカ「うん」
エミル「すごいねー子供なのに」
キキョウ「まあそれも人間じゃn」
ナギット「黙ってろ」
エミル「じゃ、僕たちはのんびり行くし、君達も無理しない程度に頑張ってね♪」
アオニ「うん。そっちも頑張って」
エミル「行くよネッド」
ネッド「ぐふぁああっーーーーーーーー!!
エミル「…………」
ネッド「………………はい。では御免……」

2人は去って行った

アオニ「相変わらずマイペースだなー」
キキョウ「キャラもすっげー濃いのな」

B19Fにて

アオニ「結構奥まできたねー」
クロ「そうですねぇ。どこまで続くんでしょうか」
キキョウ「途中で砦建てて帰らなかったらクロはどうなってたんだろ」
ナギット「想像したくもねぇわ」
アオニ「さーばくはつづくーよーどーこまーでー……」
ナギット「どうかしましたか?」
アオニ「……いっぱい死んでる」
キキョウ「わーお死体だー」
クロ「リアクション薄いですね」
キキョウ「そーゆークロも薄いな!」
クロ「まあ死体は見慣れてますし。主にタルシスの方で」
キキョウ「タルシスって修羅の国なのか?」
クロ「まさか」
アオニ「マサカ」
ナギット「目を見て話せというのに。というか息はあるので死んでませんよ、彼ら」
ナディカ「見てみんな!あそこ!」
キキョウ「どこ?」
ナギット「あれは……イルコフさん!」
アオニ「なんだって!?じゃあこの人達はイルコフのギルドの……」
クロ「そうでしょうねぇ……様子からしてかなり無茶したんでしょうねぇー」
ナギット「(めっちゃ何か言いたげな顔しとる)」
イルコフ「ぜぇ……ぜぇ……」
アオニ「今にも死にそう」
キキョウ「じゃあちょっと見守っとこうか」
アオニ「こら」
キキョウ「あう」
イルコフ「第5迷宮を踏破するのは……このワシだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

イルコフは砂塵に向かって突っ込んで行く!

アオニ「やめなよガンナー単騎で突っ込むなんて!5ターンもしないうちに死ぬって!」
キキョウ「せめてパラディンを!ナギットさんを盾に!今なら貸してやるぞ!」
ナギット「お前後で話があるからな」

刹那、砂塵がイルコフに襲いかかってきた!

イルコフ「うわああああああああ!!」
ナディカ「イルコフさーーん!!」

イルコフは砂に引きずり込まれてしまった!

クロ「完」
ナギット「終わってません!次は僕たちの番ですよ!」
アオニ「誰かイルコフの心配してあげなよ。段々可哀想になってきた」
キキョウ「あーゆータイプはそう簡単に死なない補正がかかってるハズだから。アレ倒したらきっと助かるハズだって」
アオニ「アレて」

アレ……ではなく!サッピアオルコンが現れた!

アオニ「気持ちわるーい」
クロ「第一印象最悪ですね」

サッピアオルコンは潜り込みを使った!尻尾が現れた!

アオニ「なにあれ」
クロ「尻尾でしょうね。まあどんな魔物でも、電撃の印術があればすぐに足止め……」

クロは電撃の印術を使ったが尻尾に麻痺は効かない!

クロ「あれっ!?」
ナギット「失敗じゃなくて絶対麻痺にならないって表示みたいでしたね、今の」
キキョウ「ちょっ!何で俺見てんの!?すっごい眼力で睨んでくるんだけど!尻尾なのに!尻尾なのに!」
ナギット「顔に見えるからじゃね?一応挑発しとくからそれでなんとか……」

尻尾は噴射を使った!
キキョウはゾワゾワになった!

キキョウ「にゃーーーーーーーー!!なんか気持ち悪いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!
ナギット「どうした!?」
クロ「ああ、ゾワゾワになってしまったんですね。これにかかると攻撃方向が逆になってしまうんですよ。例えば正面に攻撃しようとしたら意図せず後ろを向いて攻撃してしまうんです」
キキョウ「解説はいいからなんとかしてくれー!メチャメチャ気持ち悪くてどうにかなりそうなんだよー!ヒィ〜!」
アオニ「クロ、早くリフレッシュしてあげて。アタシまで体がむずむずしてきた」
クロ「了解しました」
キキョウ「ふいー助かったーリフレッシュ神スキル……」
ナギット「治ったならキリキリ働けよ。できる限りサポートしてやるから。ようやくダンサーのスキルが使えそうだからな」
キキョウ「おおーナギットさんのアタックタンゴと俺の乱舞の型の組み合わせで、神速剣で120ダメージ越えるー」
アオニ「バフの積み重ねって大事だねーアタシは最近取ってみた物理チェイスでも試そーっと」
ナギット「回避率が高いとはいえ一撃加えたら余裕で200ダメージを越えますね」
クロ「加えてナギットの挑発で攻撃を引き付けた上に、広い攻撃範囲のせいで巻き添えを喰らうフカ子やキキョウへのダメージはディバイドで抑えられますね。もうハメたのではないですか?」
アオニ「部屋全体攻撃が飛んできてクロが倒れない限りは大丈夫」
クロ「これは手厳しい」
ナギット「なんかやることなくなったし、別のバフでも積んどくか……」
キキョウ「ん?なんスかその踊り」
ナギット「エナジータンゴ。効果が続いてる間は周囲の仲間の消費TPを押さえることができる長期戦向きのスキルだ」
アオニ「んーなかなかリンクフリーズにかからないなー絶対氷弱点だと思うんだけどなー」

アオニのリンクフリーズ!サッピアオルコンは倒れた!

アオニ「ありゃ、倒した」
ナギット「もうちょっと喜んだりしないんですか?」
アオニ「いやーなんか拍子抜けしちゃって……やっぱりダンジョンはボスより道中が過酷だよねぇ、うん」
ナギット「……それで、イルコフさんは」
ナディカ「パレッテさん!あそこっ!」
クロ「何か埋もれていますね……イコルフさんのようです」
イルコフ「い……イルコフだ……」がくっ
ナギット「無理して訂正しなくてもいいんですよ!どうせ聞いちゃいないんですから!」
キキョウ「あーあ、ナギットさんが大声出すから気絶したッス」
ナギット「俺のせいじゃねぇ!」
アオニ「はいはい口喧嘩はそこまでにして!とにかく、イルコフもイルコフのギルドの人達もすぐ手当すれば助かりそうだし急いで街まで運ぶよ!クロは応急手当てする!」
クロ「わかりました!女性優先で!」
アオニ「重傷者優先だよ馬鹿!」

するとそこにエミル達がやってきた。

ネッド「わわっ!こ……これはっ!!」
エミル「イルコフさんとそのギルドの者達だね。こりゃまた酷い有様だ」
アオニ「丁度よかった!ウチの野郎連中全然使えないんだ!手伝ってくれない!?」
クロ「えっ」
ナギット「え」
キキョウ「ですよねー」
エミル「わかった。もちろん協力するよ、急いで助けよう」

エミル達の協力により、イルコフ達を連れて無事オーベルフェに戻ってきた一行。
診療所に運ばれたイルコフ達は、早急に治療が施されたお陰で一命は取り留めたものの……予断はまだ許されぬ状況で、当面の間入院ということになった。
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