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冒険者珍道中

結局キキョウの二日酔いが治るのを待つため何日か消費したのであった。

ナギット「後先考えないで飲むからこういうことになるんだぞ!わかってんのか!」
キキョウ「ごめんッス〜」
アオニ「まあまあ。トラオレにはしばらく来れないってちゃんと報告しておいたし、怒られることはないはず……だよ」
クロ「あの方も結構飲んでた記憶があるのですが、どうだったんd…」
ナギット「どうしました?」
クロ「今、女の子の悲鳴が……」
キキョウ「え?聞こえなかったぞ?」
アオニ「なんだって!?どっち!?」
クロ「こちらです!私の五感がそう告げています!」
アオニ「おっしゃあ行くよ!」
ナギット「行くんですか!?いや、正義感が強いアオニさんらしいですけど!?」
アオニ「女が絡んだ時のクロの言葉は信じた方がいいよ!覚えといて!」
キキョウ「俺の五感より正確なの……?」

クロが先導して向かった先は路地裏だった。

「まだ近くにいるはずだ!追うぞ!」

ダンサー風の男が叫ぶと、男達は去ってしまった。

アオニ「なにー?今のガラが悪そうな奴ら」
クロ「話を聞くまでもなく去ってしまいましたねぇ」
ナギット「……で、叫び声の主は?」
クロ「いません……ね。彼らから無事に逃げ切ったと祈るしかないでしょう」
ナギット「結局骨折り損じゃねぇか……」
アオニ「そんなコトはないよ。今回はたまたま女の子が逃げ切ったみたいけど、もし、そうじゃなくって、なおかつアタシ達がこっちに来てなかったら……」
ナギット「まあ、そうですけど」
キキョウ「お?納得してないッスね〜?」
ナギット「うるせぇ。でもアオニさん、正義感が強いのはいいのですがそれで損な役回りばかりだったらどうするんですか?それでも、貴女は正義を貫くんですか?」
アオニ「うん。だって自分がこうしたいからこうしてるだけだもん。それにさー、物事かうまく行くか行かないかなんて誰にもわからないでしょ?だったらやってみるしかないじゃない。もちろん、ちゃっかりお礼とか貰いたいなーっていう野心もちょっとだけあるけどね」
ナギット「……」
アオニ「納得できないならそれでもいいよ、自分のことを他人にわかってもらうのってとってもしんどくて大変なことだからね。でも、言いたいことがあったらちゃんと言ってね?これ約束」
ナギット「……わかりました」

助けを求める声が気になりつつも、相手の姿形がない以上はどうしようもない。
一行は疑問を抱きつつも、冒険者ギルドへ。

トラオレ「ようっすパレッテ。いやーまだ二日酔いから完全に回復してなくってさ……まだ頭が痛くてよ……」
ナギット「なんで頭痛するほど飲むんですかもう……」
キキョウ「だって酒が美味しいんだもん」
アオニ「だもん」
クロ「お酒を飲む美女はいいですよ」
ナギット「酒豪バカしかいないんですかこのギルド」
トラオレ「えっと……ちょっとうろ覚えて悪いんだが……この前約束したんだよな?第4迷宮の説明をするって」
アオニ「したよーアタシははっきりと!まるで昨日のことのように覚えてるからね!」
クロ「野心を燃やすフカ子の記憶能力を舐めない方がいいですよ!」
トラオレ「そっか……ま、挑戦するかしないかはお前達次第なんだが……どうする?」
アオニ「するに決まってるじゃん!ここで断るなんていいえを選んだ時のテキスト回収したい人だけだよ!」
ナギット「またメタな話を持ち出して!」
トラオレ「挑戦するならよかった!じゃ、これから注意点を説明をするからしっかり聞いてくれ」
クロ「注意点?」
トラオレ「第4迷宮は今での不思議のダンジョンとは決定的に違うところがある……D.O.Eの存在だ」
アオニ「DOE!」
クロ「DOE!?」
ナギット「でぃーおーいー?」
キキョウ「なんすかそれ」
トラオレ「DOEは他の魔物に比べて格段に強い。弱点も隠れているから状態異常を重ねないとこちらの攻撃が全く通らないし、砦も破壊してくる」
キキョウ「ゲーッ!厄介な魔物じゃん!それ倒しながら行くのか!?」
アオニ「いやー絶対に倒さなきゃいけない魔物じゃなかったハズ……」
トラオレ「あと、DOEはヌシだ」
アオニ「え」
クロ「え」
ナギット「げ」
キキョウ「ありゃま」
トラオレ「第4迷宮はジャングルなのだがその奥に……密林の王者、猿王魔がいる」
アオニ「えんおうま」
クロ「一発変換できないからわざわざ“さるおうま”って打たないといけないですよ!ちょっとめんどくさいんですからね!」
ナギット「他にもめんどくさいことが……じゃなくて、その猿王魔を倒さないと第4迷宮は踏破できないということですね?」
トラオレ「その通り!ヤツは強いから心してかかってくれ!パレッテ達ならなんとかできる気が俺もしてきてるしな!いい報告待ってるぜ!」

トラオレに気持ちよく見送られ、一行は意気揚々と第4迷宮へと足を踏み入れたのであった。

第4迷宮。巨植の樹海

クロ「ジャングルと聞いて不安でしたがけっこう静かな場所なんですね」
アオニ「魔物のラインナップはちゃんとジャングル寄りだねうんうん。前みたいによくわからん機械がうろついてることはなさそう」
キキョウ「機械の代わりに樹が動いてるぞ」
うごめく毒樹「うろうろ」
ナギット「なにあれキモッ」
クロ「えーうごめく毒樹ってもうこんなところから出てくるんですかー?」
アオニ「タルシスではアイツの毒に散々苦しめられたなー」
キキョウ「えっ毒!?また毒なのか!?」
アオニ「いやー不思議のダンジョンでのアイツの特徴は毒というより……」

うごめく毒樹の腐食の息!

ナギット「うっわ!?くっせ!」
キキョウ「ギャー!ナギットさんが毒にー……ならない?」
ナギット「……リフレッシュはいらなさそうだな。不発か?」
クロ「不発なんかじゃありません。盾とか武器とか見てください」
ナギット「盾……?あっ!強化がはがされてる!」
アオニ「アイツのそのくっさい息は武器や盾の+効果を消して錆び付かせてしまうんだ。つまりは武器か盾の能力を下げられてしまうわけで」
クロ「厄介ですよね、アスラーガでは世界樹を越えた先のダンジョンにしか生息してないと聞きましたが」
キキョウ「じゃあ出てくるの早いんだな!」

他にもネズミとか土竜2種とか色々わんさか出てくる中、一行はB9Fへ

アオニ「ながーい通路だなーっと」
クロ「もう慣れたものですけどね」
キキョウ「通路の先に魔物がいるのも慣れたな!」

通路の先には荒ぶる狒々がいる

ナギット「すっげー邪魔」
アオニ「狒々だけならなんとか……って、ありゃ、後ろにコールドネイルもいるなぁ」
キキョウ「うげー。アイツきらーい、爪がめっちゃ冷たいもん」
アオニ「2マス先攻撃してくるし動きを封じた方がいいか。前に拾った麻痺の印石で足止めしてやろう」

アオニは麻痺の印石を使った!
荒ぶる狒々は麻痺した!隣にいたコールドネイルも麻痺した!

キキョウ「やったぜ」
アオニ「いい具合に感電してるね~これで一匹ずつゆっくり倒せ」

隣のメタルシーザスも麻痺した!隣のひっかきモグラも麻痺した!

アオニ「!?」
クロ「よく見たら4匹並んでますね」
キキョウ「何故集まったし」
アオニ「ナギットーディバイドしてくれない?4匹連続はさすがにキツいもん。クロは後ろから印術お願いねー」
ナギット「了解しました」
クロ「フカ子のためならなんでもしましょう!」
キキョウ「……俺は?」
アオニ「前方での仕事ないから後ろの守りしといて」
キキョウ「暇ー!」
ナギット「うるせぇ」

落ち着いて一匹ずつ倒したので問題なし。
しばらく進んでいくと、とある階層で異変を感じた。

アオニ「あ。この階にDOEがいる!」
キキョウ「マジ?噂のDOEって見てみたいなー!」
ナギット「進んで危険な方に全力で向かうんじゃねぇ」
アオニ「でも状態異常にできる水葉もけっこうあるし、挑んでみてもいいと思うよ。いざって時にはアタシのリンクスキルがあるし」
ナギット「……まあ、アオニさんがそういうなら」
キキョウ「俺の信用ってない?」
クロ「仕方ありませんよ。フカ子は可愛らしい女の子、貴方は見た目は可憐でも中身が詐欺みたいなものです、フカ子が優先されてしまうのは当然のことですよ」
キキョウ「自分の基準で言うなよ」

DOE、ビッグモスが現れた!

キキョウ「蛾だ!!でっかい蛾!!」
ナギット「生理的に受け付けないビジュアルしてんなぁ……」
アオニ「通路で戦うのはちと不利だから部屋まで誘い込もう。その方が全員で殴れるもん」
キキョウ「おっしゃー!斬るぞー斬っちゃうぞー!」

キキョウの攻撃!ビッグモスに1ダメージ!

キキョウ「……あれ?バグ?」
ナギット「トラオレさんの話を聞いてなかったのかよテメーは」
キキョウ「んえ?」
アオニ「DOEは言葉で説明しづらいよくわからないオーラに守られてるから攻撃が全然通らないんだよ。オーラを剥がすにはなんらかの状態異常にしないといけないんだ……こんな風に」

アオニは毒の水葉を投げた!
ビッグモスは毒になった!鈍足になった!

キキョウ「あっ!よくわからないオーラが消えた!」
アオニ「これでおっけー。コイツは小型だけどもっと大きなDOEもいるから、ソイツは2つ以上状態異常をかけないとオーラが消えないんだ。覚えとこうね」
キキョウ「はーい」
ナギット「……DOEは目の前なのになんでこんなほのぼのしてるんだ……」
クロ「状態異常さえかけまくればどうにかなる相手ですからねぇ」

クロの言う通り難なくビッグモスを倒した。
驚くほど順調に進む中、再びDOEが徘徊しているフロアに足を踏み入れる。

アオニ「ここにもDOEがいるね。まーたビックモスかな」
クロ「案の定そうですね。アイテムはありますしこのまま挑んでしまいましょう」
ナギット「(全然苦戦しなかったからって調子乗ってんなぁ……)

ビッグモスは仲間呼びを使った!
部屋の中に大量の魔物が現れた!

4人『ギャーーーーーーーーーッ!!』
ナギット「最後にとんでもねぇ置き土産を残してくんじゃねーよ!!」
アオニ「どんだけいるのこれ!真空波の巻物使うしかないじゃーん!」
クロ「ドクロエリア+仲間呼びは死亡不可避案件の可能性大と……メモメモ」

真空波の巻物とナギットのディバイドのお陰でどうにか危機を乗り越えた一行は最下層へ
猿王魔が現れた!

キキョウ「ゴリラだーーー!!」
アオニ「おいこっち見んな。人のこと言えるステータスじゃないでしょ300越え」
キキョウ「どうも300越えした女です」
アオニ「男だろ」
ナギット「いつも通り麻痺にして動きを封じ手からバフ詰みでしょうか」
アオニ「それでいいよ。喰らえ電撃の印石!」

猿王魔は麻痺にならなかった!

アオニ「おっ!?」
クロ「私の印術も失敗しました。当然と言えば当然ですが徐々に耐性がついてきてますね」
アオニ「やむ終えない。スキル封じの印石である程度の動きを止めるしか……」

猿王魔は果実落としを使った!果物が落ちてきた!

ナギット「なんだこれ」
キキョウ「腹減ってるんスよきっと」
アオニ「いやきっと投げるんだよ。猿みたいな魔物ってだいたいなんか投げてるよ」
クロ「ヒールストライクの悪夢……」
アオニ「やめて」
ナギット「それよりディバイドしておくので思いっきりやっちゃってください」
キキョウ「じゃあ守りは全部任せたッス!ブレイバンドがないから乱舞の型を使って攻撃力と回避率上げとくッス!」
アオニ「うむむ……なかなかリンクにかからない。アタシの運が悪いのか耐性があるのかどっちなんだろう、まあいいか、殴っとけば」
クロ「凍牙の印術強いですねー1度に120近いダメージが入りますよ」
ナギット「(やることないから印石使っておこう)」

猿王魔のアームハンマー!猿王魔の通常攻撃!
ナギットは全て庇った!

ナギット「料理食ってきてるからその程度の攻撃なんてなんともねーっつーの」
キキョウ「いよっ!ガードの固い男!」
ナギット「お前に言われるとなんか腹立つ」
アオニ「料理ひとつだけでここまで安定するとは思ってなかったなぁ。お金は惜しまないものだね」
クロ「そうですよ。お金は使うためにあるんですから使える時に使っておかないともったいないですよ」
ナギット「(確かに)」

その後はナギットのディバイドのお陰で安定した戦闘が続き、難なく勝利した。

第4迷宮から戻った一行は、船着場でアントニカと出会った。

アオニ「やっほーアントニカ!よく会うねぇ」
アントニカ「聞いたよ!猿王魔を倒したんだって?」
キキョウ「俺たちってもしかして迷宮をクリアするフレンズだったりするんじゃ!?」
ナギット「へえ」
キキョウ「ナギットさん冷たいッスー!」

出会い頭にそのまま黄金の麦酒場に連れていかれ……

トラオレ「らんぱーーーーーーい!!
アオニ&キキョウ『らんぱーーーーーーい!!
クロ「……ぐーぐーぐーぐー」
ナギット「…………」

当たり前のごとくトラオレも参加し、よってたかって祝福され、例によって宿に戻り床についたのは深夜なのであった。
そして、アオニは再び夢を見る。

た……すけて…………たすけて……

アオニ「(まただ……ってまた?前も見たっけなあこんな意味のわからない夢)」

「たすけてっ!!」

アオニ「んあっ!」
ナギット「わっ!?びっくりした!?どうしたんですかアオニさん!」
アオニ「今、誰かがアタシを呼んだ気がして……いや、気がしたとかじゃない!ハッキリ聞こえたんだ!」
ナギット「夢の話を熱弁しなくても……大体、僕はそこの二日酔いバカの面倒を見ていましたが、声なんて聞こえませんでしたよ?」
キキョウ「うーんうーん……世界がぐるぐるすりゅう〜」
アオニ「でも……だけど……ねえ、クロぉ……」
クロ「ぐーぐーぐー」
ナギット「彼ならさっきからずっと寝てますよ。最近怒涛の勢いでダンジョンを踏破していますし、疲れが出たのでは?」
アオニ「そ、そんなことない!絶対に聞こえたもん!直接見てくるから!」

アオニは部屋から飛び出した!

ナギット「ええちょっ!?アオニさん!!」
キキョウ「うーん……ナギットさん……俺のことはいいからアオニを……」
ナギット「言われなくてもそうしてる」
キキョウ「安定のナギットさんッス……おえっぷ」

外に飛び出したアオニとナギットが路地裏で見つけたのは、ナディカだった。

ナディカ「助けてっ!!」
アオニ「ナディカ!?」
ナギット「どうしてこんな所にいるんですか!」
ナディカ「ごめん!追われていてっ!」
ナギット「追われ……?一体何をやらかして」
ダンサー風の男「むっ!人間か……!」

現れたダンサー風の男の後ろには、何人かの男達がいる。

アオニ「そういう君も人間でしょ!なにさなにさ!大の男がよってたかって女の子いじめて!恥ずかしくないの!?クロのげきおこ案件だよ!」
ナギット「彼女が何をやらかしたのかは知りませんが、ここまでする必要があるようには見えませんね」
アオニ「君はさらっと毒を吐くよね」

アオニとナギットはナディカと男達の間に割って入るかのように彼女を庇った。
すると、相手の男達の内ひとりが叫ぶ。

「おい!お前ら!そいつを渡せ!」
ナギット「なんだって!?」
アオニ「渡すワケないでしょ……って!なんで選択肢出てるの!ワケわからんわこのゲーム!」
ナギット「何の話ですか!」
ダンサー風の男「拒否か」
「いい度胸してんじゃねぇかテメーら!」

男の1人が飛び込んで斬りかかる!
が、ナギットはとっさに盾で攻撃を弾いた!

アオニ「あれ、いつの間に装備一式を」
ナギット「用心するに越したことはないでしょう!深夜徘徊なんて何が起こるかわかったもんじゃない!」
アオニ「確かに……子供が1人で夜に出歩いているとよまわりさんにさらわれるって言うし……」
ダンサー風の男「……腕が立つな」
「く……クソがっ!!」

不意に男の左手が白い幻影のようなものに包まれていく……!

アオニ「うわっ!なにあれ!?」
ナギット「これはヤバイじゃねーよナレーション!語弊力どうなってんだ!」
アオニ「今する話をじゃないかもしれないけど、ダンジョン内で倒れてもお金と装備を失うだけで済むけど、ダンジョン外で死んだら本当に死ぬからね」
ナギット「本当に今する話じゃねーな!」
ダンサー風の男「バカ!反射的に出てるぞ!」
「あっ……!」
アオニ「(チャーンス!今のうちに逃げるよ!)」
ナギット「(わかりました!)」

2人はナディカを連れて逃げ出した!

「しまった!」

騒ぎを近所の住人が気付いたのか、後ろの方でざわついているのが聞こえる。
しかし、振り返っている暇などなく……3人は必死に逃げた。

船着場にて。

アオニ「ぜえぜえ……湖畔まで逃げたら安心かな」
ナギット「追っ手は来てないようですね……よかった」
ナディカ「助かったー」

3人は思わずその場に座り込んだ。

ナディカ「あのう……ありがとう……やっぱり来てくれたんだね!」
アオニ「やっぱり……?え?やっぱりってまさか……」
ナギット「もしや、アオニさんが聞いた夢の中の声ってナディカ……?」
ナディカ「うん。私なの。ずっと夢の中で叫び続けてゴメンね。でも、ここ何日か追われててどうしようもなくって……」
ナギット「夢の中で語りかけるなんて普通の人間じゃできませんよね……アナタは一体……」
ナディカ「実は私は……精霊族、人間じゃないの」
アオニ「薄々そんな気はしてたよ……ねえ?」
ナギット「…………」
アオニ「おりょ?」
ナギット「はああああ!?精霊族!?人間じゃない!?どういうことだよオイイイイイ!!」
アオニ「あ、人外って初めてか」
ナギット「初めてとかそういう問題じゃねーよ!?なんだよお前人間以外の生命体に会ったことあるのかよ!」
アオニ「タルシスにはいたけどなー。アスラーガにもいたらしいよ?アタシは会ったことないけど」
ナギット「冒険者って一体……」
ナディカ「ええと……話を戻してもいい?」
アオニ「あっドゾー」
ナディカ「カナハルタ王国の記者というのもウソ。だからネッドさんに疑われちゃったけど」
ナギット「じゃあ、さっきの男達も……」
ナディカ「うん。彼らは妖魔族。私、あいつらに命を狙われてるんだ」
アオニ「な、ナーンダーーッテェェェェェ!?
ナギット「さっきの人間離れした技といい、人間らしからぬ様子ではありましたが……ううう、色々ありすぎて頭がこんがらがってきた」
ナディカ「私の使命はね、神々にあるものを届けに行くこと。だけど、それを阻止するために妖魔達が私の命を狙ってるの」
ナギット「その“あるもの”とは妖魔達にとって不都合なものということか……」
ナディカ「世界樹の麓に神々の国の入口があるらしいんだけど……私、世界樹まで行ったことがないし世界樹の麓がどんな所かも知らないし……記者を装って不思議のダンジョンに行こうとしたものの、私の力だけじゃ乗り切れないし……そうこうしてる内に妖魔達に勘付かれちゃって命を狙われている……だから、あの……」
アオニ「うん」
ナディカ「もしよかったら、お願いがあるの。君達のギルドに私も同行させてもらえないかな……?」
ナギット「またですか……」
ナディカ「だってだって!これまでずっと見て来たけど、君達はまだ新人なのにかなりの実力者って感じがしてるし!きっと世界樹の麓まで辿り着けるんじゃないかなって思って!私も妖魔達から身を守れるし!」
アオニ「うんうん」
ナディカ「なのでお願い!世界樹の麓まで私もも連れて行ってくれない!?」
アオニ「やだ
ナギット「断ってんじゃねぇ
アオニ「だってーナディカが来ると100パークロが喜ぶんだもん。目に見えてるんだって」
ナギット「だからってここまでハッキリ断らなくても……」
ナディカ「……」
ナギット「ほら!!ナディカがもう死んだ魚のような目になってますよ!!ちょっと可哀想になってきたじゃあありませんか!」
アオニ「ううっ……ま、まあ、さすがにこのまま放っておいたら妖魔達に何されるかわかったもんじゃないし、私情を挟むのはよくないよね……うん、よくないよくない」
ナギット「でしょう!?」
アオニ「というワケでいいよ。同行オッケー」
ナディカ「一緒に行ってくれるの!?ホントに!?本当に!?」
アオニ「冒険者に二言はないよ」
ナディカ「わーい!ありがとう!本当にありがとう!」

こうして、2人はナディカと共に世界樹の麓を目指すと約束したのであった……

その翌朝。宿にて。

ナディカ「おはよう!パレッテさん!早く行こうっ!」
クロ「信じられます?朝起きたら美少女が一緒に冒険してくれるというありがたーい現実が待っていたなんて」
アオニ「知らんがな」
キキョウ「ほえー。俺が酔いで死んでる間にそんなことがあったんだなー」
ナギット「お?今日はすぐに動けるんだな」
キキョウ「何度も同じ失敗を繰り返すほど馬鹿じゃないッス!ちゃーんと二日酔い防止の薬を飲んでおいたんス!これでいくら飲んでもだいじょーぶ!」
ナギット「そうやって調子ぶっこいてまた飲みすぎて倒れるんだろ。オチまで見えてんだよ」
キキョウ「す、鋭い……」
アオニ「……ねえ、ナギット」
ナギット「なんですか?」
アオニ「なんでナギットってキキョウにはタメ口なのにアタシ達には敬語なの?」
ナギット「え?そ、それはまあ……年上ですし冒険者として先輩ですし……」
アオニ「ギルド結成して結構経つんだしもうタメ口で構わないよ。クロは自称紳士だからともかく、敬語ってどうも距離があるように聞こえるからあんまり好きじゃないんだよねー」
クロ「自称とは酷いですよフカ子。私は正真正銘紳士じゃないですか」
アオニ「一般的な紳士は白昼堂々女の子をナンパしたり、美少女と冒険同行できるって知ってメチャメチャ喜んだりしないと思います」
クロ「ぐうの音も出ませんね」
アオニ「まあエセ紳士はさておき……アタシはナギットともっと仲良くしたいんだよ。だからさー敬語やめない?」
ナギット「う……いや、そんな、いきなりはちょっと……」
アオニ「なんで?」
キキョウ「アオニ〜駄目だぞ〜ナギットさんに無理強いしちゃ〜だってナギットさんはああ見えても結構人見知りで、知らない人と早々仲良くなれないんだって〜」
クロ「ああ、道理でどこか距離があるなぁと思ってたらそういう事でしたか」
ナギット「……」
アオニ「それなら尚更だよ!人見知りだからって逃げてちゃなんの解決にもならないよ?ちょっとは心を開ける相手を作っておかないと将来困るでしょ?それとも、本音で話せる相手がキキョウだけでいいの?」
ナギット「嫌だ
キキョウ「即答なんスか?」
アオニ「いきなりタメ口が駄目なら練習だ!今度からアタシはアオニ、クロはクロってさんを付けないで呼ぶこと!さんって付けられたら無視する方針を固めとくから慣れておくように!」
ナギット「はいい?そんな無茶苦茶な!」
キキョウ「人見知りで人との距離の詰め方が分からないナギットさんには試練ッスねぇ」
ナギット「うるせぇ黙ってろ。いきなりなんて無茶ですよ……せめてもうちょっと段階を踏んで……」
アオニ「君の場合段階を踏むと小数点単位になりそうだからダメ。クロもちゃんと協力してよね?さん付けで呼ばれたら無視だよ」
クロ「承知しました。フカ子の命令ならなんでも聞きますよ」
ナギット「……そんなぁ……」
キキョウ「ファイト❤️」





【次回予告】
キキョウ「巷を賑わせる大人気アイドル!名前はとってもシンプルな“きーくん&なーくん”!流行りの清純派アイドルだよ!」
ナギット「そのネーミングってもしかしなくても俺とお前だよな?」
キキョウ「大成功している反面、なーくんことナギットさんは芸能界の闇に囚われてしまい、とうとう悪徳プロデューサーと手を組んでしまった!きーくんことキキョウを滅亡させて自分がナンバーワンでオンリーワンの存在になろうとしているである!ダークサイドへようこそ!」
ナギット「おい」
キキョウ「だけど俺は長年連れ添ったナギットさんを見捨てる事はできない!彼が取り込んでしまった闇を討ち亡ぼす手掛かりを掴むべく、我々は急遽アマゾンへ飛んだ!」
ナギット「どこ行ってんたよ俺が大変な時に」
キキョウ「次回!超次元アイドルキキョウ第4話!“アマゾン川の水は死んでいる”大丈夫ですナギットさん。アマゾン民族との戦争、必ず止めてみせます!」
ナギット「アイドルどこ行った!!」
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